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第9話

 オーク事件から数日が経ったころのこと

 レナがオークを狩ってその肉を持って来た

「一人で倒したの?」

「はい、私も日々成長してるんです!」

 レナはその時のことを嬉しそうに話してくれた

「この剣、すごく使いやすいです! なんていうか、カズマさんの思いがこもってる感じがして」

「まあ真剣に作ってるからな。でも俺なんてまだまだだよ。鍛冶スキルを取った時師事してた師匠はもっとすごい剣を打つんだ」

 俺の冒険者としての素質が皆無だったのが分かってから、路頭に迷っていた時、何かしら手に職があった方がいいと考え、鍛冶師に弟子入りしたことがあった

 鍛冶スキル取り立てだった俺を弟子に取ってくれた師匠

 彼女は、俺の故郷では珍しいハーフドワーフで、そもそもドワーフ自体が俺の故郷ではかなり珍しいんだが、父親がドワーフ、母親が人間だったらしい

 その父親から鍛冶技術を習ったと言っていた

 彼女の技術はそれはすごいもので、あのころ素人だった俺でも分かるくらいに良い武器を作っていた

 作る武器は必ずレア以上なるという技術力の高さだ

 赤毛で背は150センチくらいとドワーフにしてはやや高く、人間にしてはやや低い

 ぱっちりとした二重で可愛い印象だったな

 ただよく注意しないと二日も三日も鍛冶場に籠るので、食事の世話と清潔面の世話が大変った

 俺が弟子として来る前はしょっちゅう栄養失調になって倒れていたらしいからな

 トイレなんてその辺の鍋とかに済ませてたし・・・

 まあ彼女にはペットの犬がいたから、その子が彼女が倒れた時には活躍していたようだ

 今は他にも弟子ができているから、そいつらが面倒を見ていることだろう

 俺が技術を一通り教わって、自分で打った一振りの剣を見たとき、彼女はただ一言、これ以上教えてやれることはないと、俺を見限った

 一応店で出せる程度には技術は磨いたが、彼女にとってはただの剣にすぎない

 俺には鍛冶師としての才能はなかったんだろうな

 そして、最後に彼女が研究していたのが、剣に魔石を組み込んで魔物の力を使うという新しい技術だった

 魔石は魔物の体から出る石で、これは魔法の触媒や魔法薬などの材料に重宝される

 弱い魔物からでも取れるが、やはり弱い魔物だと触媒としてもあまり役に立たない

 そんな魔石を武器に取りつける技術

 転生者の俺からしたら、ゲームなどの知識でこういう技術については頭にはある

 まあゲームと現実ではそう上手くいかないんだろうな

 だが俺はその技術については必ず確立出来ると思ってる

 現に今現在試作している剣はいい調子だ

 2~3回使うと剣もしくは魔石が壊れるが、これは魔石をそのままはめ込んでいるからだ

 魔石を加工し、剣にその加工した魔石をはめ込む穴を作っておく

 こうすることで剣全体に均等に魔石の力が流れるようになる

 魔物の力を使う

 ヒト族が使う魔法やスキルも確かに強いが、魔物は野生を生きるだけあってどの攻撃も強力だ

 魔物の力が使えるようになれば、その魔物と戦うのに大きな力になってくれるだろう

「大丈夫ですかカズマさん? なにか考え事をしているようですけど」

「ああ、ちょっと新しい剣の構想を練ってたんだ。もう少しでいい感じのができそうなんだけど、こればっかりは回数を重ねて失敗を繰り返すしかないからなぁ」

「そう言えば魔石が欲しいとのことでしたが、前に倒したオークヒーローの魔石はどうしたんですか? 売れば屋敷が買えるくらいのお金なりますよ?」

「別に俺が倒したわけじゃないんだけど、珍しいから記念に取ってあるよ。ほらあそこ」

 俺は本棚の上を指さす

「綺麗な魔石ですよね。魔力の純度が高いって言うか」

 黒曜石のように光を受けてきらりと光る魔石

 大きさは拳くらいだが、綺麗な球体で、珍しいし置物としてはちょうどよかった

 レナに魔石が欲しいと言ったのは、俺では魔物を倒すのも一苦労だからだ

 角兎にも苦戦する俺じゃあゴブリンですらまともに倒せないらな

 一応角兎なんかの魔石はあるにはあるが、やはりそこまで性能が良くなく、武器に組み込むには壊れやすすぎる

 そこでオークの魔石やゴブリンの魔石が欲しいわけだ

 騎士団なら有り余っているようで、普段は商人に買い取ってもらっている分のあまりを、俺が魔物肉や料理、野菜を提供することで分けてもらっているというわけだ

 ゴブリンの魔石も質がいいというわけではないが、角兎に比べればまだましで、練習するにはもってこいなんだよな

 値段もそこまでしないから手に入りやすいし

「はいこれ」

 袋を渡してくれるレナ

 その中には数十個ものゴブリンやオークの魔石が入っていた

「レナ、あのこれ、なんか滅茶苦茶多いんだけど」

「私が個人的にためてたやつです。騎士団のお給料で充分生活できますし、私には必要ないので」

「ありがとうレナ。こんなによくしてもらって嬉しいよ」

「えへへ、喜んでいただけたなら良かったです!」

 良い子だな

 またご飯でも作ってふるまうかな

 お菓子でもいいな

 一人でもいい、ルカいれば寂しくない

 そう思っていたが、この子の笑顔を見ていると、出会えてよかった思える

 この子の笑顔は周りを幸せにする

 きっと彼女はいずれ多くの人々を笑顔するんだろうな

 そんな気がする


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