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第33話

 急にギルマスから呼び出されるから何事かと思ったけど、カズマさんを紹介して欲しいって話だった

 隠れ住んでる彼をあまり他の人に知られたくなかったけど、フォウさんなら大丈夫

 秘密は絶対に守ってくれる人だもの

 そんな彼女が昨日出会ったビーンさんってギルド職員さんにも紹介したいって言ってる

 彼女が太鼓判を押すなら大丈夫だろうけど、あまりたくさんの人に彼を知られたくない

 平穏が壊れちゃうかもだし、彼自身もいやかもしれないもの

 でも、実際行ってみると、彼はとても嬉しそうだったわ

 なによりファンファンちゃんを褒められたのが嬉しかったみたい

 本当のお父さんみたい

 まあでもカズマさんの平穏が壊されなくてよかった

 なにせファンファンちゃんは元々ゴブリンだもん

 もしあの鮮血のリップさんにそれが分かってしまったら、どうなってたか分からない

 ばれちゃったらどうしようって内心ヒヤヒヤしたわ


 カズマさんにギルマスたちを紹介してから二日後

 騎士団にオークの討伐命令が出た

 街のすぐ近くで目撃され、オークヒーローみたいな黒い体色だったから、特殊個体みたい

 現在私含め騎士団はかなり強くなってる

 これもカズマさんがポーションや武器を騎士団にも提供してくれたことが大きい

 オークヒーローなら今数人がかりだろうけど、問題なく倒せるくらいにはなったかな

「特殊個体のオークが確認されたのはエレス村への街道途中だ。襲ってくることはなかったそうだが、街道にまで出てきているのは危険だ。目撃されたのは1体だけだが、念のため10人から15人の隊で編成し、確実に討伐するぞ」

 そう言って部隊の編成をする団長

 リーダーはキール副団長で、私とフィルも組み込まれた

 ミリアは魔法使いや魔術師が所属する魔術師協会に行ってて不在

 魔術師協会は副都にあるのよね

「よし、30分後南門に集合。その後速やかに目的地へ行き、オークを討伐してくれ」

 団長の話が終わって解散

 私達は準備を整えると南門へ向かった

「またオークですか。オークヒーローはやはりまだいるようですね。ですが、今の私達なら十分対処できます。頑張りましょう」

「うん!」

 フィルと南門へ向かって、他の団員も集まったところで出立


 歩くこと30分

 黒いオークが目撃された場所まで来たけど平和

 魔物の気配はなくて、その痕跡もなかった

 でも行商人さんからの報告だから信ぴょう性は高い

 二人一組になってとりあえず周りで痕跡を探すことになった

「発見から時間が経っています。もういないかもしれませんね」

「もしオークヒーローだったら、またたくさんのオークが出てくるのかな?」

「可能性はありますね。なにせ率いることに特化した魔物なのですから」

 このところのオークの出現率はかなり異常で、騎士団も冒険者もしょっちゅう駆り出されてる

 まあオーク肉で街は潤ってるけど、たまに上位個体のオークメイジやオークウォーリアーなんかも出るみたいで、冒険者に犠牲も出てる

 速くこの異常事態が終結すればいいんだけどなぁ


 しばらく周囲の調査をしてたけど、私達は痕跡を見つけることはできなかった

 キール副団長に報告をしていると、戻って来た騎士団員の先輩、アズモさんが何かを発見して戻って来た

 アズモさんは元冒険者で、そこから騎士になった女性

 年齢は30代前半で、得意な戦闘方法は魔法

 薄い赤髪が特徴的で、三白眼だからか目を見開くと少し怖いんだけど、性格は穏やかで優しい人

 そんな彼女が持って来たもの、それは、竜の鱗だった

 真っ黒な鱗で、それは私が前に発見したものと同じもの

 これって、竜はまだこの辺りにいるってこと?

「オークの痕跡を探していたはずがとんでもないものを見つけたな。アズモ、どのあたりだった?」

「こっちです」

 街道をそれて、私よりも背の高い草が生えた藪を進んでいくと、突然藪が消ええている広い場所についた

 そこは焼けこげていた、その中心には目撃されていたと思われるオークの死体が一つ、ポツンと転がっていた

「なるほど、竜にやられたようだが、死体が残っているのは珍しいな。大抵は食われるはずなんだが・・・。大方腹は満たされていたが、縄張りに入ったために殺されたんだろう。だとしたら俺たちがここにいるのもまずいかもしれないな。すぐ戻るぞ」

 未だ姿は見ていないけど、この辺りを縄張りにしているんだとしたらオークよりも危険ね

 今のメンバーだと竜の討伐は厳しい

 少なくとも騎士団総動員と、冒険者達の協力がないと

 街道まで戻って、竜の痕跡があったと報告するために私達は王都へと戻った

 姿が見えない竜

 鱗やブレスの後があることからいるのは確実

 少なくとも正体くらいは知りたいわね


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