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第29話

 驚いた

 本当に何がどう作用したらこうなるって言うんだ

 ファンファンのときだってしばらく思考停止していたが、この日俺は30分ほどフリーズしていたらしい

「おーい、おーい大丈夫かぁ?」

 ファンファンに呼ばれてハッとする

 彼女はどうやら俺がフリーズから回復するまで待っていてくれたらしい

「お目覚めですか主の旦那様」

「は? え? だ、誰ですか?」

 目の前にいる女性が誰なのかは分かっていたが、俺はそれを認めたくなくて思わず聞いてしまった

「いやですね旦那様。わたくしです。クイーンレッドホーンです」

「いやなんで人型になってるの」

「旦那様の下さった食物が体に適応したようです。そのおかげでこうして、主様と同じような体を手に入れることができました。そうですか、これが進化。素晴らしいです」

 なんでこうホイホイ進化するんだ

「進化したのは君だけ?」

「いえ、他のレッドホーンは人型にはならなかったものの、ブラッドホーンという上位種に進化いたしました」

 俺はとりあえず彼女の後について牛舎へ向かった

 そこには美しい赤毛の牛たちが大人しく草を食んでいた

「これは、なんてきれいなんだ。これが昨日来たレッドホーン達だなんて信じれないよ」

 昨日見た時点では毛並みは赤色がかった茶色で、汚れもひどかったんだが、今はつやのある真っ赤な毛並みと血の色のような角が特徴的な美しい牛たちになっていた

「角があるのがオスで、ないのがメスです。わたくしには角がありますが、ミノタウロス族という種族に進化したためだと思われます」

 確かに彼女のこめかみより少し上のあたりから、鋭く大きな角が生えていた

「ところで、君の名前は?」

「ありません。必要ありませんでしたので」

「じゃあ呼びやすいように名前を付けようか。そうだな、君は、アネモネだ」

「まぁ、素敵な名前ですね! どういう意味なのでしょう?」

「俺の故郷にある花の名前なんだ」

「花の・・・。素敵です旦那様! これからわたくし、家畜としてしっかりミルクの提供をいたしますね!」

「あいや、君を家畜にはさすがに、倫理的にというか・・・」

「でしたらわたくし、戦いが得意です! きっとお役に立てますよ旦那様」

 ずっと旦那様と言われているが、それはこの際どうでもいいか

 アネモネの背の高さは2メートル30センチくらいで、見上げるほどに大きい

 何もかも大きい

 真正面から見上げると顔が胸に隠れて見えなくなるほどに

 髪はウェーブがかった赤毛で、顔立ちはおっとり系の美人、お姉さんと言う言葉がふさわしい

 何故か白く、大きく胸元の開いたドレスのような服を着ていた

「うーん、そうだな、じゃあファンファンと一緒に狩り係をやってもらおうかな?」

「お任せください!」

 それから彼女のことについて色々と話を聞いておいた

 一緒に生活するうえで、食べ物の好みなんかも聞いておかないとな

「そうですねぇ、わたくしはお肉は食べれません。あの草をください! あれは非常に、いいものです!」

「分かった。君にはあれを加えたサラダを用意しよう」

 嬉しそうに微笑むアネモネ

 ドキッとするような可愛らしさだ

 でもなぁ、レナたちにどう説明しようか

 まさか二人目の亜人種が生まれるとは思わなかったし

 まあでも家族が増えるのはいいことだ

 彼女はファンファンにだいぶ懐いているし、仲良くやって行けるだろう


 3人が和気あいあいと話をしている中、わしはもうカズマの非常識な能力にあきらめにも似た感情を抱いておった

 カズマの作る作物や料理には任意の相手に特殊な永久的バフを与えることは分かっていたが、それが魔物にまで及び、進化を促すことはもう疑いようもない

 それにしてもあのミノタウロス族のメス。恐らく特殊個体じゃな

 通常ミノタウロス族は筋力に特化しとるんじゃが、あれはミノタウロスとは思えないほどの魔力を持っておる

 優しい魔力じゃった

 回復魔法を使わせれば超一流の回復術師になることじゃろう

 それとなくそっちへの成長を促せんものかのぉ

 戦いが得意と言っておったが、ミノタウロスだけあって筋力もすさまじい

 使うなら斧かメイスがいいじゃろうな

 確かカズマが作ったものがあったはずじゃ

 アネモネが使えるようにどうにか教えるかな

 いずれわしの部下の一人になるんじゃから、そのぐらいは手助けしてやろうぞ

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