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2-2 車の中からデートは始まっているのです(2)

「それじゃ、学校はまだまったくなのか?」

「あぁ、いえ! 一校だけ、良さそうだなって思う学校があって。電車で2駅ですし、生徒の自主性を重んじる校風って書いてますから」


 資料を貰った時に色々読んで、何故かこの高校がいいように思った。6割が中学からの持ち上がりだが、外から入ってくる人もいる。ごくごく普通の進学校だ。


「お前がいいと思うなら、それでいいんだろう。直感は鋭い方だからな」

「嘉一さん的には、もう少し上を狙えるって言ってましたけれど。でも、編入試験とかもありますし、行けるって決まった訳じゃないんですよね」

「そういや、勉強してるか?」


 車が徐々に進み始め、黒田の視線はまた前へと注がれる。悠はその横顔を見ながら頷いた。


「嘉一さんのお知り合いという方が、教えて下さってます。元々は塾の講師をしていた方らしくて、教え方が上手で。今五教科のうち、数学と国語は中学の範囲を終えました」

「……お前、やっぱ頭いいだろ」

「そうですか? そんな気はしていませんが」


 教える人が上手であれば勉強は分かりやすい。そう思う悠だが、素直さ故に飲み込みが早く理解も早い事を本人は自覚していないのだった。


「高校合格したら、またお祝いだな。今度は寿司とかどうだ?」

「黒田さん、また甘やかさないで下さい。子供の俺に、黒田さんがお祝いに連れていってくれるような店のお寿司が分かるわけないじゃないですか」

「じゃあ、焼き肉」

「かっ○寿司とか、牛○ならいいですよ」

「折角のお祝いに回転寿司かよ! まったく、お前のそういう所は変わらないな。もっと贅沢覚えろ」

「分不相応です」


 嘆く黒田の隣で、悠はツンと突っぱねる。そのうちに面白くなって、悠は吹き出した。なんだかこういう空気は久しぶりな気がしたのだ。


「まぁ、たまにはいいか」

「無理しないでください。黒田さんに回転寿司って似合わないですよ」

「お前が合わせるか?」

「それも嫌です」


 本当に、まずは高校を合格したら改めて、黒田を家に招待しよう。これまで沢山お世話になったその感謝をほんの少し伝えられれば嬉しい。鳥羽に習って料理などしてみるのもいいかもしれない。そんな思いを、悠は抱いていた。


 車は徐々に海沿いに。見えてきたのは夢の国。流れる車列についていって、いざ楽しい遊びの時間だ!


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