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第57話

「キィイイイイイイイイイイ!!!」

 なんでなんでなんで! なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!

 私は、研究室、の、実験用道具を、机から全て叩き落し、た

「ハァハァハァ」

「ミンティ・・・」

「う、ぐすっ、うわぁあああんアロエラぁあああ!!」

「よしよし、大丈夫、オレガ様も怒ってないから気にしないの」

「でも、でも、オレガ様の、お役に立てそうだった、のに」

「大丈夫だってぇの! ほらこれで涙ふけって」

 クーミーンがハンカチを渡してくれる

 それで涙をぬぐおうと顔に近づける

「くさい!」

「ちょっとクーミーン! これ洗ったの!?」

「あ、わりぃ洗ってねぇ」

「あんたねぇ、服くらい変えなさいよ汚い! あとお風呂にも入りなさい!」

「やだよめんどくさい」

「まったく、そんなだからあんたは」

「うわあああああああああああああああああん!!」

「あああ、ごめんね、ごめんね、喧嘩しないからね」

「わ、わりぃミンティ、ほら、これなら綺麗だから。ほーら俺たち仲良し、な!」

「そうよ! ほら、うわくっさ」

「おい!」

「ぷっ、クスクスクス」

 二人のやり取りで、笑っちゃった

 二人は、いつも、私のために、動いてくれる

 私が、魔人になるのが、一番遅かったから、末っ子みたいに、思ってくれてる

 でも、私がアロエラに抱く感情は、家族愛じゃなくて、本当の、真実の、愛・・・

 気づいてはくれない、か

「気を取り直して、私、あれで作ってみる」

「とっておきね。がんばって」

「おう、ミンティはやればできる」

 今までこの研究は上手くいく見込みがなかった

 それを、ちゃんと形にする

 私は研究室に来ると、とあるヒトの死体を、取り出した

「許して。あなたは私達をずっと・・・。だからこそ、敬意を払う」

 死体は数千年という、時が経っているにも、関わらず、綺麗なまま

 彼女を使うのは、気が引ける

 でも、これも私達が生き残るため、だから

「死霊魔法、ソウルターン」

 死霊魔術とは違う、死者をこの世に呼び覚まし、遺体を操らせる魔法

 呼んだ死者は、この体の持ち主

「聖女リアラス、ごめんなさい、あなたを呼び覚ましたくは、なかった」

「ミンティ・・・」

 蘇ったリアラスには魔人の特徴の一つ、角が生えていた

 この人を、この戦いに巻き込みたくなかった、けど、あんな力を持つやつが、ヒト族の側にいるなら、仕方がない

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 リアラスは私を優しく抱きしめてくれる

「いいの、いいのミンティ、平和のために」


 魔人の監視をつづけてるけど、未だに出てこない

 少し前は一日に数度は出て来ていたそうだが、どうやらオークの進行を止められたことで計画が狂ったんだろう

「はぁ、これは山が外れましたね」

「だがいつ出て来るか分からん以上はここを張るしかないわけだが」

「交代が来たようですよ」

 里のエルフが俺たちと変わりに来てくれたようだ

 二人組の男性エルフ

 綺麗だからほんとどっちか分からないけど、この二人は間違いなく男性だ

 交代を終えて里に戻る

「そうだカズマ殿。細工スキルを学びたいと言ったな」

「ええ、街に細工師はいなくて、まだ持っていないんですよ、細工スキルは」

「ふむ、あなたならすぐにでも極めてしまうだろう。いい細工師を紹介しよう」

 昼をごちそうになったあと、その細工師の元へ

 この里一番で、エルフの中でも群を抜いているほどの細工師らしい

 良い師に恵まれるって言うのはなかなかないことだ

 俺はかなり強運の持ち主かもしれない

 鍛冶師、料理人、錬金術師

 それぞれに俺の師匠がいる

 鍛冶師スキル、人間とドワーフのハーフの女性師匠

 料理人スキル、厳しく、技は盗め気質の人間族のおじいさん料理人

 錬金術師スキル、・・・、変態人間族の女性錬金術師

 皆癖のある師匠だったが、超一流だった

 だからこそ俺もたくさんのことを学べたんだ

「その細工師は、その、少しだけ変わっていまして、実は私の母なのですが」

「あー、ラーニアさん常にお腹すかしてますもんね」

「カズマ殿、うちの母を見ても変なことは言わないでくれ。あの人は魔力の高さゆえに体に影響が出てしまってるんだ」

「見ても驚かないで下さいね」

 まあ今まで驚くことはいっぱいあったから今更驚かないだろう

 しかしやはりというか、魔力は体に影響するんだな

 二人の後を突いて歩くと、村の市場、といっても物々交換で商品を手に入れるタイプの商店数軒がある場所の少し奥に、小さな家があるのが見えた

「ここです」

 扉を開けてはいる

「母上、イリュゥが戻りました」

「まあああああ、まあまあまあまあ!! イリュゥちゃんおかえりなさーい!」

 イリュゥに飛びついたのは、子供!?

 進化前のファンファンくらいの大きさの少女だ

「よしよし、イリュゥちゃんはいい子でしゅねぇ」

「母上、客人の前でやめてください」

 顔を真っ赤にするイリュゥ、可愛いな

「あらー、あなたイリュゥちゃんの・・・。まさか彼氏とかじゃないでしょうね? お母さん許しませんよ・・・、あら? なかなか可愛い子じゃないの! それにこの気配。いい子を見つけてきましたねイリュゥちゃん。式はいつ?」

「母上落ち着いてください! あなたの弟子志願者です!」

「あらぁ?」

 キョトンと首をかしげる少女

 いや、イリュゥのお母さんか

 いやぁこれは、ギリギリ犯罪じゃないか?

 いやでもエルフではとっくに成人済みか

 いやでも

 この人の旦那さん、変態かもしれない

「おい今失礼なことを考えていないか? 父上は立派な人だ! 侮辱は許さんぞ!」

「すみません、決して侮辱的なことは考えてませんから!」

 怖い

 今一瞬殺意が出てたな

 ともかくだ、あっさりと弟子入りは承認され、早速今日から細工スキルを学べることになった

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