結い上げた
身支度を終えた
すると朝食の席には、先客がいたようで。
「んで? うちの
「いやだなぁ、一目惚れしたから、ではいけませんか?」
「きな
「おやおや」
卓についた
はたから見れば、悪酔いしたチンピラがほかの一般客へからんでいる光景に見えなくもない。よくて圧迫面接。
「
「お嬢さまが求婚されたとうかがって、『どこの馬の骨だぁ! 俺がたしかめてやらぁ!』とのことです」
「……君は
「黒皇は烏ですよ、お嬢さま」
いや、
至極真面目な黒皇による状況報告を受けた早梅は、もう一度正面へ向き直る。
「まぁまぁ。お茶でもいかがですか? お
「だぁれが『お祖父さま』だ、俺は認めねぇぞー!」
やはりどこぞのチンピラよろしく、晴風が一心にガンを飛ばしていることに変わりはない。
せいぜい十七、八そこらの若者が、二十代半ばの青年につっかかっている構図だ。
晴風が千年余りを生きる仙人だと知っているからこそ、かろうじて理解できる光景だろう。
「あぁ
「おはようございます、一心さま。失礼いたしますね」
どう話しかけるべきか早梅が判断しかねていると、一心のほうから助け舟を出される。
まばゆい笑みをちょうだいしては、早梅も断れぬというもの。
優雅に一礼を返した早梅は、となりを指し示す一心には気づかないふりで、晴風の下座にあたる椅子を引いた。
そのとき、早梅は見てしまった。栗色に白と黒、三毛の猫耳をしゅんと垂らして落ち込む、一心の幻覚を。
(ごめんなさい、一心さま……でもね、圧がすごくて! 風おじいさまと黒皇の!)
下手に逆らえば、困ることになるのは早梅だ。具体的にはお
「みなさんおそろいですし、朝餉にしましょうか」
ずぅん、と重い空気を背負う早梅を救ってくれたのは、意外にも、にこやかな一心のひと言だった。