(蒼く燃える剣気……|剣罡《けんこう》だと!)
剣罡とは、体内の気を練り合わせることよってかたちづくられた剣をさす。
内功を自在に操る卓越した実力が必要不可欠であり、剣罡の使い手とはすなわち、武功の達人であることの証。
剣罡は使用者の内功を反映する。
「ちがうから……その子の父親は、彼じゃない!」
「……はぁ、なるほど。よくよく考えてみればそうですよね。理解しました。胸糞悪いことに変わりはありませんけど」
早梅の訴えを受け、眉間をおさえた憂炎が嘆息。
「失礼いたしました、殿下。わたしの早とちりだったみたいで」
「早とちりで殺されそうになった私の身を思えば、そう悪びれもなく上辺だけの謝罪はできぬはずだがな。そして、私は
「おや、これはおみそれしました。かさねてお詫び申し上げます」
暗珠が皇子であることに動じず、追及に難なく返すさまは、
「まぁま! うぁあ、まぁま、まぁま~!」
「
「んん、んうう……」
あれだけ泣きわめいていた赤ん坊が、早梅に抱き上げられたとたん、暴れるのをやめる。
ひとしきりあやし、泣き疲れた赤ん坊が寝入ると、室内はふたたび静けさに包まれる。
あとには、ばつが悪そうな早梅のすがたが残された。
「
「私の息子だ」
「そのへんから拾ってきたとかじゃないですよね」
「私が生んだ」
「うん、まぁ、でしょうねぇ……最悪だ」
「息、子……生んだ、だって……どういうことだ!?」
「ああもう、わからないひとですね」
めまぐるしくくり広げられる光景に、混乱極まれり。
うろたえる暗珠を、憂炎が苛立たしげに一刀両断する。
「いいですか、あの子からは、梅雪ともうひとり、あなたとよく似たにおいがします。だからあなたに斬りかかったんです。でもちがった。父親はあなたじゃない。わたしがなにを言いたいか、さすがにわかりますよね?」
「っ……待て……そんな、はずは」
「えぇそうです。あの子の父親は皇帝陛下。もっとわかりやすく言いましょうか? あなたの父親が、梅雪に乱暴をして生ませた。それがあの赤ん坊であり、あなたの弟なんですよ」
「うそだ、そんなはずはない! うそだと言ってくれ、梅雪……!」
「……憂炎の言っていることは事実です、殿下。この子の父親は、
「なっ……そん、な」
彼女は、なにを言っているのだろうか。
最愛の女性を、尊敬する父が犯したなど。
そのようなことが、あってはならないのに。
「誤解のないよう申し上げますが、
早梅の言葉が、暗珠には、どこか遠くにきこえる。
茫然自失へおちいったさなか、とん、と肩を叩かれる感触がある。
「おまえは物事の側面が見えてない。俺の言った意味が、わかるな?」
「……ちち、うぇっ……!」
悲痛な声とともに腹の底からこみ上げる感情がなんなのか、暗珠には理解できなかった。