騎士団を再び訪れる
少し気まずいな
「あら? カズマさん忘れものですか?」
「やあミリア、さっきぶり。そう言うわけじゃないんだけど・・・。あれ? 団長さんは?」
「先ほど伝令が来たので、そちらに向かわれましたわ」
伝令、なんだろうな?
取りあえず団長が向かった作戦室へと通してもらった
「む、来たね。今丁度伝令が届いたところだ。君を騎士団に組み込んで、女王様の警護に当たってもらう。まあ敵が現れた場合は騎士たちが相手をするから、君は警戒して怪しい人物がいないかを見ていてくれるだけでいいよ」
それなら楽でいいかもな
まあ騎士団なんて精鋭の集まりだから、そもそも俺が組み込まれること自体が場違いなんだが
「なぜ俺なんですか? 冒険者なら俺なんかよりはるかに役立つ人たちがいるでしょうに」
「君は自分のことを低く見積もりすぎだ。君の作る薬や料理は世界的に見ても優秀すぎるほどに優秀だよ。現に騎士団も助かってるからね」
ま、まあ、料理の腕なら師匠が良かったおかげか、これだけで食べていけるくらいには得意だって誇れるな
だけど、ここでそれに胡坐をかいて調子にのっちゃだめだ
慢心は失敗の元ってのは、昔冒険者としての一歩を踏み出したときに嫌というほど味わったからな
シャレにならない怪我をして、教会で治癒師のお世話になった時も、その治癒師に滅茶苦茶に説教されたし
「当日君を配置する場所は、城の東塔の下だよ。ここには女王様が滞在される予定だ。しっかりと見張っててくれ」
「分かりました。では当日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
団長との話を終え、俺はこの街に宿をとることにした
一度家に帰ってもいいが、また来るのめんどくさいからなぁ
そう言えば少し前に細工で作ったイヤーカフスを二人に渡しておいたんだったな
通信用の魔術が施されてるから、遠くにいても会話ができる
これは細工の師匠ラーニアさんに教えてもらった技術(帰る時渡された紙に書かれてた)だ
おかげでファンファンたちともすぐに連絡が取れるようになったのは嬉しい
ひとまず二人に連絡して、帰るのが遅くなることを伝えた
二人共素直に理解してくれたな
そして俺は宿屋へと向かった
翌日
昼前にどうやら女王様が到着したようだ
早速俺は騎士団に呼び出され、騎士の鎧を着させてもらった
鎧なんて革の鎧くらいしか着たことがないから、結構重くて驚いた
レナ、こんなの着てあのスピードで動けてたのか
そして俺は女王様のいる東塔で持ち場についた
騎士団の人達はほとんどが顔見知りで、快く俺を迎え入れてくれた
「カズマさん! 助かりますよ。あ、俺のこと覚えてますか? ルドンです」
彼は確かレナの二年先輩の騎士で、人懐っこい笑顔が特徴の騎士だ
「覚えてるよ。それで、俺はどの辺にいればいいのかな?」
「こっちです」
彼に連れられて持ち場に着く
「まあ俺たちが監視もしっかりしてますし、楽にしててもらっていいですよ」
「それだと仕事したことにはならないから、ちゃんと俺も監視するよ」
「さすがです!」
取りあえず、怪しい人物がいないかを見てるだけの簡単な仕事だ
俺は通りに面した道を見つめつつ、塔を見上げた
かなり高く、城から続く通路か、俺の近くにある扉からしか人は入れない作りになっている
ここを登るのは普通じゃ無理だろうな
上にある通路の方にも騎士がいるようなので、警備は万端だ
そのまま時間は過ぎていって、夜になった
「交代ですカズマさん」
「レナ」
「私もここの夜の警備を任されたんですよ。誰も通しませんよぉ!」
気合ばっちりのレナ
まあ彼女なら大丈夫だろう
「ありがとう、じゃあ休憩してくるよ」
そう言って離れようとしたとき、急激な眠気が襲って来た
「あれ? なんだか、眠く」
レナも同じのようだ
まずい、これは敵の
まどろみの中、俺の意識は途切れた
✕✕✕スキル強制発動
ツクヨミ
「まったく、この程度の魔術にかかるなんて。まあそこが可愛い所でもあるのよねぇ。弟にだけいい恰好はさせないわ。見てなさい」
カズマの目がカッと見開かれ、女性口調で口が勝手に声を発し始める
「ふー、男の子の体じゃ動きにくいわね。それっと」
カズマの体が淡く光り、胸と尻が膨らみ、腰がくびれ、あるべきものがなくなった
「これでよしっと。さてと、犯人は」
女体化したカズマ?は塔の上を見上げる
「いたいた」
ちょうどそこには、小柄な少女を抱えて窓から飛び出した何者かの姿があった
「いよっと」
軽く地面を蹴り、宙を舞ってその人影の目の前に現れた
「な!?」
驚く暗殺者らしき影は、逃げようと踵を返すが、首根っこをあっさりと掴まれて地面へと叩き落された
「ふぅ、大丈夫お姫様?」
「あ、うう」
恐怖で失神してはいるが、女王ラフィナに怪我はないようだった
「それじゃ、あたしはこれで!」
ラフィナを塔のベッドに腰かけさせ、カズマ?は地面に着地した
叩き落され、辛うじて息のある暗殺者を拾い上げると、縛って傷を癒し、その暗殺者から見えない場所で女体化した体を元のカズマの体に戻し、そのまま彼の中の何かは消えた