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第14話

 カズマさんの所へ着くと、切り株に腰を下ろして水を飲んでいる彼を見つけた

「お、レナか。今日はミリアたちはいないんだな・・・。どうしたんだそんな深刻な顔をして。まさかまた魔物が」

「はい・・・。1万ものゴブリンの大群が、街に攻めてきているんです。それで、私・・・。カズマさんお願い! 私達を助けて!」

「話は分かった。だが俺は、弱い。ゴブリン一体にも苦戦するほどに」

「そんなことありません! カズマさんならきっと!」

 でもカズマさんは首を横に振った

「俺には何もできないが、君に渡したいものがあったんだ。持って行ってくれ。オークを倒してくれたり魔石をくれたお礼だ」

 カズマさんはどこからともなく剣、槍、大杖を取り出して渡してくれた

「君には剣を、フィルには槍を、ミリアにはその大杖を。そしてこれを」

 もう一つ、うっすらと光る白い液体の入った小瓶をくれる

「それと同じものが数百個入ったバッグも渡しておく」

「あの、これは?」

「俺が作ったただのポーションだ。切り傷くらいしか治せないと思うが、無いよりましだろう」

「ありがとうございます! この恩は必ず」

「恩なんて感じないでくれ。俺は何もできない役立たずだし、君たちを助けに行けるような勇気もない・・・。ハハハ、見てくれ、もし俺がその戦場に行ったらって想像しただけで足が震えるんだ」

 カズマさんの足は確かに小刻みに震えている

「カズマさん、あなたは自分が思っているよりも・・・。いえ何でもありません。必ず生きて、またここにみんなできますから! その時は、また美味しいご飯を食べさせてくださいね」

 私は剣の方を見てを少し鑑定した

「こ、この剣」

「ああ、なんとか魔石を汲み込めたんだそんなに強いスキルはついていないと思うけど、まあ持っていて損はないと思うよ」

 ただゴブリンのスキルがついた剣ってだけじゃない

 レア度がレジェンド以上。詳しくはフィルじゃないと見れないけど、少なくとも簡単に作れるものじゃない

 私は彼に感謝しながら何度も頭を下げて、また走って戦場へと戻った


 心なしか体が軽い

 風魔法で足の速さを上げているとはいえ、ここまでのスピードは出なかったはず

 この剣のおかげなのかな?

 私のために打ってくれた剣。見た目はただの鉄剣と変わらない

 違いと言えば柄の中央に魔石が埋まってることくらい

 その魔石からもとんでもない力を感じる

 ゴブリンの魔石でここまでの魔力を含んでるなんてこと、あり得ない

 これはもしかして、カズマさんの魔力も練り込まれているのかしら?

 剣を鞘にしまって前を見る

「あ、あれ?」

 通常歩いて30分はかかる距離

 それがものの数分でもう城壁が見えてきてる

 城壁の周りのゴブリンは壁を壊してすでに中に結構入り込んでいた

「待っててみんな!」

 壁あたりでまだくすぶっていたゴブリンを蹴り飛ばし、ジャンプして城壁内へ

 そのまま剣で城壁内のゴブリンたちを切りながらフォウさんの元へ走った

 この時はまだ、カズマさんの剣を使わなかった

 ともかくフォウさんに種族スキルを使わせないために急いでいたから


「戻りました!」

「早かったなレナ!」

 フォウさんは怪我をしていない方の拳でゴブリンを殴り飛ばしていた

 一撃で潰れるゴブリンの頭

 これは流石鬼人の腕力

 女性でも100キロ以上の金棒を扱えるほど種族として筋力がすごい

「この剣が、きっと、切り開いてくれます!」

 私はさやから剣を抜いた

 すると、今までただの鉄剣だったはずなのに、剣の腹に文字のような紋様が現れて、埋め込まれた魔石が輝いた

「魔石が埋め込まれているのか? その技術、まだ確立されていないはずだが? 一体お前どこでそれを」

「信頼のおける方からの提供です。門外不出らしいので他言無用でお願いします」

「ああ、約束しよう」

 私は向かって来た10体ほどのゴブリンの先頭の一匹を斬った

 一匹だけだったはずなの、私が斬ったは

 そのはずなのに、目の前の10体のゴブリンは全て切り裂かれて崩れ落ちた

「あ、え?」

「なんだその威力は・・・。空間ごと斬ってないかそれ?」

 続くゴブリンの一団も、立った一撃で全てが真っ二つになる

「フォウさん、私急いで残りの武器を、託された人たちに届けてきます」

「ああ、ここは任せてくれ!」

 私は残る槍、大杖をフィルとミリアに届けるためにゴブリンを斬りながら走った


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