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第17話

 ゴブリンタイタンを倒してからは何も出てこなかった

 空を裂いて急に現れたゴブリンタイタン

 明らかに何かの意志を感じたわ

 騎士団の方でも突如現れたゴブリンの大群と、ゴブリンタイタンについて調査を進めると共に、街の復興に尽力した

「レナ、君はカズマ君にお礼を言いに行ってくれ。ミリアとフィルもな」

「でも団長、街の復興が」

「そうですわ! ここまで崩壊したのも、わたくしの責任も、ちょっとだけあったりなかったり」

「それもそうだ。ミリアは復興の手伝いと反省をしっかりしてくれ」

「は、はい・・・」

 それでも行っていいと言われると思ったのか、ミリアはガクリと肩を落としてる

 ふふふ、カズマさんのクッキーは私が独り占めね

 いえ、そんなことよりもカズマさんにはしっかりとお礼を伝えないと

「ミリアの代わりに私達がしっかりお礼を言っておくね」

「よろしくお願いしますわ。団長、副団長はどこですの?」

「ああ、キールならギルドマスターと国王に報告に行ってるはずだ。もうすぐ戻ってくるだろうからギルドで待ってるといい」

「はい、行ってまいりますわね」

 ギルドの方へ走って行くミリアを見送ってから、私とフィルはカズマさんの家へ向かった


 森の中は不気味なほど静かで、最近よく見ていたオークの気配もないし、ゴブリンもいない

 それどころかよく見ていた角兎や猪に至るまで気配がなかった

「おかしいですね。ここまで静かなはずないのですが・・・。レナ、周囲を探知してください。警戒しながら進みましょう」

「う、うん」

 森がおかしい

 フィルの言う通り何が起きてもいいよう警戒しなくちゃ

 探知スキルを展開しながら奥へと進んでいく

 いつも聞こえていた鳥のさえずりもない

 そんな中、不気味な気配が探知に引っかかった

「フィル、何かいるよ」

「さすがの精度ですね。何が見えます?」

「まだ姿までは分かんない、けど、ゴブリンと似た気配」

「ゴブリン・・・。まだ残党がいるようですね。あれだけの数いたのです。逃げ出したものもいるでしょう」

 逃げ出した・・・。そんな感じじゃない気がするのよね

 だってこのゴブリン、多分だけどこっちに気づいて、見てるんだから

「フィル、逃げよう。このゴブリンなんかおかしいよ」

「ゴブリンタイタンではないのでしょう?」

「うん、大きくてもホブゴブリンくらい」

「なら問題はないのでは? 二人なら十分倒せる相手です」

「それはそうなんだけど・・・。ヤバイ、こっちに走って来てる!」

「戦闘態勢に移ります!」

 カズマさんにもらった武器は三人とも壊れてしまった

 今持ってるのは騎士団で配給される普通の鉄剣や鉄槍

 本当にただのゴブリンやホブゴブリンなら問題なく倒せるけど、これがこの前のオークヒーローみたいな変異種だったら

 ゴブリンヒーローなんて聞いたことないけど、この森ではもう何がいても不思議じゃない

「来た!」

 茂みから飛び出したのは、私より背の高いフィルよりも大きなホブゴブリン

 その体色は黒くて、立派な鎧と、手にはレアと思われる大剣を持っていた

「鑑定!」

 フィルがそのゴブリンを鑑定してくれる

「ホブゴブリン、ソードマスター? そんなもの聞いたことありませんが、どうやら、私達はとんでもない相手に目を付けられていたようですね」

ソードマスターって、剣の達人ってこと? 私の剣術なんてまだ初級の域を出ないっていうのに、そんな魔物の相手なんてできるのかしら?

 でも不思議と負ける気がしない

 明らかにゴブリンタイタンより強い相手なのに、体の奥から力と勇気がもりもり湧いてくる

 カズマさんからもらったポーションの効果が、私達を強化してくれてるんだ

「武器を構えてくださいレナ」

「うん、油断しないでね」

「当り前です」

 私が剣を抜くと同時にフィルが槍を構える

「ぐぎゅぎゃ」

 ソードマスターが何かを喋ってるように見えるけど、私達にゴブリンの言葉なんてわかんない

 私達が戦闘態勢を取ったことでソードマスターも大剣を真っ直ぐに構えた

 すきがない・・・

 まさしく達人ってわけね

 私はゴクリと生唾を飲み込んだ

 フィルの方はフーッと息を吐いて精神を落ち着かせてる

 ソードマスターと私達は互いに出方をうかがって、数分とも、数時間とも思える時間が流れた


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