副都では冒険者と騎士が協力して避難誘導と戦闘準備を始めていた
俺は双剣を手に、すでに先兵として門に入ろうとしているオークを切り刻んだ
そのまま向かってくる先兵をさらに数匹切り刻む
「シンク! 待たせた!」
その声に俺は振り向いた
立っていたのは街で酒場を開いている元同じパーティーだった魔導士の女性、エラだ
「よく来てくれた! 来ないんじゃないかって思ってたんだが」
「あほか! 国のピンチだろうが! そんなときに飲み呆けてるほどなまけちゃいないよ!」
「シンク! ここは任せろ!」
そしてエラの横にいる男性
彼もまた元パーティーメンバーのジェラス
彼はタンクで、重鎧を着て大盾を持っている
二人は夫婦で、二人で酒場を切り盛りしていた
「ジュラス! 懐かしいな。これで白銀の雲再結成ってわけだな」
俺たちは昔のように協力し、オークたちを倒していった
何か忘れている気がするが、気のせいだろう
「遅くなったっす! さぁ白銀の雲の力見せてやりましょうや!」
忘れてた。ビーンはトラップマスターで、その場で罠を作り出して展開し、敵の動きを妨害する戦いを得意としている
「クールハント!」
ビーンが魔力で出来た網を空中に放ると、それはふわりと動き、オークたちに覆いかぶさった
「エアフレア!」
そこにエラの魔法が直撃する
風魔法と火魔法など、属性を組み合わせる上級魔法は彼女の得意とするところだ
順調だ。この調子なら俺たちでも、あそこでニタニタ笑いながら余裕ぶっているオークの特殊個体すら倒せるかもしれない
そう思った矢先、盾となっていてくれたジュラスが吹き飛んできて、城壁にたたきつけられた
「ジュラス!」
エラがジュラスの元へ向かおうとしたところ、まるで猿魔物のように素早い動きのオークが彼女を攫ってオークの群れの中へ消えてしまった
「エラ!」
追うにもオークが多すぎて向かえない
ここで戦っている他の冒険者や騎士も、女性は攫われ、男性は戦闘不能にされるか殺害されていた
「態勢を立て直す! 一旦引くぞ!」
「で、でもエラさんが!」
「死ぬと決まったわけじゃない! オークは女性を巣まで連れ帰って繁殖のために監禁するはずだ。態勢を建て直せば助ける道筋も見える!」
悔しそうなビーンと共に気絶しているジュラスを運び、撤退を命令して城門をしめた
このままではじり貧で、いずれ門は突破されて街を蹂躙されるだろう
幸いなことにすでに民衆の避難は終わり、彼らは街の外へと逃げおおせているはずだ
それだけが、まだ救いだろう
民がいれば必ず国は立て直せる
この街に残るのは冒険者と、騎士や街の領主の私兵たち
死ぬ覚悟はできている
その時俺たちの前に伝令が走って来た
「王都の騎士団からの支援部隊が到着しました!」
「数は!?」
「およそ10名ですが、中にあのジャイアントキリングのレナさんがいます!」
「おお、報告にあったレナ殿か! それは心強い」
ゴブリン襲撃の際の立役者である三人のことは聞いている
ジャイアントキリングのレナ、激流槍のフィル、大魔術姫ミリア
まだ若い三人だが、その功績は国中に響いていて、新たなる英雄の誕生とも言われている
これは心強い援軍だ
「王都騎士団のレナです! よろしくお願いします!」
思ったよりも若い少女だった
だが、見たら分かる
努力で気づきあげられたそのオーラ
歴戦を思わせる雰囲気
彼女は、本物の実力者だ
「レナ殿、助かります。現在オーク共は門周辺に集結。すでに門を突破しようと攻撃を仕掛けられています。こちらも騎士団と徒党を組んで対応に当たっています
「私もすぐに合流します。西門ですよね」
俺はまだ無事なビーンと共にレナ達を西門へ案内し、門を開く
オークたちは突如門が開かれたことで多少驚いていたが、そこに俺たちが雪崩出てきたため、さらに居を突かれて反応が一瞬遅れていた
「エラを返してもらうぞ!」
第二戦が始まる
レナは剣を抜き、黒いオークを一刀両断に切り伏せた
「なんと、あのオークを一撃で」
ランクの高い冒険者や、この街の騎士でも数人がかりで倒せなかった相手
やはりレナは、英雄クラスなのかもしれない
さすが王都の騎士団
レナ以外の騎士たちもかなりの実力者で、たった十人の援軍にもかかわらずオークたちを少しずつ押していた
しかし、そこに真っ白なオークが登場したことで形成がまた逆転した
「へぇ、人間族でもやるのがいるんだね。この僕、オークサバイバーの相手になるかな?」
その白いオークは流ちょうにヒト族の言語を話した