心配して治療院に来てみれば、なんじゃこの幸せそうな寝顔は
ふむ、依頼はちゃんと達成したようじゃな
「あら、アルクさんじゃないですか」
「おお、院長さんか。どうじゃった? わしの弟子は」
「すごかったですよ。依頼以外の方も全員治していただいて・・・。はっきり言います。教会で聖女にするべき方です。あれは、伝承に伝わる聖女リアラスにも引けを取らないレベルです」
「やはりそうか。わしの眼に狂いはなかったということじゃな。じゃがその提案は受け入れられん。こやつはわしの弟子じゃからな」
わしはそのままアネモネの寝ているベッドの横に腰かける
ふう、まぁ分かっていたことじゃが、やはり魔人ともなるとこうも突出するんじゃな
こやつは魔人でありながら人と共に歩んでおる
そもそもなぜカズマが魔物を魔人に変える力を持っておるのかは分からんが、元々は魔王の配下の魔人によるところも大きいじゃろう
ファンファンは確実にそうじゃな
じゃが、このアネモネはそう言った影響を受けてはおらんはずじゃ
にもかかわらずここまでの力を持った魔人へと変化した
カズマも魔王やその配下と同じような力を持っておるのか?
いや、あの不思議なスキル以外やつはただの凡夫でしかない
じゃからあのスキルがおかしいのじゃろうな
神の如きスキル
特にあの✕✕✕スキルという訳の分からないスキル
あれは死者蘇生すらを可能にしていた
わしでも不可能じゃぞ
「う、ううん、あれ? 師匠?」
「お、目が覚めたか。よくやった! どうじゃ? 自分の力が上がった気がせんか?」
「そう言えば、なんだか治療途中から使い方のコツが分かった気がします」
やはり習うより慣れろじゃな
優しい魔力がアネモネに充実しておるわ
「師匠、私、みなさんのお役に立てますか?」
「もちろんじゃ! ガンガンと治療依頼を受けよ! 体に染みついて無意識でも使えるくらいに鍛え上げるんじゃ!」
「はい師匠!」
ふむ、素直でいい子じゃ
・・・
こやつ、さらに魔人としての成長を遂げそうじゃのぉ
ファンファンがもうすぐと言ったところじゃったが、こやつもあと少しか
どう成長するか楽しみじゃのぉ
翌日、魔力の回復したアネモネをねぎらうために魔物討伐にやって来た
「あの、ねぎらいとのことでしたが」
「そうじゃ。自分の分は自分で取るんじゃぞ」
「えっと、何をでしょう?」
「ワイバーンじゃ! ワイバーンの肉はうまいぞぉ。取ったらその肉で焼肉じゃ!」
「はぁ・・・」
腑に落ちない顔をしておるが、これはこやつのためでもある
こやつは元々草ばっか食っておったからな
肉を食わせて体力を付けさせる!
それに魔物を倒すことで体力をつけさせれる!
一石二鳥と言うやつじゃな
ん? 草食系が肉食って大丈夫かじゃと?
魔人じゃぞ? 雑食性になっとるわい
さて、ワイバーンはこの辺りに群れておるはず
ここは赤の山から少し離れた名もなき山
ワイバーンがめちゃくちゃ生息しとる
もうそりゃもう、うっじゃうじゃじゃ
「ほれ、もう出て来たぞ」
「ひぇ! あ、あんなに」
数十匹ほど出て来たな。わしがエサのように魔力を少し漂わせておるからのぉ
「まず5匹」
わしは魔法で先頭にいた5匹を撃ち落とした
「さすが師匠です」
「お前も攻撃魔法くらい使えるじゃろう? 魔力の総量を上げる訓練じゃて」
「なるほど、頑張ります!」
アネモネが魔力を練っておる
やはりか、まあ本当の魔法を使えるレベルではないが、魔術なら十分に、と言ったところかのぉ
「レッドアロー!」
火を矢のように飛ばす魔術か
なかなかにコントロールがうまい
「ブルースワロー!」
鳥のような氷を放つ魔法か
美しいじゃないか
「グリーンウィンド!」
ほほぉ、風で真空を作って刃にするのか
・・・
こやつ自分で魔術作っておらんか?
わしこんな魔術知らんのじゃが?
「どうですか師匠? 3匹しとめました!」
「よくやった! 残りは任せい」
わしは手を空中にかざす
「トゥトアンクラムラ」
手から黒い影が放出され、残りのワイバーンどもを捉えて魂を喰らった
ふむ、久しぶりに使ったが、問題ないようじゃ
「し、師匠、その魔法は・・・」
しまった、これはかつてのわし、つまりダークドラゴンしか使えぬ魔法じゃった
こやつは歴史をよく学んでおった。これはバレたやもしれん
どうしよう
「すごいです師匠! そんな魔法見たことがありません!」
「う、うむ! わしのオリジナルじゃて」
尊敬の眼差しで見て来るアネモネ
フハハ、可愛いやつよのぉ!
全てのワイバーンは家に持ち帰り、その日は大いに盛り上がった焼肉パーティー
こやつ一人で5匹分喰いおった
まあわしは10匹じゃから、わしの勝ちじゃな
何の勝負をしとるんじゃわしは
というかカズマたち遅いのぉ
カズマの作った飯が食いたいわい
アネモネも確かに料理はうまいんじゃがな
カズマの料理は神がかっておる
マジでうまいんじゃ
わし、あれなしでは生きていけん体になって来ておるのやもしれんな
いやそれでもいい
あ奴はいずれわしの夫にでもしてやろう
喜ぶがいいぞカズマ
わしの初めてはお前のものと決めたからな