レンさんはリユニオン始動から不動のセンターでありながら、みんなをまとめるリーダーも勤め、いつも端っこにいる俺にも声をかけてくれる、お兄さん的存在だ。
スパイラルパーマに、イメージカラーの赤を少し入れている派手な見た目は、アクロバットな動きが得意なレンさんにぴったりだ。
歌やダンスが上手いのはもちろん、どんなときも明るく笑顔で、ファンを楽しませることを一番に考えている。
「リオン。もしかして、調子が悪いんですか? もし悪いなら、レンには近づかないでくれますか?」
「サクヤ!」
レンさんに怒鳴られたのは、サブリーダーのサクヤさんだ。
少し長めの髪はインナーカラーにイメージカラーである青を入れて、グループ内で一番背が高く、どんなときもレンさんファーストな人だ。
そんな二人が手にペットボトルの飲み物を持って、俺に近づいてきた。
「いえ、調子が悪いわけでは……。ちょっと、考え事を……」
「なんだー? 考え事って。リオンの悩みなら、オレはちゃんと聞くぞ! オレに話してみろ!」
レンさんは俺の隣へ胡坐をかいて座ると、そのすぐ隣にサクヤさんも座り、俺たち三人は鏡の壁に沿って横一列で並ぶかたちになった。
「えっと、その……。ちょっと、格の違いを感じたというか……」
「格の違い? ソイツはオレよりもいいパフォーマンスする奴だったのか? 本当にそんな奴がいるなら、すぐにオレがぶっ倒してやるけどな」
レンさんは急にボクシングの構えをすると、スパークリングのマネを床に座ったまま始めた。
「物騒なことはやめてください、レン。ケガをしたらどうするんですか?」
「わーかってるよ。冗談だって」
サクヤさんに注意され、レンさんは口をいじけたように尖らせると、ファイティングポーズをしていた腕を下ろし、肩を軽く竦めた。
(お二人とも、本当に仲がいいんだな)
以前、レンさんとサクヤさんは同じ大学に通っていて、一緒に暮らしていると聞いた。
移動や休憩も常に一緒の二人だが、サクヤさんがレンさんの後ろをずっとついてきていると表現したほうが、しっくりくる気がする。
「それで……。リオンは怖気づいて、そんなとこで縮こまっていたんですか?」
「……!」
「おまっ……! サクヤ! 言葉を選べ!」
レンさんは急に立ち上がると、サクヤさんを見下ろす形で睨みつけた。
「だって、回りくどく聞いたほうが時間の無駄でしょ。遠回しに聞いてなんの意味が? だいたいそんな悩む暇があるなら、レンのために……」
「だから、おまえのそういうところが!」
レンさんはサクヤさんに詰め寄ったため、俺は慌ててレンさんのTシャツの裾を引っ張った。