目が覚めると、周りからは称賛の声の嵐だった
俺は大したことはしていないからなんだか気恥ずかしい
強大な敵への備えとしては足りないくらいだが、それでもこれほどの数をこの短時間で作れるなんて自分でも思わなかった
どうやら俺の生活スキルはなかなかに有用みたいだな
まあ自慢じゃないけどレベル10はあまりいないからな
だいたいが一つのことに特化するために一つのスキルのみを上げて行く人が多い中、俺は全ての生活スキルを寝る間も惜しんで上げ続けた
生活スキルの数はそう多くないとはいえ、全てがレベル10になるまで三年もかかってしまった
いやそれでも早い方らしいけど
まあ特定の種族にしか伝わっていない生活スキルもあるから全部ではないか
俺は作った武具とポーションをギルドマスターのフォウさんに渡した
これから戦いに出る全ての人達に均等に分けられることだろう
そうこうしているうちに街近くの丘にオークの大群が見えたらしい
報告が上がり、フォウさん含め、冒険者や騎士団、ファンファンとアネモネも戦闘に加わるため峠方向の東門へと走って行ってしまった
ラナは俺の護衛として残ってくれている
この子は恐らく俺より強いが、まだ幼く幼児といってもいい
そのため安全なこのギルドに俺と留守番ってわけだ
戦いが終わればフォウさんにこの子のことをどうすればいいか聞いてみるとしよう
「ラナも戦えるよ! ファンファンお姉ちゃんの役にたつよ!」
「ラナはオレの夫を守らなきゃいけないぞ。お前にしか頼めないから頼んだ!」
「わかった!」
ファンファンにそう言われ、大人しく残ってくれたラナ
彼女は見守っているつもりなのか、俺に尻尾を振りながらキリッとした表情でこっちを見ている
俺の役目は終わったが、手持ち無沙汰だ
オークには勝てない俺は、必ず足手まといになる
ここで大人しく待つことにしよう
ファンファンちゃんにアネモネと言ったか? この二人がいれば心強い
私はキール副団長とハール団長、多くの騎士たちに冒険者と共に戦場へと向かう
心強い仲間たちが私にはいる
「全員カズマさんから提供された武器は持ったな? では騎士団は右から、冒険者の方は左から頼む! フォウさん、冒険者の方の指揮はお願いします」
「ああ、任せておけ!」
それぞれの組織のリーダーのもと、峠に向かって進軍を始める
敵はオーク特殊個体の率いる大群
この数のオークとの戦闘となると、勝てるかどうかも怪しいがやるしかない
私はカズマ殿が作ってくれた刀に祈りを込めて、ハール団長と共に走り出した
ふん、人間どももそう簡単に支配されるわけではないことは理解していたが、中々に手ごわそうなのもちらほらいるようだな
だが私のこのスキルがあれば問題ない
他の街を攻めさせているオークの同胞たちにもこのスキルで強化を付与してある
そしてその強化の数に応じて私も強化される
今の私なら一人でも国の一つや二つ落とせるに違いな・・・
な、なんだ? 急に他の街のオークの数が
「なぜだ! 一体何がおこっている!」
「どうされましたセイヴァー様」
「いやなんでもない。私のことはいいから集中してくれ」
「はい!」
強化していたオークがどんどん減っている
マルデンのオークが、全滅だと!?
何が起こっているんだ一体
「来ましたセイヴァー様! 戦闘開始です!」
「ああ、全軍迎撃態勢をとれ! お前たちには私がついている! 恐れるな、存分に戦って奪え!」
オオオオオオオ!と声が上がる
士気は十分に高まっているな
トラブルはあったがこの街をおとすなら容易い
人間どもとの戦闘が始まった
勝てる、負けるはずがない
心の中で笑っていると、またも異変が私を襲う
他の街のオークたちがどんどん消えていっているのだ
私が強化したオークは私と繋がっている
そのため生き死にが明確に分かるのだ
それが、彼らが死んでいることを伝えている
「く、何があったのか分からんが、計画に変更はない。この街を滅ぼしてこの国の全てをいただく。女どもは繁殖用に、男どもはミンティ様への手土産に」
やがて他の街に行った全てのオークとのリンクがきれた
全滅したとみて間違いないだろう
最後に視覚をリンクしてみたのは、真っ黒で巨大で、あまりにも大きな力の持ち主の姿だった
あれは関わってはいけない部類のモノだが、幸いにも最後のオークをを喰らって満足したのか、その気配は消えた
恐らくあれは竜種に違いない
ハハハ、ここまで力を手に入れてもまだ竜種には追いつかぬか
全てのオークを強化し、最大強化された私でも勝てぬ相手
手を出すべきではない相手なのは心得ている
ミンティ様もそうだ
あの方には天地がひっくり返ろうとも勝てるヴィジョンが見えないのだからな
いや今はそんなことを考えている場合ではない
ここにいるオークたちで国落としだ
敵は強く苦戦はしているが、やはり数に差があるためこちらが押し始めている
これなら問題なく勝てる
私は最初にオークを一体縦に両断する
それに続いてファンファンちゃんが大剣を振りまして数体斬り飛ばした
「鬼剣術、天壊(てんかい)!」
私も負けてられないと目の前に迫るオークを、火の一閃からさらに強化され、洗練された炎の一閃で焼き切る
「剣術、雷環(ライカン)!」
ハール団長の攻撃もさえわたっていて、オークたちは少しずつだけど減って行ってる
しかしそこに、真っ黒なオーク数体が現れて一気に形勢が逆転した