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第23話

 オークたちが着実に戦争の準備をしている中、カズマ宅にて


 小鬼族となったファンファンは本当に娘のように俺のことを慕ってくれるようになった

 元々ゴブリン族のなかではかなりの変わり者だったらしく、強くなるために常に研鑽を怠らなかったらしい

 そのためゴブリンソードマスターにまでなれたんだと思う

 いやまあ薬の力ってのもちゃんとわかってるけど、絶対この努力も一因だと思うんだよなぁ

 それにしてもヒト族のスキルを使いこなせていたとは

 もしかしたらこうして小鬼族と言うヒト族に進化出来たのも、そう言ったことが関係しているのかもしれないな

 今現在ファンファンはムシャムシャと俺の作ったケーキをむさぼっている

 ふむ、まずは食べ方の練習をさせるかな

「ファンファン、それはな、これを使って食べるんだ」

「これ、武器か?」

「いやこれはフォークって言ってな。こうやってケーキを切って刺して、ほら」

「おお! これなら手が汚れない!」

 ファンファンはそういうと器用にフォークを扱い始めた

 この子、かなり頭がいいのかもしれない

 マナーなんかも一度教えればすぐマスターするしな

 俺は彼女が美味しそうにケーキを食べる様子を見て満足し、ルカの方を見た

 ルカはジーッとファンファンを見ている

 同居人として見極めているのかもしれない

 こいつが警戒心が強いおかげで強い魔物との遭遇も防げている

 ルカには本当に感謝しているよ

「ハムッ、ムシャムシャ。もうないのか?」

「あんまり食べると晩飯が食えなくなるぞ」

「む、それは駄目、俺晩飯の時間までに腹ごなししてくる。ルカ、行くぞ!」

「にゃ」

 あれ? 見極めてると思っていたが、もう仲良しなのか

 ならいい

 ファンファンの腹ごなしと言うのは獲物を狩りに行くことだ

 よく狩ってくるのは猪魔物だけど、今ではオークも狩ってくるようになった

 多分ルカが獲物を探し、ファンファンが戦って狩るんだろうな

 その光景を見てみたい気はするが、今は楽しみにしてるファンファンのために晩飯の準備をしないとな

 俺はタレに付け込んでいた猪肉に香辛料をまぶして刷り込み、それを焼いた

 いい香りだ

 焼いたら香辛料が大量についてる周りを少し落として中身を切り分けてさらに盛り付け、野菜で彩と栄養素を添える

 さらに根菜類とオークの骨からとった出汁でスープを作っているところでファンファンとルカが戻って来た

 意外と早かったが、ファンファンが血まみれで・・・

「だ、大丈夫かファンファン! 怪我したのか? 見せてみろ」

「お、大丈夫だカズマ。これ返り血。俺無傷!」

「ほっ、そうか、ならお風呂に入って来い。そしたら食事だ」

「わーーーい! お風呂入る。オレ風呂好きぃ」

 ゴブリンってのは風呂を嫌うはずだが、ファンファンはやはり他のゴブリンとは少し違っていたんだろうな

 元々水浴び好きだったらしいし、ボロキレを纏っていたものの、それも洗濯されていたな

 きっと清潔感あるゴブだったのだろう

 ファンファンが取って来た獲物を見に外に出ると、大きなオークが倒れていた 

 首を一撃か・・・

 凄い戦闘技術だなあの子は

 切り口もかなり綺麗だし、やはり剣を与えて正解だった

 彼女の背丈に合わせようとしたが、今まで使っていた大剣みたいな身の丈くらいの剣がいいと言ったので新しく打った

 以前まで持っていた剣はところどころ刃こぼれし、ひびも入っていたのでいつ壊れてもおかしくなかったからな

 いい機会だった

 新しく打った大剣にはもちろん魔石が組み込んである

 今回は珍しい魔石で、レッドホーンというウシ型の魔物の魔石

 この辺りじゃあまり見かけないけど、森のさらに奥に行けばいる

 ただこのレッドホーンは群れからはぐれたのか、なぜか俺の罠にかかってたんだよな

 すでに死んでたから楽に肉と魔石をゲットした

 この魔石の力は灼熱という魔力で作った炎を出すスキル

 近接戦闘以外にも飛び道具があった方がいいと思ってつけた

 もう安定して組み込めるようになってきてる気がするな

 念のため数十回撃ってみるという実験を繰り返したが、それでも壊れなかったことから大丈夫だろうとふんだ

 大剣を渡したときのファンファンの喜びようは、見ていて気持ちが良かったな

