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第12話

 小鳥のさえずりと日の光で目を覚ました俺は、農具を持って今日も畑の様子を見に来た

 日課になっているんだが、結構楽しいんだよな

 今日は果物を中心に収穫していく

 真っ赤に熟れたリンゴ、香り高いレモン、葡萄酒にもってこいな赤ブドウ(品種は不明)

 この三種類を収穫し、アイテムボックスに詰めておく

 これでいつでも新鮮な果物が食べれるな

「お、ルカ、手伝ってくれてありがとうな」

 ルカは本当に賢いな

 下の方になっていた実のほどよく熟れているものをえりすぐって口でもぎ、こっちに持ってきてくれる

 俺はお礼にルカの頭を撫で、そしてリンゴを切って与えた

「んにゃみゅ!」

 嬉しそうに咥えて自分の一番落ち着ける場所に持って行って食べ始めた

 ちなみに一番落ち着くのは俺のベッドの上らしい

 こいつ、本当に可愛いやつだな


 わしは収穫の手伝いを装って果物を鑑定した

 この果物、アダムの果実に天の禁柑、ファムファタールのルビーじゃないか

 リンゴに似たアダムの果実は数時間じゃが寿命を延ばし、レモンに似た天の禁柑は食べてから数日間の予知夢を視ることができる。こっちの葡萄、ファムファタールのルビーは一度に一房食べれば協力な妖精魔法を一つ獲得できる代物

 どれもこれも人間どもになぞ渡せぬ代物じゃ・・・

 こやつどれだけ常識はずれな物を作っとるか分かっておるのか?

 この果物はあの小娘たちには食わせぬようにせねば

 なんとしても防ぐのじゃ!


