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第28話

 王都についたんだが・・・

 復興も順調のようだな

「魔物、いませんねぇ」

「いやもういないって。てかいたら大事でしょ」

「残念、まだ残っているなら、私が殲滅しましたのに」

 またフフフと笑ってるが、シャレにならんくらいに怖いなこいつ

 Aランクだけあってそりゃ強いが、魔物相手となると暴走するからなぁ

 あとその笑顔怖いんだよ

「さて、私も何か手伝えないか聞いてきますね。そこの方―、何かお手伝いできることありませんか? 私回復魔法、得意なんですよ」

「おおそれは助かります。見たところアルビオナ教会のシスターさんとお見受けしますが、もしや副都からの支援でしょうか?」

「その通りです! さぁ怪我人の元へ案内お願いします!」

「あちょ、今日は復興支援じゃ・・・。ああもういいか。魔物さえいなきゃ優秀なんだ。ほっといても大丈夫か」

 俺は彼女とは別の方向、まずはギルドに行くことにした

 ここのギルドのマスター、苦手なんだよな。美人なんだが威圧感がすごい

 あれスキルの威圧じゃなくて、天然の威圧だからレジストもできないからなぁ

 ギルドに来るとすでに通信用の魔法で連絡が行っていたのか、すぐにマスターのフォウさんが面会に応じてくれた

「久しぶりだなビーン。少しやせたか? いや、太った?」

「どっちでもないですよ全く。俺の何を見てるんですか?」

「冗談だ。それで、最近力を付けて来た騎士団の若手三人についてだったか?」

「あ、シンクさんから聞いてたんすね」

「うむ、あの三人は確かに異常なほどの成長速度と言えるが、不断の努力も見ればそれも当然だろう。そもそも才能があるうえでのあの努力量だ。特にギルドの調査員が気にするような不審な点は・・・あ」

「なんすか!? あるんすね、何かが」

「いや不審ってほどじゃないんだが、一人、レナって子がとある人に会いに行くと、戦闘中にその誰かに会いに行ったんだが、そんなに経たずに武器を持って帰って来たんだ」

「武器ですか」

「ああ、レナはその剣を振ると、空間が斬れた」

「!・・・、聖剣や神剣クラスじゃないすか」

「ああ、しかもその剣には魔石らしきものが埋め込まれていた」

「魔石を武器に組み込む技術!? そんなもの実現できるはずが」

「いやただの飾りの可能性もある。そう考えるのは早計だぞ」

「た、確かに」

 魔石を組み込んだ武器など見たことはないが、確かに宝石を飾りにつけているものなら見たことはある

 だが、レナって子はそんな成金趣味を出すような少女ではないと思うんだよな

 実直で礼儀正しく、努力家で正義感に厚いと聞いた

 それに神剣クラスの力を出力する剣

 おそらく魔石の埋め込まれた剣で間違いはないだろう

 だが、そんな技術未だに実用化はされていない

 俺はエルフの国やドワーフの国にも行ったことがあるし、鍛冶場の見学もしている

 どの研究者や鍛冶師がその技術に撃ち込んでいようとも、大概が諦めさじを投げる

 会ってみる必要があるな、その謎の人物に

 だがそう簡単には会えないだろう

 レナと言う少女はその相手の名を明かさなかった

 隠れ住んでいるのか、あるいわ何か危険な作成法をしているため、国を追われたか

 それとも、賢者がたまたまこの辺りに腰を落ち着かせて、偶然その作成法を発見し、なんらかの原因で仲良くなったレナに、武器の性能を試してもらうために譲渡したか

 いやいくら何でもそんな偶然はないか

 ともかく一度会うか

「レナに会いたいんだろう? そう思ってもう呼んであるからもう少し待ってくれないか」

 さすがフォウさんだ

 若くして王都のギルマスになっただけのことはある

 大けがを負って引退はしたものの、戦いの実力だけではマスターになることはできない

 この気遣いが彼女の優秀さを語っているな


 しばらくすると、部屋の扉がノックされた

「レナか、入れ」

「はい失礼します」

 レナと言う少女は思った以上に少女だった

 15、いや16歳くらいか?

 こんな若い子がゴブリンタイタンを倒したなど信じれないな

 はつらつとした印象の顔立ちだが、腕を見ると発達した筋肉を持っているのが分かる

 なるほど、努力家というのは確かに間違いなさそうだ

 手のひらを見ると剣だこができ、血マメが潰れた痕もあった

 レナはなぜ呼ばれたのか分からず戸惑っているようだ

「楽にして。別に取って食おうってわけじゃない。俺はビーン。ギルド職員だ」

「初めまして。レナです」

 握手を交わし、席に腰を掛けるよう促して本題に入る

「じつは、君の持つその剣、それとゴブリンタイタンを倒したことについて聞きたいんだ。なんでも珍しいスキルが使える剣だとか」

「あ、えっと」

 くちどもったな。やはり何かある

「その、これは、えっと、この剣は、あ、あの、もらったんです! えっと、隠匿生活をしてる賢者さんで、私その人と仲が良くて」

「ほぉ、それなら俺も会ってみたいな。こんな素晴らしい剣を打てるんだ。是非とも仲良くなってみたい」

「えっとそれはその、あまり人と会うのが好きな人じゃなくて、私達はその人に助けられたから、お礼に魔石や食料を提供してるんです。それにこの剣は試作品だって言ってました。同じような剣をタイタンと戦った時に使ったんですが、まるで刃が絶ちませんでした。そのためこれはさらに改良が加えられてるそうです」

 レナは腰の剣を俺に見せてくれた

 一見するとただの鉄剣だが、やはり組み込まれているのは魔石だった

 しかも見たことのない魔物の魔石のようだ

 だめだ、俺の鑑定ではほとんど何もわからん

「ありがとう。そうか、その人は君たちのために武器を提供してくれて、結果この街は守られたんだな。わかった。副都のギルドにもそう報告しておくよ。もちろんその人のことは他言しないようギルマスには言っておく」

「ありがとうございますビーンさん!」

 ふむ、個人的にも興味がわいてきたな

 レナに案内が頼めればいいんだが・・・。リップを一人にしておくと怖いしなぁ

「レナくん、明日またギルドに来てもらえないかな? 信頼できる連れと共にその人に会いたいんだが」

「あ、それは、えっと、んと」

「そうか、だめか。困らせて悪かった。もう行っていいよ」

「は、はい!」

 レナはホッとした様子で部屋を出て行った

 さて、彼女は案内してくれないだろうな。なら他をあたる

 彼女は私達と言っていた。私達はその人に助けられたんだと

 つまり、騎士団の他のメンツにも知り合いがいるはずだ

 明日はリップも連れて騎士団の方へ行くか

 俺の考えを読み取ったのか、フォウさんと顔を見合わせうなづいた

「騎士団の方には私から言っておこう」

「助かりますよフォウさん」

「それで、信頼できる連れって言うのは?」

「リップです」

「はぁ・・・、あいつか」

 フォウさんもリップには苦汁をなめさせられてるからな。ため息もうなづける

 そして俺はギルドの用意してくれた宿に行き、そこでリップの帰りを待った


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