すよすよと、赤ん坊が眠っている。
それはいい。眠るのが仕事なのだから。
「これ如何に?」
寝台から身を起こしたそのままの状態だ。寝間着すがたも甚だしければ、髪も櫛を通していない。
ならば身支度に取りかかればすむ話なのだが、早梅はそれができない。なぜなら。
「そんなくっつかれたら動けないよ、
背後から
黒皇が添い寝をしてくれるのはいつものことだ。ただ今朝はなんというか、寝ぼけているには、下腹部にからみついた腕力がいささか強すぎる気が。
「……おはようございます、早梅さま」
「うん? そうだね、あいさつはだいじだね。おはよう?」
まだ完全に睡魔から解放されていない早梅も、どこかずれた返答をしてしまう。
(こうして黒皇がくっついてくるのは、なにかしら言いたいことがあるときだからなぁ)
にぶいようでするどい早梅は、魔法の言葉をつむぐことにした。
「君ばっかりずるいぞ。私にもハグさせてよ」
「はぐ」
すると、黒皇の拘束の手がうそのようにゆるんだ。
ハグ。それが抱擁を示す異国語であることを、黒皇はもう知っている。
となれば、早梅を拒否する理由などあるはずもない。
「朝から甘えたさんかい? このかわいいやつめ~」
花に似た甘い香りがして、早梅が抱きついてくる。やわらかい乙女の感触が
早梅に受け入れられている。その事実が、黒皇をどうもわがままにさせてしまう。
「ずっと、こうしていたいです」
「えっ今日一日? それは物理的に無理かな?
「わかってます。言葉のあや、です」
「そーお?」
早梅の華奢な背へ腕を回し、こんどはやさしく抱き返しながら、黒皇はほほをすり寄せる。
そうして花の香りを堪能し、くすぐったいと身をよじる早梅のひたいやまぶた、ほほ、唇に口づけを落とすのが、黒皇の朝の日課だった。
鳥がついばむような黒皇のスキンシップが、今朝に限ってはなぜか執拗な気がするのは、早梅の思い違いではないだろう。
「ねぇねぇ、どうしたの?」
「どうもしません。早梅さまを、ここから出したくないだけです」
「それ、わりと結構なことだからね?」
「……いまからでも、抱きつぶしましょうか」
「きゃーっ、そこで小蓮が寝てるからやめて!」
「冗談です」
「冗談のトーンじゃなかったよ!?」
またこの烏は、大真面目になんてことを!
朝っぱらからの爆弾発言にびっくり仰天した早梅は、「そこで
むろん、目ざとく耳ざとい黒皇がそれを逃すはずもなく、「今度はいつ、