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第109話 りおくん、おしろにつれってちゃうの?

(おっと……)


 感傷にふけりかけた俺は、そっと仏壇の前から立ち上がった。


「瑛斗先輩、すみません。それじゃあ、すぐに戻るんで」


「ああ。もう少ししたら二人に手を洗わせて、ダイニングテーブルへ座らせておくから、理央は急がなくてかまわないぞ」


「ありがとうございます」


(なんか、初めて双子とうちで遊んでくれていたときは、奮闘する新米お父さんみたいだなって微笑ましかったけど、今日はすごく頼もしく見えるなー)


 そんなことを考えながら、リビングのドア近くに置いていたスクールバックを肩にかけると、俺は自分の部屋へ向かおうとした。


「あ、理央」


「はい?」


 急に瑛斗先輩に呼び止められ、俺は振り向く。


 双子に挟まれた状態の瑛斗先輩と目が合うと、にっこりと笑われた。


「愛してるぞ」


「……。えっ……? 今なんて……?」


 自分の耳を疑って、俺は思わず聞き直してしまった。


 だが、瑛斗先輩のすぐそばで聞いていた双子は、嬉しそうに立ち上がった。


「やっぱり、りおくん、おひめさまだったんだー」


「おひめさまー!」


「そうだ。理央は私にとって、かけがえのない姫だ」


「ちょ、ちょっと瑛斗先輩! ストップ、ストップ!」


 俺は必死に制止させようとするが、俺の声なんて聞こえてないのか、聞こえているうえで無視をしているのか、話は俺を置いてきぼりの状態でどんどん勝手に進んでいった。


「じゃあ、えいとおうじ。りおくん、おしろにつれってちゃうの?」


「えー! りおくん、いなくなっちゃうの?」


 飛び跳ねていた双子が急に落ち込むと、瑛斗先輩は双子の頭をそっと撫でた。


「いや、大丈夫だ。私は次男だから、私がここに来れば理央も家を離れずに済む。それなら、淋しくないだろう?」


「うん」


「よかったー」


 今度は安心して、甘えるように瑛斗先輩へ抱きつく双子を見て、俺は思いっきり叫んだ。


「よ、よ、よくない! お願いですから、真央と玲央に変なこと教えないでください!」


 首を必死に横に振っていると、いつのまにか和兄が俺のすぐそばに立っていた。


「なあ、理央。知ってるか?」


 和兄が急に肩を組んできて俺のことを引き寄せると、俺の耳元で囁いてきた。


「月宮先輩、教室で育児本読んでいたらしいぞ。新米パパのってやつ」


「う、嘘……」


「しかも『奥さんへの感謝を忘れず、愛を伝えること』ってとこに、マーカーしてたってさ」

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