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第6話

 さて、今日はまず仕掛けた罠でも見に行くか

 そろそろ騎士団の調査員も来るだろうし、料理の準備もしておかないとな

 猪でもとれていればいいが・・・。何人来るか分からないし、多めに取っておいて間違いはないだろう

 この辺りの猪はでかいだけあって食いでがある

 猪がかかってくれてれば万々歳ってところかな

 そして、予想より大きな獲物がかかっていた

 正直仕掛けたことを忘れていた場所だったが、まさかこんなのがかかっているとは

「あなたは・・・、この罠はあなたが!?」

「ああはい、忘れてた罠だったんですけど、ところであなた達は、もしかして騎士団の方ですか?」

「そうです。私は騎士団長のハール。あなたの罠のおかげで助かりました」

「あ、ああはい、俺はカズマと言います」

 まわりにはたくさんのオークの死体が転がっていて、騎士団の人達はかなり疲弊している

「何があったんですか?」

「実は、竜が出たというので調査に来たら、オークたちの襲撃をうけまして」

「オークの襲撃!? そういえば最近オークをよく見てた気が・・・。それで竜は大丈夫だったんですか?」

「ええ、すでに魔力の痕跡もなく、どこかへ飛び去ったようです。それにしても、この罠はオークを捕らえるためでは?」

「いえ、多少大きく作ってますが、猪用です。そもそも俺にオークは狩れません。弱いので」

 そう、冒険者をやっていたころはゴブリンですら一匹倒すのがやっとだった

 弱いんだよ俺は

 オークは騎士団の人達がとどめを刺してくれた

 この大きなオークはオークヒーローというオークの中の英雄の立ち位置にあるらしい

 体色が違っていて、真っ黒だ

 このオークが倒されたことで他のオークは逃げてしまったようだ

 ふぅ、大量のオークなんて、もし見ていたら夢に出てきそうだ

 ひとまず疲弊している彼らを家に案内することにした



 まさかこんなところに人がいるとは思わなかった

 しかしいてくれて助かったのも事実だ

それにしても驚いた

 こんなところに人が住んでいることもだが、あのオークヒーローを簡単に捕まえてしまえるこの網はなんだ?

 鋼鉄製でも捕らえられない危険な魔物だぞ?

「それで団長さん、竜の調査でここに来たんですよね? レナから話は聞いています」

「え? レナ、この方とは知り合いなのか?」

「あ、あの、えっとー・・・。ええそうです。あの時私を助けてくれあのがケイジさんなんです」

「なんと、レナの命の恩人でしたか! 何とお礼を言ってよいやら」

「いや俺は水と食事を提供しただけで特には・・・。彼女が俺の家に逃げて来てくれたから助けられただけですよ」

「それでもです。彼女は私達の大切な仲間。感謝してもしきれません」

 彼が何者かは分からないが、レナが報告しなかったということはそれなりの理由があるんだろう

 例えば、騒がれるのが嫌でここに隠匿生活をしている賢者、とかかな?

 何にせよこの方に私達も助けられたのは事実

 粗相のないよう気を付けなくてはな



 騎士団長さんと騎士団の皆さん、数は20人か、想定より多かったが、以前保存しておいた猪肉と、このオークの肉も合わせて結構な量だ

 人型魔物のオークを食べるのかって?

 オークはここでは一般的な食材だ

 味は上品な豚肉の味だからかなり人気が高い

 オークキングだとそれこそ高級食材

 この黒いオークはオークヒーローで、特殊個体のため、オークキングよりも市場に出回らない幻の食材らしい

 これから彼らをバーベキューでもてなす

 腕が鳴る

 俺の家まではここからあまり離れていない

 歩いて10分ほどだな

 まぁ森に隠れてるからここからじゃ見えないんだけど

「俺の家、ここから近いのでよかったらこれから食事でもどうですか? 騎士団の方たちが来るって聞いて用意はしてあるんで」

「それは、願ってもない申し出だ。お言葉に甘えさせてもらいたい」

「じゃ、ついてきてください」

 俺は彼らを家まで案内した



 家に着くと用意しておいた机やら椅子を並べた

 想定は10人くらいだったが、その3倍でも大丈夫なくらいに食料はある

 まずは手早く猪とオークをさばいていく

 ん? なんか変な目で見られてる気がするが・・・

 あ、俺のことを料理人だと思ったのかな?

