子供は七ヶ月で出産という形になってしまったが、無事だと言われた。
私は胎盤剥離の影響で出血が酷く、再び出血しないようにしばらくは絶対安静だと言われ、枕から頭を上げるのもままならない。
「うわーっ、可愛い」
まだ起き上がれない私のために、看護師さんが赤ちゃんの写真を撮ってきてくれた。
「ね、宣利さん。
可愛くないですか」
保育器に入る我が子の写真を彼に見せたものの。
「あ、ああ」
取り繕うように笑い、宣利さんが写真も見る。
「可愛いな」
口ではそう言いながらも、彼は心ここにあらずといった感じだった。
私が意識を取り戻してから、いつもそう。
ずっとなにかを思い詰めたように考えている。
「なにを、考えているんですか?」
「あー……。
今日の晩ごはん、なんにしようかな、って。
花琳がいないとあんまり食べる気が起きないんだよね」
宣利さんは笑っているが、嘘をついている。
絶対、別のなにかを考えていたはず。
「僕はそろそろ帰るけど、花琳は無理しちゃダメだよ?
あとちょっとの辛抱なんだからさ」
「……わかってます」
もう母親になったというのに、子供扱いされた気がして唇を尖らせる。
そこにすかさず、彼は口付けを落としてきた。
「おやすみ、花琳」
「おやすみなさい」
椅子から立ち上がり、宣利さんが病室から出ていく。
「……はぁーっ」
ひとりになり、ため息が出た。
こんなに心配させる事態になってしまい、申し訳ないとは思っている。
でも、私も子供も無事だったのだ。
笑っていていいのに、宣利さんは苦しそうになにかずっと思い詰めている。
そんなの、私まで苦しくなる。
今日、店の様子を見がてら両親が見舞いに来てくれた。
『お前も子供も無事でよかった』
涙ながらに言われ、大変申し訳ない気持ちになった。
さりげなく宣利さんが話してくれない、私が転んだ原因について尋ねてみる。
予想どおりというか、やはり典子さんが私に足を引っかけていた。
『大事になっているのを見てあきらかにしまったって顔してたし、ここまでの事態は想定外だったんじゃないか?
かといって許されないけどな』
父も母も苦々しげだったし、それは私もわかるからなにも言わない。
でも、私が思ったとおりだった。
きっと私が晴れの舞台で無様に転ぶところを見て、笑いたかっただけなのだ。
ただ、それが彼女の想像とは違ってこんなに大事になってしまっただけ。
だから許せといわれたら難しいが、けれど報復したいとは思わない。
しかし、宣利さんはそう考えているのではないだろうか。