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第59話

 細工スキルレベル10の最高位の細工職人であるラーニアさん

 彼女の弟子になってからが大変だった

 そもそも彼女はかなり感覚的なところで作っている節があり、教え方は壊滅的に下手だった

「ここはねぇ、こう、ガーってやった後にグニッと回したら、後はひょろろんって感じで繋げるの」

「は、はぁ・・・」

 駄目だまるっきりわからん

「あの、イリュゥさん?」

「すまない、私もよく分からないんだ。だが、その感覚を掴んでくれ。過去母上の弟子になった者は、この感覚を掴むことで飛躍していった。掴むしかないんだ。母上の感覚を」

「難しいな。でも、やってやる!」

 細工スキルが加わればさらにアイテム作成の幅が広がるだろう

 武具のようにかさばることのない防具を作ることができるようになるんだ

 細工スキルは作ったアクセサリーなどに魔力を付与することで様々な効果をもたらすことができる

 魔石を使った技術と違うところは、攻撃系の力が多い魔石の力(自分がなんども試した結果)に対し、細工スキルによる魔力付与は、能力向上を目的としているところにある

 俺が今まで作って来た魔石付きの武具では、身体能力を強化したりできるものは少なく、ほとんどが魔物の能力を発現できるというものだ

 なんとかこのスキルをものにしたい


 数日後

「あらぁ、いいですねぇ。そこをもう少しぐいーんってしてみてくださいね」

 相変わらず教え方が分からないが、少しずつ彼女の言わんとすることが分かって来た、気がする

 そのおかげか、細工スキルが俺のスキルの一つとして開花した

 レベルは1で、それでどこまでできるのか分からない

 なにせ俺の鑑定レベルじゃスキルレベルくらいしかわからないからな

 一応ラーニアさんに聞いてみたけど

「えっとですね、レベル1じゃまだまだ作れるようになった、くらいですねぇ。レベル4になったらぁ、ズガガーンってきて、色々どどーんです!」

 まあ恐らくだが、魔力を付与できるようになるって話なんだと思う

 段々と彼女の言ってることが分かって来ている

 俺、大丈夫かな?

 最近彼女とずっといるせいか、言葉遣いと言うか言い回しが移ってきた気がする


 それからさらに数日後

 俺もすっかりエルフの里に馴染んできたかな

 エルフたちは普通に俺に挨拶してくれるし、差し入れとか持ってきてくれるし

 何ならここで暮らしたくなってくるくらいだ

 ファンファンも狩りなどについて行って慕われてるしな

「そーそー、いい感じぃ」

 細工スキルもいい感じに伸びてきている

 レベルは3になっていた

 まぁ数をこなせばここまではすぐ上がるんだよな

 今までの生活スキルがそうだったから

 そしてこの日もラーニアさんの元数をこなしていたんだが

「カズマさん! 出ました!」

 フェナンが突如飛び込んできて、俺の手を引っ張って連れ出した

「魔人か!?」

「ええ、今イリュゥさんが・・・。急がないと!」

 イリュゥとフェナン、そして男性エルフ二人の計四人で赤の山を見張っていたところ、突然、本当に何の脈絡もなく角の生えた少女が現れて、エルフの男性のうちの一人を殴り飛ばしたらしい

 その彼は血反吐を吐いて倒れ、動けなくなったところでイリュゥが戦闘態勢に入り、フェナンが急いで俺を呼びに来たというわけだ

「今まであんな突然に出てきたことはなかったのに、急がないとイリュゥさんが!」

 俺はポーションを用意し、フェナンに飲ませ、自分もグビリと飲んだ

 足を速くするポーション

 俺たちは風よりも速く走り、イリュゥの元へ駆けて行った


「イリュゥさん!」

 すでにイリュゥは、その少女に転がされていた

 ドクドクと腹部から血が流れ続けて、大きな血だまりを作っていた

「こいつと、こいつ、あと、お前」

 一瞬で距離を詰めると、少女はフェナンの首を掴んで地面にたたきつけた

「素材は、多い方がいい。魔物だけじゃだめ。やはりヒト族で、やるしかない」

 何かをブツブツと言っているが、フェナンの出血も激しい

 たった一撃で、あの実力者のフェナンが・・・

「旦那様!」

 そこにファンファンが駆け付けてくれた

「お前、は・・・」

 ファンファンがその少女を見て固まる

「ん? お前、あの時の黒いゴブリン? フフ、ハハハハハ! いい、これは、すごい!!」

 少女はファンファンに歩み寄ってくる

「大剣術奥義、烈火三翔!」

 大剣についた魔石の力をさらに変化させて使ってる!?

「ぐ、あの時のゴブリンが、ここまで・・・」

「真大剣術奥義、大堕失(だいだろす)」

 まるで地獄から湧き上がっているかのような炎が少女を包む

「ガルドデラスキュル」

 しかし少女はその炎を腕から出した糸でくるみ、消してしまった

「想定外、予想以上、もっと準備してから、お前を迎えに行く。待ってて」

 少女は自身を糸でくるんでその場から消えてしまった

「ファンファン、助かったよ。四人を助けないと!」

「運んでくるぞ旦那様!」

 奥で倒れていた三人を軽々担いで連れて来てくれるファンファン

 イリュゥは腹部に大きな穴が開き、男性エルフ二人は胸部の骨がグシャグシャになっていたが、なんとか生きている

 一番症状が重いのはフェナンだった

 頭からたたきつけられたため、脳にダメージを負っているようだった

 不幸中の幸いか、なんとか意識を保ってくれている

 目や鼻から血が出ているため、早急にポーションを飲ませなければ

 四本のポーションを取り出し、三本をファンファンに渡してイリュゥたちの飲ませるよう指示

 もう一本をフェナンに飲ませた

「う、ぶっ」

 うまく飲めず吐き出したが、それでもなんとか飲み干してくれた

「あ、ああ、これは・・・」

 朦朧としていた意識が戻って来たのか、フェナンは立ち上がる

「すごい、こんなに効果があるなんて」

「大丈夫かフェナン?」

 イリュゥたちも起きあがってくる

 ひとまず話はあとにして里に戻ることにし、帰路を急いだ


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