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8-1

子供は七ヶ月で出産という形になってしまったが、無事だと言われた。

私は胎盤剥離の影響で出血が酷く、再び出血しないようにしばらくは絶対安静だと言われ、枕から頭を上げるのもままならない。


「うわーっ、可愛い」


まだ起き上がれない私のために、看護師さんが赤ちゃんの写真を撮ってきてくれた。


「ね、宣利さん。

可愛くないですか」


保育器に入る我が子の写真を彼に見せたものの。


「あ、ああ」


取り繕うように笑い、宣利さんが写真も見る。


「可愛いな」


口ではそう言いながらも、彼は心ここにあらずといった感じだった。

私が意識を取り戻してから、いつもそう。

ずっとなにかを思い詰めたように考えている。


「なにを、考えているんですか?」


「あー……。

今日の晩ごはん、なんにしようかな、って。

花琳がいないとあんまり食べる気が起きないんだよね」


宣利さんは笑っているが、嘘をついている。

絶対、別のなにかを考えていたはず。


「僕はそろそろ帰るけど、花琳は無理しちゃダメだよ?

あとちょっとの辛抱なんだからさ」


「……わかってます」


もう母親になったというのに、子供扱いされた気がして唇を尖らせる。

そこにすかさず、彼は口付けを落としてきた。


「おやすみ、花琳」


「おやすみなさい」


椅子から立ち上がり、宣利さんが病室から出ていく。


「……はぁーっ」


ひとりになり、ため息が出た。

こんなに心配させる事態になってしまい、申し訳ないとは思っている。

でも、私も子供も無事だったのだ。

笑っていていいのに、宣利さんは苦しそうになにかずっと思い詰めている。

そんなの、私まで苦しくなる。


今日、店の様子を見がてら両親が見舞いに来てくれた。


『お前も子供も無事でよかった』


涙ながらに言われ、大変申し訳ない気持ちになった。


さりげなく宣利さんが話してくれない、私が転んだ原因について尋ねてみる。

予想どおりというか、やはり典子さんが私に足を引っかけていた。


『大事になっているのを見てあきらかにしまったって顔してたし、ここまでの事態は想定外だったんじゃないか?

かといって許されないけどな』


父も母も苦々しげだったし、それは私もわかるからなにも言わない。

でも、私が思ったとおりだった。

きっと私が晴れの舞台で無様に転ぶところを見て、笑いたかっただけなのだ。

ただ、それが彼女の想像とは違ってこんなに大事になってしまっただけ。

だから許せといわれたら難しいが、けれど報復したいとは思わない。

しかし、宣利さんはそう考えているのではないだろうか。



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