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第7話

 なんか最近騎士たちが入り浸ってる

 俺の食事目当てなのか?

 いやまあ美味しいって言ってくれる人がいるだけでこちらとしても嬉しいんだけど

 特によく来るのはレナだ

 彼女はどうやらこの森の巡回担当とかいうのになったらしく、ちょくちょく休憩と称してうちに来る

 というか彼女、この短期間でどんどん昇級していってるらしい

 はぁ、やっぱ才能ってすごいな

 レナ以外にもミリア、フィルの二人もしょっちゅう来てる

「んむ、んぐ、美味しいですわぁのクッキー! どうやって作ってますの? わたくしの実家のシェフでもこうも美味しく作ることは難しい思いますの」

「そんなこと言われても、普通の作り方なんですけど」

 本当になにも特別なことはない

 料理スキルで多少なりとも美味しさは増してるは思うんだが、そんな大絶賛されるほどか?

 あ、そうか、命の恩人って思っててくれて、その感謝みたいな感じなのかな?

 お世辞でも嬉しいな

「あの、以前お話していた罠の作り方ついてなのですが」

「ああ、じゃあ後で見せるのでおやつを食べ終わったら隣の小屋行きましょう」

 俺の罠なんてどこでも作れるだろうに

 どこまで本気にしていいのやら

「そう言えばカズマさん、あの後オークが襲ってきたりなどはありませんでしたか? 竜を目撃したりとか」

「そう言ったことはないかな。ルカも騒いだりしてないからなぁ」

 そもそもこの辺りでオークはあまり見ない

 見たとしても一体とか二体くらいだしなぁ

「そうですか・・・」

 騎士団の仕事も結構大変そうだ

 確実に安全と分かるまでここらの調査は終わらないんだろうな

「あ、カズマさん、そろそろ罠を作るところを見せてもらっていいでしょうか?」

「いいですよ」

 俺は立ち上がってフィルを連れて小屋まで来た

 この小屋は普段物置として使ったり、道具を作ったりしている仕事場のようなものだ

 縄はもちろんのこと、小屋の奥には鍛冶場もある

 鍛冶場では剣に限らず防具や槍なども作ってる

 この辺りは素材が豊富で結構助かってるんだよな

 鉱山にはもちろん危険な魔物が出るんだが、気配遮断のスキルのおかげで今のところ見つかったことはない

 そう、俺は普段狩りに出たり、ルカと散歩をする時もこのスキルを使ってる

 便利なんだよなぁこれ

「はい、ではこのツタをまず結って行きます」

「こ、このツタ・・・」

「ツタがどうかしましたか?」

「いえ、なんでもありません」

 俺は丁寧に説明した

フィルは不思議そうな顔でなぜか俺を見てたけど何なんだろうな

 罠を手際よく作り上げる

「ありがとうございましたカズマさん。いいものを見せてもらいました」

「俺なんかの技術じゃ大したことないだろうけど、そう言ってもらうと嬉しいですよ」



 カズマさんの謎技術が気になった私は罠作りを見せてもらうことにしました

 彼は快く受けてくれたので一安心

 ・・・

 そしてやはりこのちょっとしたおやつにすら、体を強化する効果があるのですね

 この効果がどれほど続くのか団員たちを見て統計を出し、おおよその推測はできました

 この効果、切れないんですよね・・・

 明らかにおかしい。バフではなく、能力の成長?

 彼の力は一体何なんでしょう

「これが俺がいつも使ってるツタです」

 私は驚いて目を見開いた

 鑑定スキルによる解析の結果、これは神言樹という木がこの土地独自に進化したもの

 本来の神言樹は太く、そびえ立つような大きさで鋼鉄よりも硬いですが、これはツル状に伸びて柔軟で丈夫

 叩いてみると金属のような音もしますね

「これをこうして、こうやって、ほいできた」

「あの、速すぎて見えなかったのでもう一度いいでしょうか?」

「あれ? 速すぎましたか? おかしいな、何回もやってて慣れたのかな?」

 そんなわけないそんなわけない! この人どこまで冗談で言ってるんでしょうか

 今のは、ベテランのシーフでも出来ない速さでしたよ

 しかも鋼鉄のように硬いこれを、ただの鋏で・・・

 ただの鋏じゃないですねこれ

 聖剣レベルのレア度、ですか

 レア度はアンコモンから始まり、聖剣レベルとなるとレジェンダリ、ファンタズマ、ゴッズなどというものもあります

 まあファンタズマ以上は現代の鍛冶師では際限が難しく、現在出回っているものは古代遺跡や迷宮と呼ばれる場所で見つかってりするもの

 ゴッズに至ってはあると噂されるものの、現物などは見たことがありません

 それが、この鋏は少なくともレジェンダリ。下手をするとファンタズマクラスの代物です

 自分で作ったようですが、そんなものホイホイ作り出す

 間違いなく彼は神級鍛冶師とみていいでしょう

 今でもなおひっそりとファンタズマクラスの武器を作り出しているという、伝説の鍛冶師たち

 その中の一人なのかもしれませんね

「で、こんな感じなんだけどどうかな?」

「ありがとうございましたカズマさん。いいものを見せてもらいました」

 これほどの腕、才能を持ちながらなぜ一人で?

 まあ事情があるのでしょう。彼は我々を救ってくれた

 ならば彼の迷惑になることはしないようにしなければ



 まったく、最近あの豚どもをよく見る

 あいつらは魔族の回し者か?

 それにオークヒーローか

 ここ100年以上見ていない希少種

 魔族がもっと勢力を持っていたころにはもう少し多かったのだが

 まあいい、あいつらは弱い。わしが一噛みすれば簡単に倒せる

 今はあやつの平穏のため戦・・・

 なんでわしがあやつのことを考えねばならん!

 いや、あやつには無事でいてもらわなければな

 わしの力を取り戻すためにも絶対に必要じゃ

 もう少し、もう少しなんじゃ

 今はまだ少しの間しか元の姿に戻れない

 だが、あやつの力のおかげでここまで回復できた

 さて、日課の見回りでも行くか

「お、ミア、散歩か?」

「みゅあ」

 可愛く媚びているのも今の内だ

 いずれは力を取り戻し、勇者ランスの子孫を滅ぼし、この国を破壊しつくし、やがて世界も

 その時はこやつを傍らに置いておいてもいい

 わしの力を取り戻してくれたのだからな


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