転移の魔方陣
それは街どうしを繋ぐ、最大十人まで転移させる魔方陣
それを使って一瞬で街間を移動した私達
なんとか間に合ったみたい
すでに戦いは始まっていたけど、攫われた人たちもまだオーク陣営に囚われてるだけ、今なら助けれる
門の外に出てオークたちとの戦いを始め、押し返し始めた
と思った矢先に、真っ白なオークが私の前に立った
白いオークは私に手斧を向ける
「君結構強そうだね。僕と打ち合おうよ」
「遊び感覚で戦争をするんですね? あなた達オークにもたくさんの犠牲が出るって言うのに?」
「何怒ってんの? 弱肉強食って知ってる? 弱いやつは淘汰されて当然なんだよ。だから当然、僕だって負けたら死ぬさ。それがこの世界の摂理。単純明快」
「遊びで命のやり取りをするような奴に! 人々の平和を崩させません!」
「だったら僕を止めるしかない。さぁ、やろうよ」
サバイバーは隙だらけでまるで戦う体制にない
私は剣を構える
「エアブースト!」
間合いを詰めて
「剣術、刃葉斬り」
サバイバーの腹部を斬った
「あ、らら」
サバイバーは真っ二つになって倒れる
「弱い・・・?」
恐ろしいくらいに弱かった
恐らくこいつがリーダーだけど、リーダーがやられたって言うのにオークたちは引かない
顛末を見守っているようにも見える
「あーいたたた、なんとなく受けてみたけど、まさか一撃で両断されるなんて思わなかったなぁ」
「え!?」
サバイバーの真っ二つになった体が、傷口からうねうねと蛇のようなものが出て来て繋ぎ合わさって、立ち上がった
「ん、よし。僕これでも頭潰されても再生できるんだよね。一応敵からの最初の一撃は記念にもらうようにしてんの」
そしてサバイバーは私でも追えないほどの動きで私の後ろに回って、斧で背中を斬りつけて来た
「ぐっ」
「あれ、ごめん、自分の勘違いだったかも。もっと速いと思ってたから、これくらい避けれると思って本気で斬っちゃった」
背中が痛い
口からドボドボと血が溢れて来る
これ、まずいかも
肺をやられてる
それに、背骨も断たれた、かも
下半身の感覚が全くない
「みっともなく無様に、お漏らしまでして、アハ、まぁこっちにもヒーラーがいるから安心してよ。女は殺さないようになってるんだ。そのまま連れて行くね。汚いけどさ」
く、私は、ここまでなのかも
嘘だろう、あのレナが、いともたやすく・・・
レナは明らかに俺よりも実力があった
サバイバーとかいうオークの動き、俺には何が起こったのかすら分からなかった
気づいたらレナが倒れていたんだ
あれは、俺では勝てない
生存をあきらめかけていた時、伝令役の冒険者の一人が俺のそばに走って来た
「報告します! オークたちの頭上に、ダークドラゴンと思われる竜が、現れました!」
オークの群れの上に、さらに竜、だと?
しかも、勇者に打ち倒されたはずのダークドラゴンが・・・
神はなぜここまで俺たちに試練を与えるんだ
「もはや絶望的っす。今回ばかりは、生き残れそうにないっすね」
あきらめるなと言いたいところだが、俺も気持ちは同じだった
「それで、竜はどう動いている?」
「そ、それが、こっちには目もくれずに、ひたすらオークを襲っています。まるで俺たちを助けるかのように」
「なんだって!?」
俺は城門上の見張り塔に上がると、その目で竜の動きを確認した
オークの悲鳴が上がる中、竜は一瞬で殲滅できるブレスを吐くことなく、爪や牙でオークを屠っていた
これは本当に、俺たちを守っているようじゃないか
グフハハハ
人間など取るに足りないなぁ本当に
このオークサバイバー様にかかれば街の一つや二つ蹂躙するのはたやすいよね
まったく、セイヴァー様もレイダーやプレデターなどに頼まず、僕一人に任せてくれればよかったんだ
順調にメス共も捕獲できている
グハハハ、今夜が楽しみだ
実力者のオスを捕まえるのは結構面倒だけど、確か死体でもいいってミンティ様は行ってたっけ?
あの方死霊術師のスキルもあるのかな?
まあ僕には関係ないか。僕は今楽しければそれでいい
生きてるってことを実感できればそれでいい
んで、生きてるを奪うって、本当に、本当に、楽しいよね
死ぬんだってわかった時のあの絶望顔は、僕の記憶にしっかりと刻み込むんだ
生き抜くって素晴らしい。死なせるって、楽しい
アハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
オークサバイバーが笑う中、頭上から彼らを見つめ、狙う者がいた
ふむ、あれは特殊個体か?
オークサバイバーか
なんじゃ、ただ再生能力があるだけの小物ではないか
わしの力を取り戻す糧にもならんわい
ともかくじゃ、カズマのためにも、こやつらは殲滅しておこうかのぉ
レナがやられておるようじゃが、後でわしの血でもぶっかけておけば問題ないじゃろう
わしの血には強力な治癒効果があるからな
わしはオークサバイバーを掴むと、引き裂いて喰らった
何が起きたか分からぬ表情で、間抜けにもほどがある
そのまま周りにいたオーク共を引き裂き、持ち上げて落とし、数分ほどで全てのオークを殺しつくした
ブレスが出せればもっと楽なんじゃが、掴まってるあれらを殺せば、カズマも悲しむ
それはいただけん
ここはもういいじゃろう
次じゃ次