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第13話

 ゴブリンの群れはどんどん進行してくる

 なんとか街の人々は城の方へ逃がしたけど、このまま進めばいずれ城にまで攻め入られてしまう

「ハァハァ」

「大丈夫かレナ? 少し下がって休むか?」

 横にいた副団長が声をかけてくれる

「いえ、まだまだいけます!」

 心なしかゴブリンの数がまた増えてるような

 私はしっかりとゴブリンの群れを見回した

「副団長・・・。ゴブリンの数が」

 わらわらと、次から次へとゴブリンがどこからか溢れて来る

「なんだ、どうなってる? レナ、何か分かるか?」

「分かりません。でも、どんどん増えていって」

 100体、500体、1000体

 まだまだ増えてる

「う、ああ」

「およそ1万・・・。とてもこの場にいる騎士と冒険者で、防ぎきれる数じゃない。レナ、冒険者ギルドのマスターに連絡してくれ! 他の街に援軍を頼むんだ」

 そういうと副団長は走って団長の元へ行ってしまった

 私も剣を鞘に納めると、ギルドマスターの元へ走った


 ギルドマスターのいる東門近くに来ると、そこでも冒険者たちがゴブリンと激しい戦闘を繰り広げてしていた

 もし作戦が失敗した場合も踏まえて最終防衛ラインとして控えている彼ら

 その中にギルドマスターの姿があった

 彼女の名前はフォウ・シェスタ

 右目には深い傷があって潰れている隻眼の女性で、種族はこの辺りでは珍しい鬼人で、かなりかっこいい人

 黒髪短髪で、背の高さは180センチだったかな?

 面倒見がいいので男女問わず慕われてるけど、よく女性に告白されている

 年齢は28歳で、もともとはAランクの冒険者だったけど、右目や利き腕の怪我が元で引退して、後進の育成に従事してる

 私達騎士団も良くお世話になっていて、私は格闘術の訓練を良く受けている

「む、君は確か騎士団の」

「レナです。あの、ギルドマスター、問題が発生しました」

「問題?」

「はい、ゴブリンの援軍が来て、その数が1万に達しました」

「なんだと!?」

「嘘だろ! そんなの聞いてねえ! 俺たちは降りる。逃げるぞお前ら!」

 話を聞いた何組かの冒険者が逃げ出す

「数では勝ち目がない。近隣の冒険者を募ろうにも、このままでは城の陥落までに間に合わない、ゴブリンたちに攻め込まれてしまうな・・・。ヨンナ!」

 彼女が呼んだのはヨンナ・ココノツという狐獣人の女性で、フォウさんの右腕として信頼されてる人

「は、はい!」

「お前を次のギルドマスターに任命する」

「え?!」

「命を燃やす刻が来た。鬼人の秘術を使う」

 命を燃やす? 鬼人の秘術? 一体彼女は何をしようとしているのかしら

「ま、待ってくださいマスター! そんな急に言われても! 私受け止めきれません!」

「ヨンナ、お前ならできる。お前は冒険者達をよく見ているし、まとめ上げる実力もある。後は頼んだ」

 フォウさんはそういうと、上着を脱ぐ

 あらわになった美しい肉体

 さらしをまいてあるけど、かなり大きな胸にくぎ付けになる冒険者たち

「ヨンナさん、フォウさんは一体何を?」

「マスターは鬼人の秘術、命の灯を使おうとしています。鬼人から鬼となって敵を滅ぼす秘術です。そうなれば彼女はSランクにも匹敵する力を手にするでしょう」

「すごいじゃないですか! 何故今まで使ってこなかったのですか?」

「それは、この秘術が、使用したが最後、文字通り命を燃やして力を得るからです。そして、敵を殲滅した後は、死に至ります。殲滅、と言うより時間制限があるわけですが、数時間、と言ったところでしょうか」

「途中で止めることができたら、寿命は削れないんですか?」

「その場で死ぬことはないですけど、寿命は大幅になくなり、そう長くはもたないでしょう」

「そんな・・・」

「いいんだレナ。私はあの時守れなかった仲間達の命の代わりに、この街の人々を守るという贖罪をしたいだけだ。これで私も彼らの元へ安心して逝ける」

 フォウさんはヨンナさんに上着を預けると、ゴブリンたちの元へと走り出そうとした

「ま、待ってください!」

「止めてくれるなレナ」

「彼なら、もしかしたら」

「彼? 何か策があるのか?」

「はい! 少し待っていてください。どうか、その秘術を使わずに」

「・・・、分かった。君のことを信じる」

 私はうなづいて駆けだす

 自分でも驚くほどの速さで走り、ゴブリンの群れを風魔法で飛び越えて、カズマさんがいるあの家へ


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