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第21話

 鍛冶場で作っておいた魔石を組み込んだ武器

 オークヒーローの魔石を三分割して組み込んだが上手くいった

 魔石が割れればその力を失う。そんなことは子供でも知っていることだが、俺はあえてそれに挑戦してみた

 通常のオークやゴブリンの魔石では成功したんだ

 方法は思ったより簡単だった

 魔石を割る時にその隙間に魔力を流し込む

 それでただ割れ目を保護するだけ

 本当に単純で、恐ろしいほどに簡単な行為でそれはできた

 俺のひ弱な魔力でも出来たから、これが広まれば鍛冶師たちの技術が飛躍的に高まるかもな

 そんなことを思いつつも、世間との関わりを辞めていたことを思い出して頭を振る

「これを、彼らに」

 武器を持ち、レナ達の元へ戻る

 2人とも驚いていたものの、快く受け取ってくれたな

 まあ半ば強引に渡したってのもあるんだけど

 それにしえても、やっぱり先に渡した方はまだ未完成だったか

 もし彼らがそのせいで亡くなっていたかと思うと、俺は自分を攻めずにはいられなかった

 そんな考えも吹き飛ぶことが起きた

 うしろで音がしたので振り返る

 ファンファンが目を覚ましたんだろう

「お、目が覚めたみたいだな、ファン、ファ、ン?」

 彼を、いや、彼女だった

 彼女の姿を見て俺たちは驚きすぎて言葉すら出なくなった

「んぎ、お菓子美味しかった! ありがとう!」

 抱き着いてくるファンファン

 その、なんだ

 この子、肌の色、耳の長さ、頭にちょこんと生えた小さな角

 それ以外はほとんどヒト族になっていた

「え、お前、え? な、ななななななな」

「どうした? オレの顔何かついてる? あ、さっきのお菓子ついてた。デャハハハハ」

 ほっぺについた食べかすをペロンと長い舌で舐めとり笑う

 これは一体どういう、いやそれよりも裸!

 この子そういえばほとんどボロキレしか纏ってなかったな

 それが、成長した胸とか、背とか

 そのせいで脱げていた

「カズマだっけ? お前のご飯絶対うまい! オレ気に入った! お前守るよ!」

「それより服を着ろ! ほらこれ!」

 俺は自分の服をアイテムボックスから出して着せた

 ぶかぶかだが仕方ない(胸の部分はパツパツだが)

「カ、カズマさん! これなんですか!? 何が起こってるんですか!?」

「こんな異常事態、俺だってわけがわからないよ!?」

「かかかかか、鑑定してみます!」

 フィルが彼女を鑑定してくれた

「ん? 何だお前オレのこと好きか? ジッと見てるけど」

 ファンファンが不思議そうに首をかしげる中、フィルの鑑定が終わった

「この子は、進化したようです。種族名は小鬼族。亜人種と呼ばれるヒト族の一種ですね。これなら街に来ても問題ないように思います。が、やはり肌の色からゴブリンを連想されてしまうかもしれません」

「なら、やっぱり俺が面倒見るしかないのか」

「お、オレお前とつがいになるか? いいぞ! お前のご飯たくさん食べさせろ」

「まあ食料は私達も持ってきますから、その、この子のこと、お願いします」

 レナに頭を下げられては仕方ないか

 それに俺を守ってくれるって言ってるしな

 つがいって言葉が気になるが、聞かなかったことにしよう

 それにしてもなんで急に進化なんてしたんだ?

 それも亜人種に

 魔物、特に人型魔物は本当に極々稀に亜人に進化することは、あると聞いたけど、まさか俺の家でそんなこと起こるなんて夢にも見ないじゃないか

 ファンファンは着せられた俺の服をクンクンと嗅いでいる

 なんかかわいいなこいつ

「なぁなぁ、お腹すいた。ゴハン! ゴハン食べたい!!」

 なかなかに食い意地も張ってる

「よし、ご飯作ってやるから待ってろ。レナ達も食べてくだろう?」

「あはは、お言葉に甘えますね」

「そうですね、私も手伝いますよ」

「ありがとうフィル。じゃあ机の上片付けておいてくれないか?」

「承知しました」

 フィルが机を綺麗にし、レナが料理の補助をしてくれた

 その間ファンファンはちょこまかと動き回り、つまみ食いをしたり、ルカと遊んだり、まあなんだ、可愛い子供って感じだったな

 娘ができたとでも思うか

 これで俺にも責任が生まれたってものだ

 ヒト一人を養うって責任が

 この子を立派に育ててみせる

 まあこの子、明らかに俺より強いんだけど


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