目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
第26話

 リップと共に副都パルメを出立したころ

 カズマ宅


 ファンファンに朝食を用意し、食べさせる

 今日は収穫した小麦を小麦粉にしたから、それでパンを作った

 これは料理スキルを取る時に習ったんだが、その先生にすじがいいと褒められたんだよな

 おかげでパンは店を開けるくらいに美味いと自負している

 今日作ったのは普通のパンだが、焼き立てだ

 これバターがあれば最高なんだが・・・。そう言えばレッドホーンの乳は絶品だって聞いたことがあるな

 家畜化できればいいんだが、まず生け捕りが無理だろうな

「はぁ・・・」

「どうした? おっぱいもむか?」

「いやなに言ってんだ。どこで覚えたそれ」

「昔仲間のゴブリンが奪って来た本に乗ってた」

「そんな言葉覚えちゃいけません!」

「そうか、分かった」

 まったく、頭がいい分余計なこと覚えるんだな

 他に変な知識覚えてないか心配になってくる

 それよりも、どうにか牛乳を手に入れる方法はないものか

「むしゃぁ、もぐむぐもぐむぐ何か困ってるか? ファンファンに任せろ!」

 パンを食べながらガッツポーズをとるファンファン

 可愛いな

「ああ、うん、できるかなぁ?」

「出来るぞ!」

「じゃあファンファンにお使いだ。レッドホーンを生け捕りにしてきてくれないか?」

「牛! 食べるのか!?」

「いや違う、牛乳が欲しいと思ってな」

「牛の乳! 知ってる! 人間が朝飲むやつ」

「お、よく知ってるな」

「俺、たくさん本読んだからな!」

 俺はレッドホーンの特徴と、メスを連れてきてほしいことを説明した

 ファンファンはかなり頭がいい

 子供だが飲み込みも早く、一度言えばすぐ覚える

 天才だうちの子

「よし分かった! 行ってくる!」

「ルカ、ついて行ってやってくれ。危なくなったら逃げるんだぞ」

「うん!」

「にゃ!」

 うぐぅ、うちの子たち可愛い! 親ばかのような情緒になりながら、ファンファンとルカを見送った

 ルカもいるし、あの様子なら大丈夫だろう

 まあついて行くんですがね


 ふぅ、またこやつのおもりか

 それにしても面白いガキじゃな

 ゴブリンから進化して小鬼族になったか

 見た目は黒い肌に耳が長く、小さな角が額から生えた少女

 しかしその筋力は人間族の比にならん

 百キロはありそうな大剣を軽々振る膂力は鬼人にも匹敵するじゃろう

 このまま順当に進化していけば、鬼人に、そしてその先もありうるかもしれんな

 わしはカズマの手によって進化させられたこのガキを見て将来を思い浮かべる

 わしのキュートボディにこやつもメロメロじゃからな、鬼人やその先の進化をすれば、わしが力を取り戻したときの配下にちょうどいい

 今はしっかりと信頼を得ておく必要があるのぉ

 将来への投資と言うやつじゃな

 あ、ちなみにカズマがよくわしらについてきているのは気づいておるぞ、当然

「んにゃ!」

 その時わしの鼻につんとした臭いが漂って来た

 この臭いはオークのものじゃな

「ん? どうしたルカ? おしっこか?」

「にゃ!」

「敵だな!」

「にゅあ!」

 もうすぐそこまで迫ってきている

 オークは鼻がいいため、先にこちらを発見していたのだろう

 小娘と猫だと思って完全に舐めているのだろうな

「おお、でっかいオークだぞ!」

 出てきたのはオークジェネラル

 ただのオークよりはまぁ強い個体ではあるが、わしらにかかれば赤子の手をひねるより容易い相手じゃな

「でっかいオーク! ファンファンたちのごっはーんになれ!」

 背中の大剣を抜くファンファン

 対してファンファンを見て舌なめずりをするオーク

 こやつ、わしの大事な部下をいやらしい目で見おって、極刑じゃな

 それにしても、なぜオークジェネラルが一体でこんなところにおるんじゃ?

 通常なら部下のオークを引き連れておるはずじゃが・・・

 しまった! 囲まれておったか

 こやつ、自身をおとりに部下達に囲ませておったのか

 ふむ、わしらの実力を見抜いておるのか

 こやつなかなかできるオークのようじゃな

 じゃあが、そんな小細工、ファンファンに通じるかな?

「大剣術、天葬」

 ほぉ、ファンファンのやつ、そこまで研鑽しておるのか

 天葬は周囲に剣撃を飛ばして斬る全方位型のスキル

 輪を描くような剣撃により、取り囲んでいたオークたちは首を断たれて倒れた

「ぐ、ぎぎぎ、ブモォオオオオ!!」

 部下達が一瞬でやられて取り乱しているオークジェネラル

「剣術、一刀覇塵」

 そこを縦に真っ二つにされ、オークジェネラルは絶命した

 単騎でここまで出来るとは、ますます成長が楽しみなガキじゃ

 というか、強すぎないかこやつ

 あ、そりゃそうじゃ、レナたちよりも毎日毎食カズマの料理を食っておるうえに、カズマに可愛がられておるんじゃ

 成長も早いんじゃろうて

 こりゃ次の進化もそう遠くない未来かもしれんな

 次は十中八九鬼人じゃが、その次はどうなるんじゃろうな

「よっし、行くぞルカ」

「にゃ!」

 カズマの作った袋にオークたちを収納すると、わしらはレッドホーンを探し、森の中をまた彷徨い始めた

 ちなみに今回はお弁当を持たせてあるらしいのぉ

 心なしかウキウキと足取りも弾んでおるわ


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?