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 科学、とりわけ生物学の進歩により地球上で確認されたほぼすべての生物のゲノム解析が完了し、一部の絶滅種、絶滅危惧種も遺伝子操作によって再生されるようになりどれほどの時間が経過したであろうか。

 生物学は次のステージへと移行しつつあった。それは哲学、神学、倫理学を巻き込んだ大規模なプロジェクト。生物の「生命」の分野に踏み込んだ研究はさらには「魂」を解明しようと突き進んでいた。国もそれを容認し、「生命」や「魂」が完全に解明された暁には生物は「死」の束縛から解き放たれる、「死」という概念は覆される、誰もがそう信じる、信じさせられる時代。

 一部の学者はヒトが「生命」を支配することに疑問と危惧を持ち、この研究を中止するよう、再三政府に訴え続けていた。それでも、研究は止まることなく少しずつ、着実に進んでいた。


 研究に、いかなる犠牲を払っても構わない、とでも言いたいかのように。

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