 それからは大剣をまるで幼少期に常に持つぬいぐるみのように、一緒に寝たり、丁寧に手入れしたり、話しかけたりしているようだ

「風呂入って来た! ごはんごはん!!」

「お、綺麗になったか?」

 振り向くと丸裸のファンファンがいた

「こらファンファン! いくらお腹空いてるからって服を着ずに出て来るなって!」

「あ、忘れてた。もう少し待て」

 トテトテと風呂場に戻って、用意していた服に着替えて来るファンファン

 うん、可愛いぞ。少女風の服を色々作ってみたが、俺からこんなものが生み出せるのかってくらいに可愛くできた

 特にフリルだ。見た目はゴシックロリータだが、ファンファンは目がぱっちりしていて髪もきれいなウェーブがかかっていて、この服が良く似合う

 なぜ服を作れるかっていうと、これも冒険者以外に手に職を付けるために身につけた技術だからだ

 いつかレナやミリアにも・・・。いやそれは流石に気持ち悪いか

 寸法だって測らないといけないしな

 可愛い服を着たファンファンは、綺麗なテーブルマナーでその服を汚すことなく晩飯を平らげた

 こうしてみると貴族のお嬢様みたいだ

 うちの子は可愛いぞ


 その日の夜、ファンファンが寝た頃に俺は鍛冶場へとやって来た

 俺はファンファンの狩ってきたオークの魔石を取り出し、ファンファンから預かった大剣を作業場の台に乗せる

 この大剣には魔石を埋め込むための穴を二つ開けておいた

 魔石を一つ埋め込むタイプの武器製造はもう安定していて、多少強い魔物の魔石でも組み込めるようになった

 俺も、少しずつだが進歩していってるんだな

 俺は手早くオークの魔石を加工し、大剣にはめ込む

 どれ、試運転だ

 一つ目の魔石の力はロックシュートという地面を穿って岩を浮かせ、それを飛ばすスキル

 二つ目の魔石の力はアースクエイクという地面を揺らして相手の体勢を崩すスキルだ

 この二つを組み込んだ大剣が、果たしてどう作用するのか

 レッドホーンの魔石を外してその二つを組み込む

 俺はドキドキしつつも、楽しくもあり、裏の試し打ち場からさらに森奥にある広場へと歩き出した

「んな!」

 いつの間にかルカが起きてついてきていた

「お、ルカも来るか? じゃあ警戒よろしくな」

「にゃ!」

 俺の安全のために来てくれたんだろう

 よくできた猫だよまったく


 広場に来ると、簡易的に組んだ的を立てて、それに大剣を向ける

 あ、どうして俺が100キロ近いこの大剣を持ち上げれるかって?

 実は防具にも魔石を付けてみてな

 筋力を十倍にしてくれるスキルが発動しているんだ

 普段でも一応30キロくらいの荷物なら、まあ苦労はするが運べる

 普通の成人男性くらいの筋力はあるからな

 俺は大剣を少し振ってみる

 うむ、いい感じだ

 そして俺は的に狙いを絞った

「アースレイン!」

 二つのスキルを混ぜたスキル

 俺はそれをアースレインと名付けた

 地面が揺れ、地盤が浮き上がる

 イメージ通りだ

 浮かび上がった地盤が空高く上がって行き、砕けて雨のように巨大岩が降り注いだ

「なかなかの威力だな。ファンファンなら使いこなせそうだ」

 あの子は大胆に見えて繊細な魔力制御を行っているらしい

 魔法も使えるんだろうけど、俺じゃあ教えれないからなぁ

 そうだ、そのうちミリアに頼んでみるかな


 な、何をやっとるんじゃこの阿呆は!

 それはもはや神域にも達しておる技術じゃないか!

 とんでもないことを、本当にたんたんとやってのけおってからに

 カズマ、お前は一体・・・

 わしは二つの魔石のついた大剣を鑑定して見る

 レア度は、当然のように上から二段階目の幻想クラス

 神話クラスまであと一歩か・・・

 カズマの力については少し分かったことがある

 こやつは自身で自分の作った武器やアイテムを使うと、そこまでの威力は発さない

 まあ十分に強いのだが

 問題はじゃな、こやつが他人、自身が好意を持っている相手に対してアイテムや食事を譲渡すると、その力は何倍にも膨れ上がる

 こやつが死なせたくないと思ったり、大切に思っていたりすると余計にその効果も増すようじゃ

 だからこそ、ここ最近のファンファンの成長具合もすさまじいのじゃろう


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