 まぁこんな山奥で料理人がいるなんて不思議に思うだろうな

 自慢じゃないが生活スキル全般は大体取ってレベルを結構上げてあるからな

 このくらいは朝飯前だ

 素早く調理し、あっという間にバーベキューの用意が整った

「さ、食べてくれ」

「これは・・・。手際がいいと言っていいのか・・・。あまりにも速すぎて」

「ん? そうなんですか? まぁ自炊は得意なんで」

 俺は香辛料などで味付けしたバーベキューをふるまい、自慢の野菜焼いて出した

 皆喜んでくれてるようだ

「うまい、こんなうまい野菜は食べたことないぞ! 苦手な野菜すらうますぎる!」

「こっちのオークのお肉なんて蕩けるようなお味ですわ! 最高ですわ!」

 うんうん、やはり人が喜ぶ姿はいい



 この方は、本当に人間、なのか?

 何だあの包丁さばきは

 私の剣の師匠でもあそこまで速く剣を振るうことはできない

 それにここの畑にある作物は、伝説で語られる物ばかり

 やはりこの方は賢者なのだろうか?

 まぁ何はともあれ、彼は危険な人物ではない

 始終観察いたが、人が喜ぶ姿を喜べる人間だ

 何かわけがあってここに暮らしているのだろう

「レナ、彼はもしかして、ここに隠れ住んでいるのかい?」

「ええ、多分そうです。だから報告できなくて、申し訳ありません」

「いや、事情は分かったよ。騎士団の方でも彼のことは内密にしておこう。きっと誰にも知られたくないからここで暮らしているんだろうからね」

「ありがとうございます団長!」

 それにしてもすごい

 彼の料理を食べたとたん全員傷が回復している

 それどころか能力の向上まで

 皆何かおかしいことに気づいてはいるみたいだが、誰も聞かないということは私の意図をくみ取ってくれているのだろう

 よくできた団員たちだ



 あの時わたくしは完全に死を覚悟していましたわ

 いいえ、死ぬつもりでした

 女性であるわたくしがオーク共にどのように扱われるかは分かり切っていること

 だからいざとなったら自身の魔力を暴走させ、自爆するつもりでしたのに・・・

 でも、正直恐ろしかった

 まだ何も成し遂げていないし、恋もしていないのに死にたくはありませんでしたわ

 覚悟はしていたつもりでもやはり、死は恐ろしい

 そんなわたくしたちを、カズマさんは救ってくれましたわ

 それに、彼はとてつもない人物のようですわね

 このわたくし、魔法の申し子と言われたミリア・アレイハードの魔力が、もうこれ以上上がらない思っていた魔力が、1.5倍ほどに膨らんでいますわ

 恐らくこの料理の影響でしょうけど、こんなバフ聞いたことありませんわ

 ほとんど空になっていたわたくしの魔力が全快たうえに量まで増えるんて・・・

 この方きっと大魔法使いか大錬金術師ですわね

 そうでなければ説明がつきませんもの

 これは推しはかる必要がありますわね



 このような場所に人が住んでいるとは思いませんでしたが、そのおかげで私達はこうして生きていられる

 安堵からか、私の足は震えていました

 カズマさんと言う名前でしたか?

 彼の作ったというあの罠、彼はきっと凄腕のシーフかレンジャーに違いないでしょう

 何せあの罠は明らかにおかしいですからね

 私達には反応なかったのに、オークたちには反応していたことから、恐らく魔物に反応しているのでしょう

 この解析の貴公子と言われた私ですらあの罠の能力を全て解析できないなんて、一体どんな構造なのか気になりますが、彼は目立ちたくないご様子

 ならそれとなく尋ねて探ってみますか

「あの、カズマさん。あの罠はどのようにして作成されたものなのでしょう?」

「いやどのようにと言われても、ただその辺にあった丈夫そうな草のツルをみ込んで作ったけですけど」

 なるほど、ただでは教えていただけないようですね

 これは一筋縄はいかなさそうだ



 なんだか騎士の人達にキラキラた目で見られてる気がする

 多分俺の罠がたまたまオークヒーローとかいう魔物を捕獲して、彼ら助かったからなんだろう

 まさかあんな適当に仕掛けて忘れてた罠で騎士団の人達を救えるは思わなかったが、役に立ったならいいか


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