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第5話

 ようやく私達がこの前オークに襲われたところまで来た

「ここか、確かにオークの死体があるな。すでに食い荒らされているようだ」

 すでに亡くなった騎士の人達は私が回収してある

 彼らの遺体はアイテム袋に入れて連れて帰った

 生物は入らないんだけど、亡くなった遺体なら入るのよね

 少しの間狭いだろうけど我慢してもらって、遺体は無事家族の元へ返された

 オークの死体の方は野生動物たちに食べられてもう骨くらいしか残ってない・・・

 調査をしていた二人の騎士、インテリ系の見た目だけど腕っぷしもなかなかに強い男性騎士フィルさんと、伯爵令嬢ながら研究と戦いが好きな金髪縦ロール騎士のミリアちゃんが調査の結果を団長に伝える

 フィルさんは眼鏡をかけてて、髪型は清潔感のある短髪の黒髪で、この見た目で格闘術で戦うスタイル

 頭も良くて強くて、副団長の補佐も務めてる

 ミリアちゃんは私と同じ年齢ながらも、魔法の実力がずば抜けていて、私より先に入団していた先輩

 火魔法が得意で、下位はもちろんのこと、17歳で上位の火魔法も扱える魔法の才能にあふれた人

 背は私よりも低いけど、私よりも、大きい。何がとは言わないけど大きい

 そんな二人の調査は正確無比で、過去の資料からの観点も加えて結果を導き出す

「ふむ、確かに地面にも爪跡がありますね。これはワイバーンよりもはるかに大きな魔物によるものです」

「こちらには焦げ跡がありますわね。かなり高温で焼かれたようですわ。この辺りの地面はガラス化してますもの」

「ではやはりダークドラゴンの可能性が」

「そうとも言い切れませんわ。レッドドラゴンでもこのくらいはできますからね」

 レッドドラゴンも炎のブレスを吐くって聞くけど、こんなに強い炎を吐くんだ

 人間が受けたらひとたまりもないじゃない

「魔力の痕跡も調べましたが、すでに消えていて、この辺りにはいないようです」

「ではどこかへ飛び去ったということか?」

「その可能性が高いと思われますわ」

 その時

「ブモオオオオオオオオオオオオオ!!」

 大量の何かが迫ってくる声が聞こえて来た

「この声は、オークですわ! しかも明らかに威嚇していますわ!」

「数にしておよそ200体ほど、すでに囲まれています!」

「く、迎え撃つぞ! 円陣になって構えろ!」

 うそ、オークは全滅したんじゃ? だってオークキングだって出て来てたし、その死体だってあった

 なんで!?

