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第31話

 翌朝、俺はリップと共にまたギルドに来た

 リップは教会の方に泊めてもらっているらしい

 まぁこいつはこれでも教会の地位的にはまぁまぁ上だからな

 詳しくは知らないが、枢機卿にも顔が利くらしい

「それで、会いに行きたいというのはどんな方なのでしょう?」

「俺も詳しくは知らんが、この街を救った立役者に強力な武器を提供したらしい。武器の性能も、俺が鑑定できないレベルだ。もう少しレベルが高ければ色々と分かることも多いんだが、俺はレベル5だからな、そこまでわからなかった」

「武器、ですか。興味はありませんが、魔物を倒すためには必要不可欠。その方もきっと魔物殲滅ののためにご尽力してくださっているのでしょう」

 リップはまたフフフと笑っている


 ギルドの待合室で待っていると、扉が叩かれてマスターのフォウさんが入って来た

「待たせてすまない」

 フォウさんの後ろにはレナさんが立っていた

「あれ? レナさん」

「彼女に案内を頼んだから、連れて行ってもらうといい」

「え、いいのですか?レナさん」

「はい、他言無用でお願いします。それと、絶対にあの場所で暴れないで下さいね」

「まぁ暴れるなんて野蛮なことしませんよ。魔物がいなければ」

「それです。殲滅のリップさんですよね? あそこでは家畜としてウシ型魔物が飼われているんです。あなたは以前村で飼われていたウシ型魔物を殲滅したことがありますよね」

「それは・・・」

 確かにあの時リップは自分を抑えれずにやってしまったが、あの時はその前に村を魔物が襲っていた

 それと戦った興奮のままだったため抑えられなかったのだろう

 賠償もすみ、謝罪も村人たちは受け入れてくれていた

 あの時のように魔物と戦わなければもう問題はないだろう

 彼女も最近は自分を抑える訓練をしているわけだし

「それについては問題ないよ。あの時から彼女もだいぶ落ち着いてきている。それにいざとなったら俺とフォウさんが抑えるさ」

「それなら・・・。それと、彼については絶対に口外しないで下さいね」

「ああ、約束しよう」


 レナに連れられ、フォウさん、俺、リップの3人で件の賢者の元へと向かった

 なるほど、魔の森か

 ここは名前のない森

 俺は魔物が強化されているところから魔の森と勝手に呼んでいるが、誰もこの森に名を付けない

 最奥にはかつて勇者ランスが伝説のダークドラゴンを討伐した赤の山があり、その手前に森エルフたちが住む隠れ里があるという

 エルフはここだけではなく様々な場所に住んでいるが、ここに住むエルフたちは大昔に勇者に赤の山を見張ってほしいと頼まれたと聞く

 ごくまれにそのエルフたちが街まで来ることもあるが、まぁ俺は見たことない

 フォウさんは会ったことがあるらしいが、あいさつ程度だったとか

「魔物の気配が、そこかしこでしています。フフフ、これは、殲滅、ですねぇ」

「馬鹿やめろ。大人しくしてろ」

 ペシンと頭を軽くたたいたら落ち着いたようだ

 確かに魔物の気配は多いが、今のところ襲ってくる気配がない

 それに、魔の森でも比較的弱い角兎や猪くらいだろう

 数は多いがこのメンツなら問題ないな

「遠いのか?」

「いえ、奥までは入りません。一応彼が切り開いた道もあるので、そんなに苦労せずつくと思いますよ」

 そうか、妙に歩きやすいと思ったら開拓されているようだ

 道がちゃんと整備されている

 これを一人でやってるんだとすると、相当な暇人か、凝り性なのだろうか

「ここ、元々獣道だったんですけど、私達が歩きやすいようにってカズマさんが。あ、カズマさんって言うのが彼の名前です」

「賢者カズマ・・・。聞いたことのない名前だが、まあ隠匿して研究している賢者もいるだろうから、聞いたこともないのもうなづける」

 暇人でも凝り性でもなく善意か

 相当な聖人なのかもしれないな


 森に入ってから20分ほどでその賢者カズマの住むという家についた

 自分で作ったのだろうが、かなりしっかりした家で、敷地内にかなり整備の行き届いた小屋や畑まである

 自給自足で生活しているんだろうな

 そして俺は畑の作物を見てなんとなく鑑定し、目が飛び出そうなほどに見開いてしまった

 俺でも聞いたことがあるほどの伝説上の作物ばかりだ

 それに柵に立てかけてあった農具が、幻想レベルなんだが・・・

 武器を作れるというから、鍛冶スキルは持っているのだろうが、幻想クラスを作れる鍛冶師だったか

 しかもその技術を農具に・・・

 おそらく鍬なんかはプリンをスプーンですくうかのように簡単に地面を穿つだろう

「もしもしカズマさん、少し紹介したい人を連れて来たので、会ってもらえませんか?」

 レナが家の扉を叩きながらそういうと中から返事が返って来た

「分かった。ちょっと待っててくれ」

 扉を開いて出てくるのは、10代後半くらいの男性だった

 思った以上に若い。若すぎる

 本当に賢者と呼ばれるほどの実力があるのだろうか?

 覇気も感じられないし、およそ強さやすごみというものがない

 だが彼が手に持っているおたま

 これまで幻想クラスだ

 何者なんだ彼は

 俺は彼を値踏みするかのように見回した

「立ち話もなんだから入ってくれ」

 彼は快く中へ俺たちを招き入れてくれた


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