さて、カズマは無事護衛の依頼を受けれたようじゃな
わしはわしのやることをやらねばな
この国に来たのはカズマについてきたかったから、というのは建前で、情報を得るためじゃ
何やらこの国の女王は王兄に命を狙われておるという話
それも、幼いころは妹を可愛がり、仁徳にあふれた人物だったと聞く
過去の話と今の話を照らし合わせるに、あまりにも性格が変わりすぎておる
そもそもじゃ、黒幕と思われる闇勇者セイヴは、人の心を操る・・・、いや違うな。あれは操るという生易しいものではない
根本から変えてしまうのじゃ
そう、じゃからわしの母は、心を変えられたヒト族によって討たれた
あれほどまでに信仰されていたにもかかわらずじゃ
今では母の記録は古代遺跡に少し残る程度
現代ではかつていたのかもしれない程度にしか伝わっておらぬ我が母
悔しいのじゃ
「ふー、まずは王兄についての話を聞くとしよう」
わしは街の人々から情報を得るために、一番情報が集まる酒場を巡った
一般的な大衆酒場から、裏までな
半日をかけて情報を集めた結果
前王レルオンが長男、現王兄ロウドは、聞いていた通り昔はかなりの人格者じゃったようじゃ
優れた政治手腕と優しい人柄から、優王ラルオンと呼ばれた前王と同じく、その優しさと賢さを継いでいたようじゃな
それが、ある日を境におかしくなった
横柄な態度を取り、民は王のための道具だとのたまうようになった
可愛がっていた妹にまで暴力を振るうようになり、そうなってから2年後、女王であった母が病により逝去
数年後にレルオンも亡くなっておる
毒殺を疑われるも証拠が出ず王兄ロウドは何の罪にも問われておらぬが、十中八九彼がやったのだろうとの噂が広がっておるな
逆に現女王であるラフィナの噂はいいものばかりじゃった
彼女も優女王と呼ばれており、民を第一に考える立派な王となった
まあまだ若輩も若輩じゃが、いずれは良き王としての手腕を発揮するだろうと言われている
本来ならロウドが王になるはずじゃが、やはりその性格からラフィナが選ばれたようじゃ
ロウドは性格に難はあるものの、頭は良い
そのため奴を操ろうとする貴族もおらんのじゃろう
下手にそうすれば自分のみが危ぶまれるからじゃろうな
ふむ、確かに性格が変わる前と後ではかなり人柄が違うのぉ
やはり王兄周囲を調べる必要があるわい
わしは城に潜入し、王兄を探ることにした
もちろん人型ではつまみ出されるのが落ちじゃ
じゃからここは、蠅にでもなるかの
わしは城近くで蠅に化けると、難なく城内へと侵入を果たした
そして夜
王女の部屋で情報収集をしておると誰かが入ってきおった
まあカズマなのは分かっておるから、わざと掴まって胸をもませた
サービスじゃ
驚いておったが、わしはカズマからいい情報を得た
それは、王兄がキガシマへと向かったという情報じゃった
ふぅむ、キガシマとなるとここから少し遠いのぉ
やはり空を飛んでいくしかないか
キガシマは島国で周囲を海に囲まれておる
住むのは鬼人とヒノデの者たち
キガシマには国が二つあり、一つは島の名前にもなっておるキガシマ、そしてヒノデじゃ
キガシマは鬼人の国で、ヒノデはサイラと呼ばれるヒト族が住む
二つの国は互いに協力関係を築いており、かなり良好じゃ
じゃが、島自体は排他的で外の人間をよくは思っておらん
外におる鬼人は若いのばかりなのはそう言う理由じゃろう
鬼人はまあ、そこまで外との交流を断っているわけではないが、ヒノデは鎖国までしておる
キガシマ以外とは国交を一切結ばぬため、その生態は謎に包まれておる
まあわしは見たことがあるがな
どれもこれも英雄並みに強い、猛者ばかりがおる
島国という利点と、この世で最も肉体に優れた鬼人という種族がいるため、かつて誰もキガシマを攻めようとしたことはなかった
わしは人目につかぬ森の中で翼を広げると、人型のまま飛び上がってキガシマ目指して飛んだ
キガシマに来たのは数年ぶりか?
猫になってから数千年、様々な場所を旅し、カズマの元で定住するまでは放浪猫だった
そんな中でキガシマにも訪れたんじゃが、数年前とここは変わっておらんな
まあサイラは千年以上変わってないんじゃが
「こっちは鬼人の国の方か。鎖国はしておらんからところどころに別種族がおるの。サイラもおるようじゃ」
サイラは人間族に似ておるが少し違う
筋力が人間族の数倍あり、刀や強弓などを使う種族
古くはワコクという侍や忍びが住む国の者が、鬼人と交わって出来た種族じゃ
鬼人ほどに肉体強度はないが、しなやかな筋肉で、素早い戦いを好む
他には獣人や人間族か
人間族とサイラの違いは一目瞭然
額に角があるかどうか
鬼人とサイラの違いは角の長さじゃ
鬼人の方が角が長い
「ふむ、さて、どこで情報収集したものか」
キョロキョロと周りを見ていると、ひとりの鬼人少女が話しかけてきた
「あんた魔族? その捻じれた角、魔族だよね?」
「ふむ、そうじゃが、お主は?」
「あたしはテン。一応旅行のガイドやってんだ。あんた冒険者? それとも旅行者?」
「どちらかと言うと旅行者かのぉ。冒険者でもあるが仕事で来たわけではないからな」
「そっか、じゃああたしが案内したげるよ。お金はもらうけどねぇ」
「ふむそうか、では頼む」
わしは竜のころに集めていた宝の極々一部である金塊を彼女に渡した
「え、ええええええええええええ!! 多い、多すぎるよお姉さん!」
「よいよい、金なら有り余っとる。どうせ使わんから受け取っとけ」
「いいの? ありがとう!」
ふむ、吹っ掛ければいいものを、正直な奴じゃな
彼女に里を案内してもらい、その道中で王兄を探すとするかのぉ