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第20話

 俺はショックの眠りから覚めて、ベッドからむくりと起きあがった

 はぁ、美味しい果物ばかりだったのになぜ・・・

 いや、俺がちゃんと確認してなかったのが悪いんだ

 ネットで囲ったり、柵を作ってれば十分対処できてたはず

 それを怠っていた俺が悪いんだ

 だけど、はぁ、ショックだよなぁ

 取りあえず水でも飲もうとコップに井戸から汲んできていた水を注いで飲み干す

 その直後に扉がトントンと叩かれた

 この遠慮がちなノックの仕方は

「レナ! 無事だったんだな!」

 扉が開き、レナとフィルの顔が見えた

「はい! カズマさんの武器とポーションのおかげで何とかなりました!」

 大げさだけど、彼女達が無事でよかった

 ほっと一安心したのもつかの間、レナ達の後ろにゴブリンの顔が見えた

「危ないレナ!」

 俺は護身用に玄関近くに立てかけておいた剣を取ると直ぐに抜いてゴブリンに向けた

「ぐぎ!」

「ま、待ってくださいカズマさん! すぐに説明すべきでした! この子は、良いゴブリンなんです!」

 俺は険しい顔のまま、ゆっくりと剣を降ろす

「オレ、お前守りに来た! レナの言うこと聞く!」

「ゴブリンが、しゃべった?」

 取りあえずそのゴブリンからは危険な気配を感じなかった(ルカが騒がなかったため)から、中に招き入れた


「で、俺を守るって、何を言ってるんだこのゴブリンは」

「えっとね、かくかくしかじかでね」

 レナが説明してくれた

 ここに来る途中にこのゴブリンと出会ったこと

 このゴブリンはゴブリンソードマスターという特異個体であること、そして、彼は何者かに進化させられたということと、彼の仲間のゴブリンは操られて街を襲ったということを

「なるほど、そんなことが・・・」

「はい、今街は復興中です。死傷者も少なくありません・・・。もしそんなところに彼を連れて行けば、どうなるか目に見えています」

「確かに、寄ってたかって殺せって言われるだろうな」

「ぐぎ、オレとしては負けた時点で、この命レナのもの。覚悟はデキテル」

 なんとも武人なゴブリンだが、ふむ、なんだか可愛く見えて来た

 どことなく他のゴブリンと見た目が違って、人間に近い容姿になっている気がする

 これはもしかして、進化によるものなのだろうか?

「名前はあるのか?」

「オレか? オレはファンファン!」

「そうかファンファン、ほら、これ食べるか?」

 俺はとりあえず彼を安心させるために、レナ達のために作っておいたクッキーを食べさせた

「お、くれるのか!? ありがとう!」

 口調はともかくお礼も言える

 いい子だ。小さいから子って言ってるけど、子供かはわからないんだけどな

「ハムッ! ムシャムシャ」

 ピタッと動きが止まるファンファン

「どうした? 口に合わなかったか?」

「これは、コレ、は・・・。うまぁああああ!! うまっ! うまっ!」

 机に飛び乗って皿からクッキーをむさぼり食べ始めるファンファン

「ま、待ちなさいファンファン! こら!」

 慌ててファンファンを止めに入るレナ

 何とか抑えたんだが、ファンファンはいきなりその場で眠りについてしまった

 何の前触れもなくいきなりだ

「あれ? ファンファン? どうしたの?」

「レナとの戦いで疲れていたところに甘いものを食べたから眠たくなったのでしょう」

「子供だなまったく」

「なんかかわいく思えてきたわね」

 ファンファンをとりあえず俺のベッドに寝かせ、その後はレナ達から、あげた武器について聞いてみた

「それがその、えっと」

「ごめんなさいカズマさん。これ」

「これは・・・」

 2人は俺のあげた武器を取り出す

 それらは魔石が完全に壊れてたり、武器本体が弾けたかのように割れていた

「申し訳ありません。全力で戦わなければあのゴブリンタイタンには勝てなかったのです」

 俺は壊れた武器を抱えて鍛冶場へとその武器を持っていった


 やっぱり、怒ってる・・・

 そりゃそうよね。もらった武器をすぐに壊しちゃったんだもん

 カズマさんは鍛冶場の方へ黙って行っちゃったし・・・

 よし! 誠心誠意謝ろう!

「フィル」

「そうですね。謝り倒して謝りまくりましょう」

「ええ、土下座も」

 しばらくするとカズマさんが戻ってきた

 その顔は、笑顔!?

「よかった! あの武器じゃまだまだ不安だったんだ。これを渡す口実ができたよ」

「え、これって」

「ああ、今度は大成功だ! あれからすぐにもう一度魔石を加工して、剣、大杖、槍に組み込んでみたんだ。組み込んだのはオークヒーローの魔石だ」

「え、あれを、三つに分割して取り付けたんですか!?」

「ああ、上手くいったよ」

 そんな、そんなことあり得ないわ!

 丸く加工するくらいならともかく、三つに分割って、割ってるじゃない!

 魔石は欠けた程度なら大丈夫だけど、割れちゃえばその魔力を失う

 それをこの人は、魔力を失わせることなく加工したうえに、武器に組み込んじゃった

 フィルは驚きを通り越してもはや無反応になってる

 多分鑑定して、その結果に驚いて思考停止しちゃったんだと思う

「2人供、いつもありがとう。これは俺からの気持ちだ。ぜひもらってほしい」

 カズマさんは三つの武器を無理やり押し付けるようにして私達に渡した

「怒ってないの?」

「なんで? 俺の武器が未熟だったせいで君たちを危険にさらしたんだ。だからこれはその贖罪も兼ねてる。気にせず持って行って欲しい」

「ありがとうカズマさん!」

「ありがとうございますカズマさん。大切に使わせてもらいますよ」

 感謝を伝えると、カズマさんの後ろでもぞもぞとファンファンが動いてムクリと起きあがった

 そしてその姿を見て私達はとんでもなく驚いちゃった


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