やはり、ヒト族、ヒト族こそ新たなる魔人にするにふさわしいはず
オレガ様は未だ力が回復せず、まともに動くこともままならない、けど、常にねぎらいの言葉を、かけてくれる
あの二人も・・・
そう言えば、私達三人以外の姿が見えない
魔王配下である幹部は、12人
セリは地下、あいつはどこかへ、出かけたし、あのひとも、あのひとも・・・
あとの4人は、どこへ?
「まあ、今はそれどころじゃ、ない」
過去人間で、やったことのない、魔人化実験
人間を、魔人にすることは、オレガ様はあまりよく思っていない
でもこれは、私達魔物の復讐のための、戦い
たとえオレガ様の心を、傷つけてしまうとしても、進めなくちゃ、ならない
「行ってくる」
「気を付けてね」
この山を見張るエルフたち
あれを捕まえて、魔人にする
操れるかは分からないけど、ヒト素体なら魔物よりも、私達の域に近づくかも
私の目的は、幹部クラスの魔人の増加
全世界に戦争を仕掛けるには戦力が足りない
あの国はそのための拠点となるはずだったのに、私が、失敗したせいで、計画も大幅に、遅れている
何とかしないと
そして赤の山から出てきた瞬間に、監視役、と思われるエルフに遭遇した
4人のエルフは、弱かった
やっぱり今まで放っておいたから、そこまで警戒、してなかった
これなら、簡単に捕獲できる
一人は逃げたけど、増援もこの程度ならどうってこと、ない
そう思っていたのに、来たのは
「あの時の、ゴブリン?」
一匹だけ逃げたゴブリン
大した力もなく、ただ他よりも珍しいだけだったあのゴブリンが、鬼の力を持った魔人に変わっていた
一見すると鬼人にしか見えないけど、魔力の質はまったく違う
その鬼人は、まさに私が求めていた魔人だった
「これは、思ってもない! お前、お前を連れて帰る!」
私は彼女を連れて帰ろうと手を伸ばしたけど、思った以上に、反応が、早い
見たことのない剣技を、器用に操るそのしなやかな、体
美しいと、思った
でも、こいつは、きっとなびかない
心の主をすでに、決めている
洗脳でもしない限り、こっちにつくことは、ない
なら、その道の専門家を、連れてくるまで
それに、ここにこいつがいる限り、計画は進めれない
それならいったん体勢を、立て直さないと
逃げ帰った私は、二人に泣きついた
慰められて、元気が出た
事情を話し終えると、クーミーンが提案してくれた
「洗脳ならあいつだろ。ほら、セリだセリ」
「セリ・パルルスフォイン・・・。今引きこもっちゃって部屋から出てこないのよ」
「だぁもう! 幹部連中あたしら以外動いてないの何なんだよ! ハッカなんてちょっと世界を見て来るって言ったっきり帰ってこねぇし!」
「仕方ない。とりあえず今は、セリに強力、してもらう」
「あいつ大丈夫か? 勇者にやられたのがショックで引きこもってるわけだし、今出て来るのかよ?」
「説得するしかないわねぇ」
セリのいる場所は、城の地下
魔人たちが暮らす居住スペース
とはいっても、昔の魔人たちはもういないし、私が作った簡易魔人も連れてこれてないか、全滅してる
復活した、幹部連中だけ
セリはその中でも、最弱で、多分一般的な人間くらいの、力しかない
洗脳に関しては、魔法を凌ぐけど、守ってくれる魔物がいないと、何もできないし、負ければショックを受けて、すぐ引きこもるから、やっかい
で、今回は、かつての勇者にやられた時の、記憶が、ずっと後を引いてる
扉を叩いて、無理やり中に入る
「ふぇええ、なんなんですかぁ。もうほっといてくださいよぉ。あっしはだめだめクソザコ魔人なんで、役に立てないんですよぉ」
思った以上、後を引きすぎてる
「いいから来いって! ミンティがお前のこと必要なんだよ!」
「ふぇ? ミンティちゃんが? えへへ、あっしのこと必要なんですかい?」
「うん、お願い、手伝って」
「まっかせなさーい! このセリ・パルルスフォイン、どんな魔物だろうと魔人だろうと、勇者だろうと!! 洗脳して味方につけちゃいますってもんよ!」
「単純・・・」
「しっ、いい気になって乗せてやってれば相当の実力を発揮してくれるんだから、褒めてあげなさい」
セリは落ち込みやすいけど、褒めればものすごく心強い
部屋からあっさり出て来てくれた彼女に、説明する
「なるほど、で、あっしはその鬼人に似た魔人を洗脳して、幹部へ引き入れたらいいん? おっけーおっけー、任せろってなもんですよ! うぇへへへへ」
結構は翌日
監視の目で確認したところ、今は引き上げてる
きっと明日も来る
それも、あの魔人を連れて
「にしてもその魔人、やばいね。あっしならあっさりやられるのは分かるってもんだけど、ミンティちゃんがやられるって相当だねい。あっしら幹部の中でもミンティちゃんって、中間ぐらいの強さじゃなかったっけ?」
「ああ、だからこそそいつが必要だ。俺たちの戦力になるだろうからな」
「えっへへへへ! 聞いたところそいつってのは愚直なんだしょう? そいう奴ほどかかりやすいってね。あっしの力なら容易い容易い」
おだてすぎたかも。すごく、調子に乗ってる
でも実際セリは調子に乗らせた方が、調子がいい
そして翌朝
私とセリであのエルフの見張りがいた場所まで戻って来た
案の定、エルフとあの鬼型魔人、そして、一般的な人間の力しかない、あの男がいた
エルフたちを見る
おかしい、致命傷だったはず、なのに、全員が何事もなかったみたいに
高位の回復魔法の使い手が、いた?
エルフなら、あり得ないことじゃない
それに、ここのエルフは・・・、聖女リアラスの子孫・・・
リアラスは今、魂を元の体になじませるために、眠りについている
今動けない彼女のことを、考えたってしょうがない
「セリ」
「はいさ!」
セリは黒い鬼型魔人に向けて力を放った