 果物の収穫を終えたんだが、最近慣れてきたからかかなり速く収穫できてる気がする

 始めたての頃は一つの畑の収穫だけで丸一日かかってたからなぁ

 今では三つの畑だろうと朝のうちに終わらせれるようになった

 これは道具の作成が上手くいっていることも関係しているのかもしれないが、やはり反復も大事なのだろう。こんな俺でもレアの道具が作れるようになったからな

「さてと、次はっと」

 俺は農具を鍬に持ち替えて、果物畑の横の土を耕し始めた

 この鍬もいい出来だ

 まるで豆腐でも潰すかのように地面にサクサク入り込んで、どんどん耕していける

 地面を切り裂いているかのようでどこか気持ちいい

「んにゃっ!」

 ルカがどこからかネズミを捕まえて来ていた

「うわ、食べてもいいけどそのシーンは見せないでくれよ」

「んみゃ!」

 ルカは少し離れた木陰でネズミをむさぼり始めた

「よし、あと二反ほど耕しておくか。新しい種も植えたいしな」

 新しい種とは、森で見つけた桃、イチゴ、それと恐らく玉ねぎ

 玉ねぎは種ではなく球根だけどな

 その三種を植えるのに新しい畑が必要だったわけだ

 俺の畑、作物がどんどん充実していってるな


 よし、ネズミを捕まえて来たぞ

 この種のネズミは果物しか食わん

 こ奴らにさっきの果物を食い荒らさせるとするか

 わしは食ったふりをして畑の方にネズミを数匹放っておいた

 ネズミがこれらを食って能力を得たとしても大したことはない

 あとでわしが喰らえばいいだけのこと

 本当に厄介なものを作ってくれる

 問題は、アイテムボックスにしまった分じゃが、そっちは小娘どもに出そうとしたときにでもわしが悪戯を装ってどうにかするかの

 予知夢、未来予知なぞ人に余る

 わしか? わしは予知なぞしとうないな

 未来は分からないからこそ面白い


 畑を耕し終えて少し休憩

 冷たい水の入った水筒から水を飲み、器に注いでルカにも飲ませる

「んみゅんみゃんみゃい」

 ぴちゃぴちゃとおいしそうに飲んでいる

 ルカが水を飲み終わったあたりで畑に種を植え始めた

 肥料はオークの骨を細かく砕いたもの

 これがかなりいい肥料になっているようで、魔力を含んでいるためか植物があっという間に育つ

 しかもこの育った作物がかなり美味しく出来上がるんだなこれが

 街で売ればそれなりにいい値がつきそうだが、街に行けば人に会わなければならない

 別にいやってわけじゃないし、現にレナ達が来てくれるのは楽しい

 だが街ともなると知らない人間、もしくは知ってる人間がいるかもしれないからな

 ひょんなときに出会うという危険は冒したくないんだよな

「よし、これでいいか。あとはまた配管をここに通して・・・」

 俺は川から水を引き、蛇口をひねるだけで水撒きができる装置を作っておいた

 これにより水やりの時間も大幅に短縮できた

 やはり前世の知識があるおかげでこういった発想ができるのは強みだよなぁ

 畑の作業を終え、ちょうどお昼時になったので家に引っ込んで、作っておいた弁当を食べた

 俺はサンドイッチで、ルカは魚

 このサンドイッチにはオーク肉のカツと、畑で取れたキャベツが挟んである

 かなりうまい

「ルカ、うまいか?」

「んにゅ!」

 ルカも美味そうに魚を食べていた


 食べ終わったら家の隣の小屋へ行き、鍛冶仕事を始めた

 かなりの数の剣を打って来たおかげで、一本作成するのに一時間かからなくなった

 剣を数本作製した後は、魔石を加工して剣に空いた穴に装着していく

 一本目

 火のスキルを使うゴブリンのスキルが込められているため、うまく扱えれば火剣となる

 外に出て剣を構え、的を切った

「燃え、たけど・・・。ああだめだ、剣が溶けた」

 どろりと剣が溶け、魔石も砕ける

 やはりそう簡単には行かないか

 こればっかりはとにかく回数をこなすしかない

次の剣も、また次の剣もすぐ壊れて使い物にならなかった

 そうしてそこからさらに3本駄目にして、最後の一本

 これはホブゴブリンの魔石を思い切って使っており、そのスキルは空間喰らい

 その名の通り空間を削り取ってしまうスキルだ

 自身の魔力を糧として発動するため、魔力が切れない限りいくらでも使えるんだが、果たしてうまくいくのか?

 剣を構え、的に向かって振るう

「うおっ!」

 空間が裂けた!?

 的は斜めに裂けている、いや、斜めに斬り裂かれた部分がぽっかりと消えている

 剣は刃こぼれはしているものの、今までのものと違って砕けていないし、魔石もヒビ一つ入っていない

 だがもう一度使おうと魔力を込めた瞬間、魔石事武器が砕け散ってしまった

 結果は失敗だったけど、ついに何かがつかめた気がして、俺はその結果をしっかりと書き留めた

 それを元に、三人に約束していた武器の製造を始めた


 こ、こやつ、どこでこの製法を・・・

 失われた、鍛冶の神による神造兵器の作り方じゃぞこれは!

 何じゃこいつ! 何なんじゃ本当に!

 わしは二度見た。神造兵器の恐ろしさを

 一度目はまだ若いころじゃ

 神造兵器最後の作りてじゃった今では絶滅した古代種、エルダーヒューマンによる製造

 ・・・

 あの頃はまだヒトと共にあったのを思い出したわ

 く、腹立たしい

 二度目は何を隠そう千年前、わしの力を完全に奪った勇者の神剣こそ、神から下賜された神造兵器

 あれは劣化版だったようじゃが、あれらと同じような製造法じゃぞ

 それを独自に編み出したというのかこ奴は!

 でたらめが過ぎる!

 じゃが面白い。一体どれほどわしを楽しませてくれるのじゃ

 やはりこやつは力を取り戻したとき共にありたい

 一緒に世界を・・・

 わしはいつか世界を支配し、こやつと面白おかしく暮らす日を夢見た


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