街に戻った私は、騎士団の詰め所へ戻った
「おお、無事だったかレナ! オーク共に連れ去られたものだと・・・。今救出のための対策を立てていたところだ」
「私もまさか無事戻れるとは思っても見ませんでしたが、通りすがりの冒険者の方が助けてくれたんです。その方は名前も告げずに去って行きました」
「おおそうか、で、オークたちはその方が?」
「いえ、それが、私が戻った時にはオークキング含め全滅していて、傷痕から大きな魔物がたまたま来て襲ったようなんです」
「確かにあのあたりなら、ワイバーンやレッドベアが出てもおかしくないな」
ワイバーンは亜竜で、竜ほど強くないけど、複数で街を世ま滅ぼすこともある危険な魔物
レッドベアは大型の熊型魔物で、その毛皮は比の魔法に耐性があるうえに爪で切り裂かれると傷口が燃えるという性質を持ってる
「傷口が焼けていなかったのでレッドベアの線は薄いかと」
「ふむ、一応現地に調査隊を派遣しておこう。その魔物はもういなかったんだな?」
「はい、探知も使いましたがどこにも見当たりませんでした」
「だとするとワイバーンの可能性が高いか・・・」
一応あの人のことは言わないでおこう
だって、きっと、あの人はあそこで平和に暮らしたいはずだから
調査隊が出発してから数時間後
帰ってきた調査隊が報告にやって来た
「団長、報告です・・・。オークキングの傷を見るに、大型の竜の可能性が出てきました」
「なっ!?」
誓いの剣団長のハール・エート
剣術、槍術の達人で、人々を助けるのに命を燃やすような人なので、あちこちに傷を作ってる
「竜だって、しかも大型の・・・。過去に目撃例は?」
「いえありません。ワイバーンなら幾度となく目撃されているのですが、大型竜となると、さすがに。あの森は魔物が強いとはいえ、通常目撃される一般的な魔物と比べて、という範疇ですので、大型竜は生息していないと思われます」
確かに、あの森の魔物はかなり強いけど、大型竜がいたなんて話は聞かない
もしかしたらどこかからエサを求めて飛来したのかも
はっ
となると、竜の調査が入ってあの人の平和が脅かされるかも!
「あ、あの団長! その竜の調査、私に任せてもらえないでしょうか?」
「レナ、これはかなり危険な調査になる。ダットかグリムに任せる」
「団長、私は探索に適したスキルを持っています。それに隠密スキルも。危険は承知しています。あの時私は役に立てなかった。だから、団長の役に立ちたくて」
「気持ちは嬉しいが、やはり危険だ」
ちがうのおおおお! そうじゃなくてあの人の聖域を荒らしてほしくないの!って言えたらいいんだけど、あの人のことを伝えずに調査隊を向かわせないようにするには
「まあ団長、レナもそろそろ新米からステップアップしてもいいだろ。何事も経験だって団長も言ってるじゃないすか。それに調査だけならすぐ逃げればいいんだし、オークの群れからも逃げきれたんだ。大丈夫だろ」
ナイス、キーリ副団長!
「・・・、そうだな。レナ、この調査は危険だ。危ないと判断したらすぐ逃げること、それが条件だ」
「分かりました! 必ず生きて戻ってきます」
調査は大体一人か二人で行なわれるんだけど、今回は一人で挑ませてもらうわ
とにかくあの人にこの事を伝えないと!
すぐに準備して、私はあの人のいる森の奥へと走った
ふぅ、今日もいい畑仕事ができた
今日はキャベツもとれたし、川魚なのにアジのような魚が取れたからアジフライでも作ろうか
なんて思っていると扉が叩かれた
「押し売りお断り、新聞は間に合ってます」
とまあ前世での決まり文句のようなものを喋りながら扉を開けると、あの時の少女が立っていた
「あの! 無事ですか? この辺りで竜が出たかもしれなくて、その、危険を知らせに来ました!」
騎士見習いの少女レナ、だったかな?
息切れを起こしてることから走って来たのだろう
それにしても竜?
ワイバーンならしょっちゅう見るけど、そんな化け物、ここで見たことないんだけどな
ひとまずレナを招き入れ、話を聞くことにした
丁度ご飯を作っていた所なので彼女も夕飯に招く
「うわぁああ、おいしそう」
にっこにこだな
結構食い意地が張ってるのかもしれない
「それで、竜が出たって話だけど」
「はい、いえ、と言うのは建前で、その、あいえ、竜が出たというのは多分本当なんですけど、本題はそこじゃなくて」
何だか要領を得ないな
「カズマさんって、ここで隠れ住んでるんですよね?」
「ん、あ、ああそうだな」
「それで、竜が出たかもしれないことでこの森に大規模な調査が入るかもしれないんです。私はその先遣みたいなもので、竜の痕跡がないかを調べに来たんですが、報告後は恐らく」
「調査隊が来るということか」
「はい・・・」
確かにのんびりと暮らしたい俺はここをあまり荒らされたくない
しかし
「でも別に俺が逃げる必要はないんじゃないか? 確かに竜は怖いが逃げ足には自信があるし、いざとなればここを引き払って別のとこで新しい家を建てればいい。まあここは気に入ってるからあまり離れたくはないが、竜なんて俺じゃ倒せないからな。もしもの時は騎士団が来てくれるんだろ?」
「それは確かにそうですが・・・」
竜は怖い。ホブゴブリンやオークにすら遭遇すればすぐに逃げる俺だ
まあそのおかげで逃げ足は一級品なんだけどな
「ともかく一度私は報告に戻るので、逃げる準備を」
「わかった、準備はしておく」
「ありがとうございます! 明日にはたぶん調査団が来ると思いますのでご準備を」
騎士団ってのは大変だな
こんな俺でも助けないといけないんだから
夕食を終え、レナが帰ったころに早速準備を始めた
生活スキル系統は結構鍛えてある
実は数年前に手に入れた面白いスキル、空間収納がある
ほとんど無尽蔵ともいえる要領があるため、移動の時は結構重宝していた
まあ最近は特に貯蔵しておく必要もなかったから中には何も入ってないんだが
「さてと、始めるか」
俺はまず外に出た
続いて畑を丸々収納
道具小屋やらなにやら、全てを収納してはいおわり
家も収納できるが、それは竜が来た時だな
こうして移動準備を終えた俺は、家に入って眠りについた