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第48話

「現場では不審者が見つけられなかったな」

「そうガッカリするな集よ。

それはつまり身近な所から盗撮している訳ではないと言う事が確定しただけでも良かったではないか」

「それもそうだ…な?」

「つまり望遠レンズにおける長距離からの盗撮だ。

その事実が判明したと言う事だぞ」

「なるほど。そう言う事だったのか!」


二人の頭の中には不審者絶対に存在するという事が前提なのだ。

だからこそ近くにいない事が確定しただけとしか思えない。

そして可能性の翼を広げ羽ばたいていけない所まで羽ばたいてしまうのだ。

少し考えればそこまで特殊な不審者はそうそういないだろうと思う。

しかし彼等の考えは止まらない。

ここに何も知らない第3者がいればまず不審者の話の出所を確認しようと。

扱く真っ当な事を言うはずである。

しかしそのブレーキ役になれる存在はここにいない。

何せ新しい燃料も投下される事になってしまっているのだから。

見つからない不審者の事を聞く前に大地は里桜から更に情報を得てしまっている。


「榊原君。青木君は連れて来られそう?」

「それが不審者の話をしたら捕まえるまではと張り切ってしまってね」

「やっぱり気のある子が危険にさらされているって言ったら頑張ってしまうもの。

青木君は有珠の事を気にしているものね?」

「それは間違いないな」

「それなら有珠は不審者の存在を怖がっている。

って私は考えているから頑張る様に発破をかけてあげてほしい」

「なるほど、黒江さんが怖がっていると知ったら集も頑張るだろう」

「この頃はね。

喫茶店周りも忙しくなっていて不審者がいても解らないわ。

だからもうこの近くにはいないのかもしれないわね。

どこかに離れてしまったのかも…

それじゃぁ…よろしく?」

「ああ。貴重な情報をありがとう。

早速集と共有するよ」


こうして大地と里桜の秘密の恋人同士(仮)の情報交換は終わったのである。

里桜はそろそろ諦めて集を連れてきてほしいと思うが不審者騒動に決着はついていな。けれど周囲にそれらしい人はいない。

いたとしても気づけないから諦めてと言ったメッセージだった。

しかしその考えは当然大地には早く捕まえと言うメッセージにしか聞こえない。

そして迷探偵に与えらえれる情報は更に間違った方向に進み助手(偽)は迷探偵の推理を増強するように推理を肯定する為の情報を与え続けるのだ。


「喫茶ミノワールを監視できるスポットを調べる事によって犯人に近付く事が出来るはずだ。

運が悪い事にこの辺りの地形は斜面がきつい部分もあり高低差もある。

そうか…どんな射角でも離れれば撮影する事が可能だって事だ」

「なるほど超広角の望遠レンズを持ったカメラを構えている奴を探れば良いな!

それに向こうから撮影すると言う事はこちらからもそのレンズは確認する事が出来るはずだな」

「冴えているではないか集!我々はまずは視線が通りそうなところを調べるべきだな!」

「それだけではないな。もっと場所は絞る事が出来る。

風景を撮影しようとしているカメラなら基本的に日の光を気にするはずだ。

そして取りたい被写体が離れていればいるほど光の影響を受けるはずだ。

太陽の位置は重要って事だな!」

「レンズに入る光も気にするはずだからな!

望遠になればそれこそ手振れを抑える為に三脚を使うはずだ。

レンズは巨大化して支えきれなくなっているだろうし。

ある程度の場所も必要となるはずだ。

それに確実に撮影を成功させたいと考えるのであれば一台ではなくて複数台を同時に使うはず」

「人目につかず極力開けた場所…そしてカメラを構えていても問題がない所となれば…場所が絞られてくる」


そして二人には走っていけない電流が走ってしまうのである。


「…気がついてしまったか集?」

「ああ…僕も気づきたくないが…その可能性は十分に高いと思う。

だが…ソンナコトはあってはいけない事だと思うし僕は信じたい」

「私も信じたいがまずは調べる事が先決だろう」


突然であるが進奏和高校には色々な活動がある。

その中には部活にならずに愛好会と言う形の集団もいる。

顧問の教師は付かず同じ趣味の延長上で繋がり合った集団。

進奏和高校の旧校舎。

空き教室の一部はそう言った愛好会を主催する生徒達の為の解放されているのである。

自主性を重んじる高校の考えも去ることながら教師が生徒を信頼している証なのである。

生徒自らの自治よって旧校舎は部室棟兼愛好家の為の場所。

その中が健全であるかどうかは生徒達次第なのであった。

だからこそ集も大地も嫌な思考の果てに思いついてしまったその結果を、

受け入れたくはない。

ただそれでもその愛好会の中に写真撮影愛好会という。

それなりに人数がいるのにも関わらず顧問を付けて正式に部活にならない集団がいる事を思い出したのだ。

今では珍しいデジタルカメラではなくアナログのカメラを使った撮影。

人知れず現像できる暗室を完備している事から現像は自分達の手で出来る。

それはたとえどんな写真であったとしても誰に知られる事もなく写真を収集できると言う事でもあった。

迷探偵集の背筋に確実に冷たい物が走る。

学生の中に盗撮犯がいるかもしれないという可能性に気付いてしまったのである。


それから数日間集と大地は写真撮影愛好会の部室を見張ることにしたのだ。

聞き取り調査をすると気づかれる可能性もある。

だからこそ二人は誰にも知られずに愛好会に近付く事にしたのである。

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