不安で押しつぶされそうになる
まさかシュエリアでまで襲われるなんて
この国だけじゃない。敵は、兄は一体どこまで手を回しているのか・・・
父は兄がおかしくなってから亡くなった
もしかしたら、という思いもある
「どうすればいいの? 分からない。助けてお父様」
優しかったお父様との記憶がよみがえる
あの兄がおかしくなったころ、父も母も兄を心配し、様々な医者に見せた
優しかったはずの彼は、癇癪を起こし、弱いものを虐げ、小動物を・・・
あり得ない。呪いの類も疑われたけど、結果は全て正常
本当に、一体何が起きたのかが全く分からない
洗脳魔法の気配もなく、兄はただまっとうに、性格が変わってしまった
落ち込んでいるところに扉が叩かれる音がした
「ラフィナ様、護衛の冒険者たちがお付きになりました。お会いになりますか?」
「・・・、ええ、すぐ用意します。幾人程来てくださったのでしょう?」
「8人の精鋭です。なんとシュエリアからの冒険者も来てくださいました」
「分かりました。すぐに参ります」
服を着替え、来客の待つ応接間へ
「女王様、こちらの8人が護衛を引き受けてくださった冒険者の皆さんです」
近衛騎士団団長のゼーンが彼らを紹介してくれる
「まずは我が国の精鋭5名、Sランクパーティ、ワイルドハウンドたちです」
「よろしく姫さん! あ、すみません、言葉遣いを習ってこなかったもんで、こういう場でどう話せばいいのか分からねぇんで。俺はリーダーのダンって言う者でさぁ」
俺の前に自己紹介したのは熊獣人の男性で、見るからに強そうだ
武具を見るに、恐らく精霊の加護がついている
いや、俺が見ても何が分かるってことはないけど、どうにも何か、なぜか、分かった
まあ結構武器を打ったりしてるからなぁ、見極めができるようになったのかもな
精霊の加護を受けた武器
俺はまだ見たことがないが、精霊というのは正しい心を持つ者を好み。稀に加護を与えることがある
上位の精霊ほど強力な加護を与えてくれるそうだが、俺は下位の精霊にも会ったことはないな
一度は会ってみたいものだが、俺みたいに取柄がない者には無縁な話だな
「次いで、ソロで活動しているAランク冒険者のガーディ・マーズ様です。Aランクではありますがその実力はSランク相当です」
「お、お初にお目にかかります女王様。ががが、ガーディ・マーズです。かか、必ずやその御身を、おおおおおお守りさせていただきます!」
次に紹介されたのは小柄なネズミ獣人の男性
緊張しているのか、完全に上がってるな
「そしてこちらが! かのレースティン皇国が英雄、マナ・ミュー様です!」
「まあ! かのSランク魔物の牙王ダグタスクを討ったというあの!」
おお、それは街の噂で聞いたことがあるぞ!
牙王ダグタスク
巨大な狼の魔物で、様々な街を荒らして人を喰らった厄介な魔物だ
それをたった一人で討伐した若干17歳の剣術の天才
それが彼女、マナだ
「よろしくお願いします女王様!! 頑張って頑張って! 守り抜きますフンス!」
元気な娘だ
手にたくさんの剣だこがあることから、相当な鍛錬を積んでいるんだろう
レナと仲良くなれるかもしれないな
「そして、最後ですが・・・。おい、これは本当か?」
「はい! ギルドからも確かな情報だと調べはついております!」
「ふむ、こちらの方は、Eランクの、カズマ様です」
「Eだと!? なんでそんな雑魚がこんなとこにいるんだよ」
「この方はシュエリア国王様に認められています。たとえEランクだとしても、ここに立つ資格があるのです」
「はっ! 役に立つわけがねぇ。女王様もそう思うだろう!」
「い、いえ私は・・・」
なんだこいつ、いきなりの挨拶だな
だけどまあ、場違いなのは分かってる
俺だって国王様のこの印がなければここにはいなかったかもな
「あの、ここにいるってことはこの人もちゃんと選ばれた人ってことでしょう? それにほら、後ろの二人、あなたより強いんじゃないです?」
あわわわわ、俺がバカにされたことでファンファンとアネモネが殺気を放ってる
「消すか旦那様?」
「消しましょうすぐに」
「待て待て、俺は別に怒ってないからやめてくれ!」
「旦那様がそう言うなら」
ふぅ、こいつら止めておかないと何するか分からんからな
「けっ! 女に守ってもらう能無しが!」
ふぅ、なんとか矛を収めてくれたか
「てめぇ、旦那様は俺なんかよりもっと強いんだぞ。舐めてっと痛い目見るぞ」
「ちょ、やめてファンファン! せっかく矛を収めてくれたんだから刺激しないで!」
「んだこらぁ、上等だ! ならその旦那様の実力、俺が確かめてやる」
ほらもう! 俺は戦いなんてできないんだよ・・・
「いいぜ! 旦那様ならお前程度朝飯前だろうけどな」
「ファ、ファンファン!」
やめてくれぇ、Sランクとなんて戦えるわけないだろう
「ほっほっほ、これはいいかもしれませんぞ女王様、Sランクのリーダー、ダンと、Eランクにもかかわらずシュエリア王のしるしを持つ者との戦い。カズマ殿の実力を測る意味でも、二人の試合を設定してみては?」
「確かにそれなら理にかなってるかもね!」
えちょ、マナさん?
その後とんとん拍子に話が進んでいった
翌日に試合が組まれ、沈んでいる女王様を楽しませる余興として俺たちの試合は組まれた、気がする
目の前にいる熊獣人の大男
彼の実力は確かなものだろう
今回は殺し合いというものではなく、試合
使うのは木剣どうしだ
「俺は別に剣術の達人ってわけじゃねぇが、それなりに実戦は積んでいる。今のうちに土下座でもして謝れば許してやるが?」
「俺は弱い」
「分かってんじゃねぇか」
「でも弱虫じゃない」
「そうか、じゃあ痛い目見るか」
ダンという男はこちらを見、真剣な顔になる
強い。恐らくレナ以上に
ハール団長クラス、だろうか?
俺も少しは分かるようになってきたかもな
そして俺とダンとの戦いの火ぶたが切って落とされた