◇ステータス情報◇
【早乙女瑠奈】Lv.35(↑Lv.7)
・探索者ランク:D
(ランクアップには昇格試験合格が必要)
・保有経験値 :1000
(レベルアップまであと、2500)
・魔力容量 :650(↑150)
《スキル》
○《バーニング・オブ・リコリス》(固有)
・消費魔力量:250
・威力 :準二級
・対単数攻撃用スキル。攻撃時に深紅の焔を伴い、攻撃箇所を起点として炎が迸り爆発。噴き上がる炎の様子は彼岸花に似ている。
○《名称未定》(固有)
・消費魔力量:毎秒10
・威力 :二級
・自己強化スキル。発動時全身に赤いオーラを纏い、身体能力・肉体強度・動体視力などの本来持ちうる能力を大幅に強化する。強化量探索者レベル+10相当。
※自己強化系の汎用スキルは他にも存在するが、強化量は探索者レベル+3~5程度が普通。
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Dランク探索者が一人の力でBランクダンジョンを探索していき、そのまま一人でBランクモンスターを討伐。
鉄平は認めざるを得なかった。
瑠奈は自分が打った武器を振るうに相応しい探索者。
いや、是非自分が打った武器を使って欲しいとすら思えた。
そして、七月下旬。
およそ一ヶ月の製作期間を経て、瑠奈の新しい大鎌が完成。
一学期末テストも終えて夏季休暇に入っているため、瑠奈は真昼間から鉄平の装備店にやって来た。
「ほぉれ、コレが嬢ちゃんの大鎌だ。持ってみろ」
「わぁ……!!」
瑠奈は渡された大鎌を手に持ってみる。
EADを起動してステータスによる身体能力の強化が行われていないため、普段は軽々と上げている大鎌でも今は両手に持つので精一杯だった。
だが、不思議と手に馴染む。
全体的に赤を基調とした大鎌。
単調な直線ではなく緩やかな弧が描かれていたりする柄は、持ち手が滑らないための工夫だけでなく、効率良く刃に力を伝導させるため。
そして、何より目を引いたのが刃の部分。
三日月のように湾曲するそれは、透き通っていた――透明だ。
「鉄平さん、この刃は?」
「ははっ、やっぱ気になるよな」
鉄平はどこか嬉しそうに顎を撫でながら答え、語った――――
「そりゃ、お前さんが持ち帰ってきた高純度のミスリルにオレがちぃとばかし手を加えたもんだ――」
ミスリルと聞いて多くの人はその硬度に注目するだろう。
しかし、その最もたる性質は魔力の伝導性の高さにある。
高純度のミスリルであればあるほど伝導性が高く、ほぼ抵抗なしで百パーセントに限りなく近い魔力を行き来させることが出来るのだ。
ゆえに、これまで瑠奈がスキル使用時に大鎌のもつ抵抗によって無自覚の内に無駄にしてしまっていた魔力もスムーズに刃に伝わるようになり、威力の向上が見込めるようになった。
だが、それだけでは芸がない。
ここで鉄平の一工夫。
「良いか、嬢ちゃん。ソイツは進化する大鎌だ」
「進化? 武器が、ですか?」
「ああ。その刃には斬ったモンスターの魔力を喰らって蓄積していく機能を持たせた。魔力が溜まれば溜まるほど刃は赤く染まっていく。そんで、限界まで魔力が溜まったとき、またオレんとこに持って来い……真の姿に打ち直してやるからよ」
瑠奈と共に成長し、進化していく大鎌。
初めから最強の武器に作り上げなかったのは、武器の性能によって瑠奈自身の実力の向上を阻害しないようにするため。
これからどんどん強くなっていく瑠奈のための最強ではなく、
「ありがとうございます鉄平さんっ! じゃあ、これからはもっと沢山のモンスターを狩らないとですね!」
「もぅ、ほどほどにしてくださいね瑠奈先輩?」
「あっ、鈴音ちゃん!」
装備店に鈴音が入ってきた。
ここは鉄平さんら鈴音と凪沙の祖父母の家だが、二人も一緒に住んでいるのでいつ来てもおかしくはない。
「見て見て鈴音ちゃん! これ新しい大鎌~!」
「良かったですね、瑠奈先輩。ただ……女子高生として武器を抱えて喜ぶのはいかがなものかと……」
「何言ってるの鈴音ちゃん! 一見ただ可愛いだけのか弱い乙女なワタシが、この重量武器を持ってるっていうギャップにこそ萌えがあるんでしょ!?」
「ちょ、ちょっと何言ってるのか……」
えぇ~、と不満の声を漏らす瑠奈に曖昧な笑みを浮かべていた鈴音が、本題を切り出す。
「というか、瑠奈先輩に用があるのはワタシじゃなくて……」
「え、違うの?」
瑠奈が首を傾げると、鈴音のあとにもう一人装備店に入ってきた。
毛先に向かって白のグラデーションが掛かった艶やかな黒髪を揺らし、相変わらず神秘的な雰囲気を纏っている白杖を突いた少女。
「な、凪沙さん!?」
「……ん、久し振り……瑠奈……」
「もしかして、ワタシに用事って……凪沙さんが?」
「そう……」
Sランク探索者である凪沙の用事とは何だろう、と瑠奈が色々考えてはみるもののイマイチ想像出来ずにいると、凪沙が呟くように口を開いた。
「瑠奈……新しい大鎌……早速使ってみたくない?」
「えっ、それはまぁ……というか、このあと帰りにダンジョン行こうかなぁとか思ってましたし……」
鈴音が「そんな、帰りコンビに寄って行こうかなぁみたいに言わないでください」とため息を吐いていた。
しかし、感覚が狂っていたのは瑠奈だけではなかった。
むしろ――――
「なら、今から……手合わせ、してみない……?」
「手合わせって……
探索者同士で互いの力量を確かめ合うために、ギルド本部にある決闘用フィールドでのみ行うことが許されている。
「ん、ウチと……」
そんな凪沙の一言に、まるで装備店内の時間が停止したかのように、皆が一斉に固まった――――