「──ここが……王都」
話にあった通り、数日かかったけど、王都に到着した。中継地点にあった町もすごかったけど、王都はそれ以上だ。
城壁に囲まれていて、入口は狭く限られているけど店も人も多い。広いし、見た事ない建物もある。多分見たことがない食べ物やら服やらもあるのだろう。
アイリスの姿をチラッと見かけたけど、目を輝かせて町を見てた。楽しんでいる邪魔をしちゃ悪いし、王都に移住するならまた会えそうなので挨拶をしに行きはしなかった。
「成人の儀は明後日です。当日は城門の番をしている兵に声をかけて入場してください」
全員が馬車から降り終わると、同乗していた兵がみんなに聞こえるように言った。
成人式は明後日。そして今はまだ太陽が上空にある日中。
それなら、二日間は自由に行動できる。二日間は情報集めをし──つつ娯楽を求めて王都を満喫してもいいかもしれない。
「……とりあえず、見て回るかな」
王都には色々ありそうだけど、その『色々』にはどんなものがあるかわからない。情報集めと一口に言っても集まる場所、集まらない場所があるだろうと思いひとまず見ていく事にする。
──ビア国の中心地である王都は、王都なだけあって何もかも立派だ。兵士の姿を街中で見かける。ファヌエルだったら信じられないくらい。
高級そうなお店とかもあって、富裕層らしき人が店に吸い込まれるように入っていく。
「……あ。図書館だ」
町を見て回って、建物の中に入ってみるとそこは図書館だった。受付で入館に許可は必要だけど。許可と言っても声をかけて、名前を伝えるだけだけど。
許可をとって中に入れば、ドアの横には兵士が立っていて中で他の兵士が巡回していた。図書館とは思えない物々しさだけど、多分盗難防止だろう。
でも、そんな厳重にするだけあって中には多くの本があった。蔵書数はわからないけど、本棚がいくつも並んでいるし、短い階段を上がった先にもあれば、その更に上にもある。
──探すなら……歴史とか、伝承とか?
私のお目当ては異世界だとか、転生だとかに関わりそうな本。自分が勇者だとは思わないけど「勇者が異界から来て救った~」なんて伝説とか。ありがちなのは、そういうところだろう。
まずは歴史から見ていこう。
歴史についての本が集まっている本棚を見つけると、とりあえず手前の本を手にとって開いてみた。
我々が住む世界、地球には多くはない遺物と奇跡で成り立っている。
「……ん? 地球?」
出だしからあまりにも自然に出てきた単語に、私は文字にかじりつく。何度読んでみても『地球』と書いてある。日本語でも英語でもないけど、そんな感じの響きでそういう意味の単語だ。
いや、ゲームやマンガで地球を使われる事もあるし、そんなおかしな事でもないか──そう思ったけど。ページをめくっていくと、古代語として文字が書き写されていた。その文字は恐らくこういう意味だろうと翻訳した言葉と共に並んでいる。
古代語として紹介されているのは、どう見ても英語だった。
「どういうこと……」
単に舞台となっているゲームとかが、古代語として英語を採用したとかなんだろうか。その可能性もありえなくはないけど。心臓がうるさい。何とも言えない嫌な感じがする。
──読み進めてみると、地球という名前だが歴史は違う事がわかった。
地球の──というより今のような状態になるまでの歴史は短く、数百年程度。そうなる前は何らかの災害と神や救世主と呼ばれる者により破壊と復活があったとか。発展には『古代の遺物』を参考にした部分もあるだとか。
その『古代の遺物』とされている物はほとんど残っておらず、各国の領地で見付かったものを保管し、研究に使われているらしい。
「……気になる……」
『古代の遺物』と呼ばれている物は、英語が書かれていた。単なる設定だとしても、妙に気になる。もしかしたら、帰る事に繋がるかもしれない。
──各国での保管……ならビア国の王都にもあるのかな。城内とか。見せてもらえそうなら現物を見たい。一通り調べたらお城の方にも行ってみよう。
歴史の本を他にも何冊か読んでみたけど、他はもっとわかりやすかったり短かったり、細かく書いていたりもしたけど、書いている事は大体同じ内容だった。古代に関する資料より、自己解釈のが結構入っている印象だったから、そこまで過去を解き明かせていないように感じた。余計に古代に関する実物を見たくなってくる。
多少の違いはあれど、この地球に関する歴史はそんな感じだったので伝承についての本を読み漁ってみる。絵本みたいな物とか、研究レポートをまとめたかのような分厚い物とか、小説とか。
──結果は、惨敗。
転生っぽいものや勇者やら救世主っぽいのは見つけられなかった。それどころか、読み込んでいたらあっという間に夕暮れ時になってしまい、数も全然読めなかった。今日中にお城の方に行ったりもしたかったのに。
仕方なく宿をとって、今日は寝る事にした。王都は宿の数が多いが、そんな満室という事もあまりなかったので泊まれないという事もなく体を休める事が出来た。