どうも、小鬼です。名は
この場所はとても恐ろしいです。弱い奴らを食らって大きくなっていた時は分かりませんでしたが、今は分かります。
鳥羽さん、気配がしません。幽霊なんで特にです。なんだかとても得体が知れません。幽霊ですけれど。
九郎丸さんは真逆で、もの凄い存在感です。なんだか、猫に追いかけられるネズミの気持ちがよく分かります。
何より怖いのが巫女姫様です。頭につけている金冠、姫の気を損ねるとキリキリ締まります。頭割られるんじゃないかと不安があります。
その中で悠様だけはとてもお優しい気がします。
先ほど、「有難う」と言って唐揚げを分けてくれました。一緒に霊力も分けて貰えて、元気が出ました。
それにしても、悠様は隙の多い人だと思います。甘いです。おはぎに生クリームを絞って上にのっけてアイスを添えたくらい甘いと思います。
まず、襲ったオレを殺さなかったのが甘いです。妖の世界ではありえません。
だからこそ、オレは悠様にとても感謝しています。
『ね~ぇ~。悠とその黒田って人って本当になんでもないの?』
鏡の巫女様は、なんだか期待の籠もった声で言っております。どうやら、BL的展開を期待している様子です。
「これがな、ないんだよ。いや、多分だが黒田の旦那はそういう気持ちもあると思うんだぜ? だが悠の方がまったくでな」
『そうなの! 少なくとも片方はその気なのね! いや~ん!』
そうなのですか。悠様、もしかして危険なんですかね?
「そういう関係ではありませんが、悠様も黒田さんを慕っておりますよ」
『そうなの~!!』
巫女様、とても嬉しそうです。
オレはお茶を淹れて皆様に配って、悠様のお部屋に顔を出しました。既にお休みのようですが、冬が近づくにつれて寒くなって参ります。覗くと、お布団をはねのけておりました。
お布団をどうにか戻し、お側に水を用意して戻ってみると、鳥羽さんだけが起きておりました。
「おや、どうしました?」
小さくなって声も小さくなり、残念ながら悠様には聞こえなくなってしまったようです。それでも『悠様の様子を見て参りました』と伝えると、鳥羽さんは「そうですか」と返ってきた。
正直嬉しくて、ちょっと泣きたくなりました。
「それにしてもお前、律儀者で今はいい奴なのに、何故昨夜はあのようになっていたのですか? それに、小鬼にしては随分と力をため込んでいましたが」
オレは、ひたすら何でも食べた事を伝えた。食べて強くなれば鬼神にだってなれると、通りすがりの妖が教えてくれた事を伝えた。
すると鳥羽さんは呆れた顔で溜息をついた。
「気が変容するほど妙なものを食べてはいけません。思考や人格まで歪みます」
それは身をもって知りました。反省しています。
「まぁ、ここに居ればそのような事もないでしょう。悠様、かなりお人好しですからね。お前の事も大切にしてくれますよ」
困った顔で笑う鳥羽さんは、そのくせとても優しい顔をします。
それにオレも、その通りだと思います。お人好しな悠様へ、いつかこのご恩をちゃんとお返ししたいと、そう思うのです。