急にギルマスから呼び出されるから何事かと思ったけど、カズマさんを紹介して欲しいって話だった
隠れ住んでる彼をあまり他の人に知られたくなかったけど、フォウさんなら大丈夫
秘密は絶対に守ってくれる人だもの
そんな彼女が昨日出会ったビーンさんってギルド職員さんにも紹介したいって言ってる
彼女が太鼓判を押すなら大丈夫だろうけど、あまりたくさんの人に彼を知られたくない
平穏が壊れちゃうかもだし、彼自身もいやかもしれないもの
でも、実際行ってみると、彼はとても嬉しそうだったわ
なによりファンファンちゃんを褒められたのが嬉しかったみたい
本当のお父さんみたい
まあでもカズマさんの平穏が壊されなくてよかった
なにせファンファンちゃんは元々ゴブリンだもん
もしあの鮮血のリップさんにそれが分かってしまったら、どうなってたか分からない
ばれちゃったらどうしようって内心ヒヤヒヤしたわ
カズマさんにギルマスたちを紹介してから二日後
騎士団にオークの討伐命令が出た
街のすぐ近くで目撃され、オークヒーローみたいな黒い体色だったから、特殊個体みたい
現在私含め騎士団はかなり強くなってる
これもカズマさんがポーションや武器を騎士団にも提供してくれたことが大きい
オークヒーローなら今数人がかりだろうけど、問題なく倒せるくらいにはなったかな
「特殊個体のオークが確認されたのはエレス村への街道途中だ。襲ってくることはなかったそうだが、街道にまで出てきているのは危険だ。目撃されたのは1体だけだが、念のため10人から15人の隊で編成し、確実に討伐するぞ」
そう言って部隊の編成をする団長
リーダーはキール副団長で、私とフィルも組み込まれた
ミリアは魔法使いや魔術師が所属する魔術師協会に行ってて不在
魔術師協会は副都にあるのよね
「よし、30分後南門に集合。その後速やかに目的地へ行き、オークを討伐してくれ」
団長の話が終わって解散
私達は準備を整えると南門へ向かった
「またオークですか。オークヒーローはやはりまだいるようですね。ですが、今の私達なら十分対処できます。頑張りましょう」
「うん!」
フィルと南門へ向かって、他の団員も集まったところで出立
歩くこと30分
黒いオークが目撃された場所まで来たけど平和
魔物の気配はなくて、その痕跡もなかった
でも行商人さんからの報告だから信ぴょう性は高い
二人一組になってとりあえず周りで痕跡を探すことになった
「発見から時間が経っています。もういないかもしれませんね」
「もしオークヒーローだったら、またたくさんのオークが出てくるのかな?」
「可能性はありますね。なにせ率いることに特化した魔物なのですから」
このところのオークの出現率はかなり異常で、騎士団も冒険者もしょっちゅう駆り出されてる
まあオーク肉で街は潤ってるけど、たまに上位個体のオークメイジやオークウォーリアーなんかも出るみたいで、冒険者に犠牲も出てる
速くこの異常事態が終結すればいいんだけどなぁ
しばらく周囲の調査をしてたけど、私達は痕跡を見つけることはできなかった
キール副団長に報告をしていると、戻って来た騎士団員の先輩、アズモさんが何かを発見して戻って来た
アズモさんは元冒険者で、そこから騎士になった女性
年齢は30代前半で、得意な戦闘方法は魔法
薄い赤髪が特徴的で、三白眼だからか目を見開くと少し怖いんだけど、性格は穏やかで優しい人
そんな彼女が持って来たもの、それは、竜の鱗だった
真っ黒な鱗で、それは私が前に発見したものと同じもの
これって、竜はまだこの辺りにいるってこと?
「オークの痕跡を探していたはずがとんでもないものを見つけたな。アズモ、どのあたりだった?」
「こっちです」
街道をそれて、私よりも背の高い草が生えた藪を進んでいくと、突然藪が消ええている広い場所についた
そこは焼けこげていた、その中心には目撃されていたと思われるオークの死体が一つ、ポツンと転がっていた
「なるほど、竜にやられたようだが、死体が残っているのは珍しいな。大抵は食われるはずなんだが・・・。大方腹は満たされていたが、縄張りに入ったために殺されたんだろう。だとしたら俺たちがここにいるのもまずいかもしれないな。すぐ戻るぞ」
未だ姿は見ていないけど、この辺りを縄張りにしているんだとしたらオークよりも危険ね
今のメンバーだと竜の討伐は厳しい
少なくとも騎士団総動員と、冒険者達の協力がないと
街道まで戻って、竜の痕跡があったと報告するために私達は王都へと戻った
姿が見えない竜
鱗やブレスの後があることからいるのは確実
少なくとも正体くらいは知りたいわね