「団長、あれ! あれは、オークヒーローです! キングすら従えるという危険度B~Aの! オークたちの英雄」

 危険度B

 危険度はその名の通りその魔物の危険度あいを表してる

 通常の角兎なら最低ランクのFで、ここの角兎はE

 最高ランクはSで、Bランクだと上から3番目、つまり、かなり強い

 しかも相手は危険度E~Dのオークたちを率いてる

 それが200体以上

 その中にはオークメイジやオークファイター、オークランサーなどの上位種も・・・

「レナ、君は調査報告をキール副団長へ! 私達が道を切り開く!」

「ここは先輩たちに任せて置きなさいな。このくらい軽くいなして見せますわ!」

「で、でも!」

「いいから行け!」

 みんな新米の私を助けようとあんなことを言ってるんだってすぐわかった

 私はケイジさんにもらった剣を握りしめる

 この剣、なら

「ハァアアアア!!」

 剣でオークを切り裂く

 さっきの猪に比べればこのオークたちの皮膚は硬いわけじゃない

 まるで柔らかい食材を斬ってるときのような手ごたえで、オークの一体が半分になって倒れた

「レナちゃんすご」

 それを皮切りにオークたちとの乱戦になった

「この! てりゃぁ!」

 剣で突き刺すハール団長

「セリャアアアア!!」

 拳で吹っ飛ばすフィルさん

「フレイム! アースブレイク! スターファイア!」

 様々な魔法で応戦するミリアちゃん

「だ、だめですわ! オークメイジに相殺されてしまいますわ! あのオークヒーロー、相当な統率力です!」

 私も剣で応戦してるけどきりがないし、何よりここから抜け出せない

 これじゃあ副団長に助けが出せない

 何人かの団員が倒されて動けなくなってる

 まだ死んではいないみたいだけど、このままじゃ彼らの命はない

 騎士団員たちはそれぞれの得意とする戦術で戦って、オークをいくらか倒してはいるけど、相手の数が多すぎる

 圧倒的な数に押されていく私達

 じり貧だ・・・

 その時オークヒーローが動き出す

 大抵統率者が動き出すときは勝利を確信したとき

 団長の方を見ると、他の団員をかばったのか頭から血を流していた

 オークヒーローはその団長を狙って走って来てる

「団長!」

「く、万事休すか・・・。すまない皆」

「いいえ団長、まだ終わってませんわ。わたくしが最大魔法で活路を見出します! 赤き衣、千の影、いと高き頂にて座す金環の火の主よ、わが願いに答え魔を討ち賜え、ヘブンフレイム!」

 黒い炎が吹きあがってオークたちが灰になって、一筋の道ができた

「みなさま、お逃げ、下さい」

 魔力がきれて倒れるミリアちゃん

「ミリア!」

 団長が彼女を抱えて走る

 私達もそれに続いた

 だけど

「嘘、でしょう」

 道の向こうに見えるのは、さらなるオークの軍勢

 その数は先ほどと同じかそれ以上

「これは、だめですね団長」

「せめてお前たちだけでも逃がしたかったが・・・。自害を、認める。女性陣は特にだ・・・。頼りない団長ですまない」

「いえ、団長。ここの誰もあなたを頼りないなんて思っていません」

 私含めて全員がうなづく

 ここからはオークによる蹂躙と、私達への凌辱が待つのみ

 なら、いっそここで自分の生を終わらせる

 全員が刃物を首元に当てたそのとき、オークヒーローの悲鳴が上がった

「なに!?」

 驚いてそちら側を見ると、オークヒーローが縄に捕らえられているのが見えた

 え? 一体どういうこと?

「グギギギギ! ギャアオオオオ!!」

 もがけばもがくほど縄が体に食い込むオークヒーロー

「罠か? なぜあんなところに」

 オークヒーローだけじゃなくて、その周りにいたオークたちもいくつか仕掛けてあった罠にかかってる

 逃げ道から来ていたオークも何十匹かが罠にかかってた

 やがて罠はだんだんと閉まって行って、オークヒーロー含めて数十体のオークが絶命した

 オークヒーローが絶命したことで統率が取れなくなったのか、オークたちは途端に右往左往し始めて、その内逃げて行ってしまった

「助かった、のか?」

「そのようです団長。しかしこの罠一体だれが? 先ほどこの辺りを調査したときには痕跡すらなかったはずなのに。それに私達には反応しなかったようですし」

 不思議な罠に命を救われた私達

 でも私にはわかってる

 この罠はきっとカズマさんの設置したものだ


 遡ること数日前

「よし、初めて作ったけどいい感じだな。ほかにもいくつか仕掛けておくか」

 カズマは様々な場所に罠を張り、そのいくつかの存在を忘れていた

「くふふ、おっと変な笑いが。まあでもこれで労せずして獲物が得られるってもんだ。騎士団の人達が来るって言うし、盛大にバーベキューだな。仕込みは、畑で取れた香辛料をふんだんに使うか」

 彼は自分が作った罠が特殊な効果を得ていることに全く気付いていない

 そしてカズマは鼻歌交じりに、話し相手となる騎士団の歓迎準備を進めていた

 そう、彼は逃げる云々よりも久しぶりの大勢の人間と話せることを喜んでいた

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