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第五十九話【運命のドキドキ三択クイズな模様(フリーダ視点)】

「フリーダお嬢様、てぇへんです!ご友人の雑炊さんが増えて、ダンジョンから帰れませんぜ!」

 ブーン様と冒険者ギルドのお手伝いをしていた楽しい時間は、モヒカン頭の冒険者の大声で台無しにされましたわ。

「貴方は、確か昔公爵家で雇っていた」

「へい、モヒ・カーンです!ご友人がダンジョンから出れなくなったので、お伝えに来やした!」

 男は、公爵家が表立ってダンジョン運営していた頃に雇っていた冒険者でしたわ。今は色々あって雑炊さんと知り合い、攻略対象候補にも挙げられていたはずですわ。運命って素敵ですわね。

「落ち着いて、一体何があったのか、もう一度話すのですわ」

「へ、へい!人に化ける魔物が雑炊になって…」

 あー、ありましたわね。そんな隠しイベント。私も昔、リーさんとタフガイさんとの信頼を得る為に利用しましたっけ。

「雑炊は、フリーダお嬢様に助けて欲しいと言ってまして…、ダンジョンまで案内しやす」

「いえ、モヒさんはギルドで待機していて下さい。場所なら分かってますので」

 あのメンチカメレオンの出たダンジョンの場所は覚えてるし、モヒさんに留守番をさせて一人で向かいましたわ。


「あ!フリーダさん来た!これで勝つる!」

「サンキューモッヒ!フォーエバーモッヒだね!」

「真のヒロインはここだよ!」

「ディーフェンス!ディーフェンス!」

 ダンジョンに入って直ぐの場所に雑炊さんは居ましたわ。三人も。そして、彼女達の前ではボルトが汗だくになって反復横跳びをしていましたわ。ドナベさんは…、あ、隅っこに土鍋と杖が転がってますわね。


「フリーダ様、やっと来たんか!」

「ボルト、状況を説明しなさい」

「雑炊に雇われてこのダンジョン探索しとったら、雑炊が二人になっとった。で、一緒に来とったボンゴレが雑炊に変身して混ざったんや」

 成る程。つまり、あの三人は本物の雑炊さん、変身したメンチカメレオン、変身したスケベ忍者という事になりますわね。

「ワイは魔物と性犯罪者を外に出さん為に入口を塞ぎ、モヒの旦那に助けを呼びに行ってもろたんやけど…ワイはここまでや。フリーダ様、後はたのんます」

 説明を終えると同時にその場に倒れるボルト。私は地面を凍らせてボルトを蹴り飛ばすと、彼は冷凍マグロの様にダンジョン入口まで滑って行きましたわ。

「さて、邪魔者はいなくなりましたし…全員整列!」

「「「ヒイッ!!!」」」

 私が雑炊さん三人に怒鳴ると、彼女達は全員ビクッとなってその場で直立不動の姿勢となった。それを確認した私は、三人の額に油性ペンでイモ・バカ・クソと目印を記しましたわ。

「まず最初に警告しますわ。ボンゴレマル・コーガは今直ぐ名乗り出なさい。貴方のしている行為は、単なる変態行為では無く、魔物への利敵行為ですわ。退学どころか、牢屋行きの愚行ですわよ?」

 私は選択肢を狭める為に脅すが、三人の雑炊さんは互いに顔を見合わせるばかりで、誰も偽物と名乗り出ませんでしたわ。どうやら、変態は死なないと治らないみたいですわね。

「分かりましたわ。それでは、これから本物の雑炊さんを見極める質問をしますので、偽物は判明次第ぶっ殺していきますので、本物の雑炊さんは真面目に答えて下さいね」

「フリーダさん怖っ!」

「そんな事言って、まーた私を凍らせるんでしょ!この悪役令嬢!」

「どうでもいいから早く終わらせてー!オシッコ漏れちゃうー!」

 三者三様の返事。うーん、どれも雑炊さんに見えますわ。ですが、これから出す質問で一発で判明するハズですわ。

「本物の雑炊さんなら、この質問に答えられますわよね?問題!私と貴方が屋上で出会った時に戦闘した、触手魔族に寄生された三年生の名前は?」

 問題を聞いた三人の雑炊さんは、フリップにペンを走らせて答えを書いて見せましたわ。

【イモ雑炊の答え】メンゴ。拙者それ知らないからパスでゴザル。

【バカ雑炊の答え】ランペイジ・ジョーダン。現在は学園を卒業して、冒険マートの惣菜コーナーで働いてる。

【クソ雑炊の答え】触手先輩は触手先輩だよ。名前なんて知らねー、クソして寝ろ!

「ふむふむ、分かりましたわ」

 三人の書いた答えを見て私は誰が本物かを確信しましたわ。私は、地面に放置されていた土鍋を忘れず回収し、自分の頭に乗せた後、偽物二人に向かって氷結魔法を放ちましたわ。

「ハイ、お前とお前は偽物じゃーいですわー!」

 カチコッチーン!

