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第50話

 エルフの集落までは道なき道を行かなければならない

 一応招待状に地図を描いてくれてはいるが、うん、まあ何とかなるだろう

 鼻の利くファンファンもいることだしな

 彼女に手紙についている匂いを辿ってもらってるんだ

「こっち、こっちだぞ! すぐそこだ!」

「え、そんなに近いわけが」

 家を出てまだ数十メートルしか離れていない茂み

 そこを指さすファンファン

「え、いやそれは近すぎるだろう」

「でもここから匂いするぞ」

「そんなわけ・・・」

 俺が茂みをかき分けると、驚いた表情で固まる二人のエルフの姿があった

「え? な、え? 姿も、気配もなかったのに、一体どこから」

「ああ、これのせいか。えっと、エルフの里に行くには俺の実力じゃ難しいんで、魔物から発見されないよう薬を服用してたんです」

 俺は隠密薬を渡した

「これは、ペロッ・・・、美味しいですねこれ」

 エルフの女性と男性、か?

 今薬を嘗めた女性はすらっとした美人で、胸が辛うじて確認できることから女性と分かった

 二人共髪が長い

 男性?の方も女性のような見た目だけど、女性の方より声が低いし、胸がない

 まぁハスキーな声の女性と言われたらそうなのかもしれない

「失礼しましたカズマ様。その招待状を置いたのは私達です。私はフェナン、こっちはイリュゥ。エルフの里からあなたを監視するために来た者です」

「監視?」

「はい、森や私達に害がないか、赤の山に行かないかを監視させて頂いておりました」

「はぁ・・・」

「その結果、あなたを我らが里へとご招待させていただきたく、お手紙を置かせていただいた次第です」

 監視、か

 まあ得体のしれない男が突然森に来て、森を切り開いて暮らし始めたら警戒もするだろう

 だが俺がこの森で暮らし始めて一年ほど経っている

 その間ずっと監視していたのだろうか?

「あの、俺はずっとあなたたちに監視されていたんですか?」

「はい! あ、安心してください。家の中までは監視していないので大丈夫です」

 何が大丈夫なのか分からないけど、プライベートには配慮しててくれたってことか

「それで、なんで俺みたいなただの人間を、あなた達の里へ?」

「あなたもここで暮らしてから一年が経ちました。森はあなたを受け入れたのです。そのため我らエルフにも受け入れられたのです。どうか、私達の里で歓迎会をさせてくれないでしょうか?」

 男性エルフ?の方、イリュゥが説明してくれた

「俺が森に、認められた? じゃあここから追い出すって話じゃないってことですか?」

「ええ、むしろ住んでいてもらいたいくらいです」

 なにはともあれ歓迎はしてくれるみたいだ

「では私達が案内しますので、そちらの小鬼ちゃんと一緒についてきてください」

「ファンファンだぞ!」

「ファンファンちゃんね。一緒に来てくれる?」

「うむ!」

 ファンファンの可愛さはエルフにも通じるのか

 こいつもしかして、魅了の魔眼でも持ってるのか?

 うーん、俺の鑑定スキルじゃ分からん

「それでは行きましょう!」

 フェナンが先頭に立って、俺たちはエルフの里目指して歩きだした


 赤の山麓にあるエルフの里はここから結構歩くらしい

 馬車でも二日はかかる距離らしいから、歩きだと四日以上かかると見た方がいいかな

 なにせ道なき道を行くんだから

 念のために食料も一週間分持ってきてるから、まあ大丈夫だろう

 少し歩くと、もう道がない

 茂みをがさがさと歩くしかなかった

「エ、エルフは、こんな歩きにくい道も歩くのかな?」

「いえ、私達だけなら木の上を飛んでいけるんですけど」

「飛ぶ? 魔法で?」

「いえ、木の枝をジャンプして移って移動するって感じですね」

 ああ、それじゃあこういった道を歩くしかなくなるのか

 俺じゃあそんな移動方法はできないし

 だが

「あの、よかったらこれを」

 俺は空間収納から薬を取りだした

「これは?」

「身体強化薬です。これなら木や葉っぱで肌が傷つくことはありません」

「・・・。ありがとうございます! ありがたく使わせてもらいますね。ほらイリュゥさんも」

「あ、ありがとうございます」

 二人は薬を何の躊躇もなく飲み干した

 少しは警戒して欲しいものだけど、それだけ俺を信頼してくれてるってことなのかな?


 すごい、この方の薬は、規格外だわ

 あまりにも効果が強すぎる

 下手をすれば竜の牙すら防ぐほどの防御効果がある

 イリュゥさんも気づいたみたい

 やっぱりこの方のお力を借りれば、私達の里は救われる

 イリュゥさんと顔を見合わせてうなづきあう

 薬を飲んで分かったわ

 この薬、防御力強化だけじゃなくて、身体能力まで底上げしてくれて・・・

 なにこれ!

 私は思わず自分のステータスを確認した

「これは・・・」

「どうしたフェナン」

 私は声を小さくしてイリュゥさんに話す

「この薬の効果、自分を鑑定して見てください」

「ああ・・・」

 イリュゥさんは自分を視てみる

 そして目を見開いた

「フェナン、これは・・・」

「ええ、私達のステータスが上昇しているのは分かりますよね? しかもその上昇効果が永続的になってるんです」

「まさか、そんなのエルフの薬師でも無理だぞ」

「やはり、里を救えるのはカズマ様だけです。急ぎましょう」

「ああ」

 話を終えて、私達はエルフの里に向かって少し歩みを速めて進み始めた

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