ラナがフォウさんに連れられて行ってしまってから数日後
妹として可愛がっていたためか、ファンファンに元気がない
いつでも会えることを伝えたが、やはりべっとりと付いていたためショックは大きいのだろう
ファンファンをなだめていると、扉がコンコンとたたかれた
騎士団の誰かか、フォウさんかもしれないと思い、ゆっくりと扉を開けるが、そこには誰もいなかった
ただ、扉の前に一通の手紙が落ちていた
「手紙? 誰からだろう?」
宛名はなく、しっかりと封がされている
俺はその手紙を開封して中を見た
「招待状?」
最初に飛び込んだ文字は、大きく招待状と書かれていて、その下には俺を招待したい旨がつらつらと書かれていた
それにところどころにある、俺を森の賢者として称えているような文面
一体どう勘違いしているのかは分からないが、どうやら自分達の国?里?に来て欲しいとのこと
差出人は、エルフ
この森、禁則地である赤の森そばのエルフの集落からだった
「あの男で間違いないのか?」
「ええ、彼がこの森にすみ着いてからずっと監視していましたが、あの方の力は今私達の迎えている危機を必ず救ってくれるものです。是が非でも私達と友好関係を築いてもらいたいものです」
「それほどなのか」
カズマが住む家のほど近い木の上で、二人のエルフがカズマを監視している
手紙を届けたのも彼女らだ
エルフたちはこの森だけではなく、世界各地に点在している
その中でも彼らはかつて勇者ランスの仲間だったエルフの子孫で、かつて魔王やダークドラゴンを討った赤の山を監視する役目を担っている
そんな彼らが監視している赤の山では現在とある問題が起きていた
エルフの長老たちはそれを魔王、魔族の復活とみている
そのため、エルフたちでも得体のしれない力を持ったカズマに協力を求めたのだった
ちなみに彼らはずっとカズマを監視しているが、ルカは彼らが監視していることをとうに気づいている
そのためルカの正体までは気づいていないのだった
「手紙は読んでくれたみたいです」
「ああ、果たして来てくれるかどうか」
二人のエルフはカズマが答えてくれるかを心配しているようだ
「今声を届けますね」
女性エルフが風魔法で家の中の声を拾う
「エルフの里、か。あるのは聞いていたけど今まで何の接点もないし、なんで招待されたんだ?」
「エルフは魔法に長けています。恐らくですが、監視されていたのでしょう」
「うわぁ、そっかぁ、それって犯罪じゃ?」
「? 彼らは警戒心が強いので、監視されるのもうなづけますが・・・。旦那様が嫌と言うならば、私が話を付けてきましょうか?」
「いやいい、行ってみるよ、せっかくだしな」
「分かりました。では私も同行いたします」
「オレも行くぞ!」
そこまで聞いて二人のエルフは顔を見合わせてニヤッと笑った
なんじゃあのエルフども、ようやく行動したのか
敵意もなかったし、むしろ見守っておったから放っておいたが、あ奴らもカズマのすごさを理解できたのだろうな
まぁエルフは身勝手な理由では動かん
カズマに危害が加わることはないだろうが、一つの場所に加担させることはできんな
わしがしっかりと監視するとしよう
そういえばかつて勇者ランスの仲間にもエルフがおったな
名前は、どんなじゃったかな?
勇者に献身的に尽くしておったと記憶している
わしが消滅しかけたのも、あやつがわしの力を命と引き換えに封じたからじゃ
あれはわしの知らん魔法
魔導の枠から外れた桁違いの魔法じゃった
そのエルフと勇者ランスの子の子孫
それが赤の森を監視するエルフたちじゃったかな
かなり勇者の血は薄くなっておるが、未だに力は絶大じゃ。普通のエルフとは違うじゃろう
俺は手紙、招待状を懐にしまい、さっそく準備を始めた
正直に言うと、エルフに会うのはかなりワクワクしている
一応街では見たことはあるんだが、鬼人同様にこの国では少ない人種だ
レナ宛てに一筆書いて扉に貼っておく
これで準備はできた
空間収納があるからあっという間だな
家のことはアネモネに任せることにした
手紙を読むにこちらに敵意はなく、むしろ好意的だ
これならファンファンに護衛をしてもらえそうだしな
「旦那様、本当に大丈夫ですか?」
「ああ、俺たちのいない間家を守っててくれ」
「分かりました! このアネモネ、せいいっぱい守らせていただきます!」
「うむ、頼んだぞ!」
フンスと鼻息をならして偉そうにする可愛いうちの娘
さて、森の奥にはたくさんの魔物も徘徊している
それこそファンファンでも敵わないような魔物が
だがそこで登場するのが、隠密薬~(某青猫ロボットのように)
二人でこれを飲み、気配を遮断して安全に進もうってことだ
「おお、美味しいこれ!」
「だろう? リンゴ味にしてみた」
ファンファンはリンゴのジュースが好きなため、この薬はかなり気に入ったみたいだ
「じゃあ行こうか」
「おう!」
俺はファンファンと手をつなぎ、ピクニック気分で歩きだした
この後まさかあそこまで苦労し、エルフの集落に来たことを後悔するとも知らずに