「「ギャー!!」」

 バカ雑炊とクソ雑炊を凍らせて、私はイモ雑炊に駆け寄り手を取りましたわ。

「さあ、帰りますわよ。変態二匹の処理は他の方がしてくれますわ」

「あ、あのー、さっきの質問でどうして私だと思ったんですか?」

「なーに、簡単な事ですわ。メンチカメレオンは変身した相手の記憶すら読み取り、本人ソックリの言動が出来る。あの変態忍者は、変身対象そのものになりたいという腐った願望で変身している。ですから、自分がボンゴレだと自白出来るのは、本物の雑炊さんという訳ですわ」

「…ごめんなさい」

 ドロン!

 私が名推理を披露すると、雑炊さんから白煙が上がり、ボンゴレに戻りましたわ。

「許して欲しいでゴザルー!出来心だったのでゴザルよー!」

「お前普通に、勉強不足で答えられんかっただけかい!」

 バシーン!

「アリカトウゴサイマス!」

 氷結ビンタでボンゴレを凍らせると、私は猛ダッシュでダンジョンの入口に戻り、バカ雑炊の氷結を解除しましたわ。

「間違えてメンゴですわ!」

「フリーダさん、どうして私が本物だと…?」

「なーに、簡単な事ですわ。偽物は本物の様に行動するから、偽物っぽくジョーダン先輩のフルネームと今の職業を言った貴女が本物と判断したのですわ」

「流石フリーダさん、あったまいいー!でも、私も過去の敗北から学習して進化したとは考え無かったギョギョ?」

 バカ雑炊の舌がロープの様に伸び、私の身体に絡みつきましたわ。こいつも偽物かよ!

「ギョギョギョー!変身を見破られ無かった時、おいらの戦闘力は魔王軍幹部クラスにまで跳ね上がるのだギョ!自分でも何でそーなるのか分からんけどなぁー!」

「くっ…、イベント失敗時の、ペナルティ効果ですわね!」

 ま、マズイですわ。本物当てに失敗した時のメンチカメレオンは、全盛期のシュビトゥバに匹敵しますわ。勝てるか勝てないかで言えば勝てますけど、近くには氷漬けのままの本物のクソ雑炊が…居ませんわ。

「ハイパー稲妻キーック!」

 あ、上空に居ましたわ。

 どぐちゃ!

「ギョー!」

 後頭部にドロップキックを喰らったメンチカメレオンは、自分の舌を噛み切ってしまい即死しましたわ。弱点が舌なのはガマ族と共通なのですわ。

「フリーダさん!私だけがちゃんといつも通り答えたのに、何で選んでくれなかったの!」

「裏を読み過ぎましたわ。にしても、どうやって私の氷を?」

「それは聞かないで!」

 雑炊さんの立っていた場所からは、ホカホカと湯気が上がってましたわ。

「貴女、また漏らしたのですわ?私と同じ戦場に居るとトイレが近くなる隠しスキルでもあるのですわ?」

「聞くなって言ってるでしょ!ソレは氷を砕くキッカケだけど、そこからは、ちゃんと実力で破壊しました!」

 一年前は私の氷に手も足も出なかったのに、凄まじい成長速度ですわね。強化されたメンチカメレオンも、不意打ちとはいえ一撃ですし、多分この子私やブーン様に近い実力まで育ってますわ。

「まあ、色々あったけど、助けに来てくれてありがとう!フリーダさん、土鍋返して」

 雑炊さんは私から土鍋を受け取ると蓋を開けましたわ。土鍋の中には予備のパンツが入っていて、雑炊さんはプールの授業の時の男子みたいな動きでスカートを履いたままパンツを履き替えると、履いていた方のパンツを土鍋に入れ、頭に乗せましたわ。

「これで良し…え?」

「良くねえよ!今回は僕、何も悪い事してないのに、この仕打ち!?…あ?」

 土鍋とドナベさんが定位置に戻った時、雑炊さんとドナベさんが私の方を見て固まりましたわ。

「お二人ともどうしましたの?私の顔に、何か付いてるのですわ?」

「う、うん。顔にというか、頭の上だけど」

「ああ。トムの時と同じ黒いハートが見える」

 私からは見えないのですが、主人公と相棒が揃って言うのなら間違い無いのでしょう。攻略対象の一人は私だったみたいですわ。ってオイ!

「えへへ、良かった〜。世界のどこに居るか分からない残り二人の内、片方がフリーダさんなのは、かなり好都合だね」

「確かに、イベント進行においては好都合ですわね。でも、貴女多分ブーン様に殺されますわよ」

「ギャー!ホントだ!私、ブーン様の婚約者を寝取っちゃったよ!」

 この後に控える制裁を予感し、青ざめる雑炊さんでしたわ。チャンチャン。


 ボンゴレは退学になりましたわ。

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