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第22話

 オークの集落

 その最奥に大きいが簡易的な家がドンと構えられていた

 その中には真っ黒な体色のオークが何かをむさぼっていた

 どうやら猪のようだ

 グチャグチャと汚らしく食べている

 そのオークは猪を食べ終わると、その場にいたオークたちに指示を出した

「街を、潰せ、人間のメスを連れて来い。繁殖期だ!」

 流暢に言葉を放すそのオークは、オークヒーローの比ではないほどの魔力を秘めていた

 このオークは、オークセイヴァー

 オークたちの救世主にして、絶対的指導者

 英雄ですら彼に従いその力を振るう

 倒されたオークヒーローは、群を率いる一匹の将でしかなかった

 彼の周りには3匹のオークヒーローが立っている

 それぞれが群を率いて戦う勇気ある戦士

 その3匹が一斉に街に向かって軍を動かす

 その数3万

 街どころか国すら落とせそうな数、圧倒的な数の暴力

「守備はどう? バーグ」

「おお、これはこれはミンティ様!」

 バーグと呼ばれたオークセイヴァーの横にいつの間にかいた少女

 その名はミンティ

「現在街を攻め滅ぼすために軍を組織しております。それで本当に、あの街の女どもは我らが頂いても?」

「うん、いい、僕が欲しいのは強い個体、だけ。なるべくオスがいい。筋肉の、つき方が、違うからね」

「かしこまりました。わが身を強くしてくださった恩義、それに報いるために、あの街、必ずや攻め落として見せましょう!」

「うん、でも、気を付けて、あの街、すごく強いの、何人かいる」

「それでしたら問題ございません。オークヒーローをさらに強化して下さったではありませんか。それに、この私も出ます故、ご心配なさらぬよう」

「うん、頑張ってね。あ、それと、アレはよっぽど危なくなったとき、しか、出しちゃ駄目。見境ないから」

「ははぁ!」

 オークセイヴァーのバーグは恭しく一礼する

「ああ、ミンティ様のお役に立てるぞお前たち! 気合を入れてかかれ!」

「「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 オークたちは一斉に声をあげ、軍を着実に編成し始めた


 ふぅ、こんなに良い剣をもらうとは思わなかったけど、この剣にはカズマさんの思いが詰まってて、私に力をくれる

 それは魔力とかじゃなくて思いの力

 彼が応援してくれるだけで、私はゼロからでも力を振り絞れそう

 剣を腰に下げて私達は騎士団詰め所へと戻った

「お、帰ったか」

 キール副団長が出迎えてくれたその直後

「うわああああんレナぁあああ!! キール副団長がいじめるんですの!」

「いやいじめてないいじめてない。こらミリア、お前自分で壊したんだからちゃんと作業して来い!」

「だってぇ、もう筋肉が悲鳴を上げてるんですものぉ」

「ミリア、私も手伝うから。それにほら、カズマさんからお土産」

 私はクッキーの入った小包と、新作の大杖をミリアに渡した

「こ、これは!」

 大杖を見て飛びつくミリア

「カズマさんの、新作ですの!?」

「うんそう、オークの魔石をはめ込んだみたい」

「あの大きな魔石をですの!? でも、それにしては小さくなってますわね」

「3等分してそれぞれの武器に組み込んだんだって」

「え、そんなこと出来まして? え、何を言っていらっしゃるのレナ? そんな技術聞いたことありませんわ」

「それを出来るのがあの人だって、もうミリアも分かってるでしょ?」

「そうですわね。謎技術なんてカズマさんにとっては朝飯前でしょうものね」

 納得したミリアは小包を開けてクッキーをムシャムシャ食べ始めた

 なんかちょっとファンファンに似てる気がする

 そうだった、ファンファンのこと、キール副団長とハール団長に伝えなきゃ

「あの、副団長、団長はどこでしょう?」

「ああ、さっき王宮から帰って来てたから、もうすぐここに顔出すだろ」

 キール団長の言う通り、すぐに団長は帰って来た

「む、レナ、帰って来てたんだな。それで、カズマさんはどうだった?」

「はい、これをくれました」

 私は剣を見せる

「ふむふむ、魔石が埋まってるね。あれ、これって」

「はい、オークヒーローの魔石です」

「なっ!? え、フィルとミリアの武器にも同じものが・・・。え、割った?」

「はい、その通りです団長。それができるのが彼なので」

「ハハハ、まあ驚きは、そんなにないかな?まあなんだ、大切に使いなさい」

「はい! あ、それと団長、副団長、重要な情報を仕入れてきました」

「重要な情報?」

 私はファンファンと出会ったこと、彼女が薬によって進化させられたこと、カズマさんが彼女の面倒を見てくれることを一気に話した

「なるほど、謎の少女がゴブリンに薬を・・・。それで今回の事件を引き起こしたとなると、これは人為的なものになるのか。また次が起こらないとも限らない。警戒しておこう」

「団長、これにより現在進行形で多発しているオークの出現。これもまたその少女により引き起こされているのかもしれません」

「そうだな、その線も鑑みて調査を続けるとしよう。ありがとうレナ、フィル」

 団長に報告も終えたし、ファンファンのことも認知してもらえた

 オークに関することが杞憂で終わればいいけど、この事件、十中八九繋がってる

 ゴブリンのコロニーであるここから東にあるタクル山の洞窟

 そことオークの集落らしき場所はそう遠くない

 この2つが少女によってつながってくるから、また街が、今度はオークによって攻められる可能性もある

 私達は、一刻も早く街を復興して、壊れた壁を修復、あとはさらに警戒を強めておかないとね

「よし、復興を急ごう。隣街の副都、パルメにはすでに支援を要請してある。明日には到着するはずだ。次いで向こうのギルドにも救難要請を出しておくとしよう

 流石団長、もうすでに色々と手回ししてくれてる

 すごいなぁ、こんな人になりたいなぁ

 いえ、憧れるだけじゃなくて、必ずなる!!

 そう決意を新たにした昼下がりの午後でした


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