リオンの口調で俺は瑛斗先輩に尋ねると、信じられないと言った様子で瑛斗先輩は息をのみ、必死に首を何度も横に振った。
(かわいいって……この前、ステージの上からも思ったな……)
俺が向けたファンサへ嬉しそうに、オレンジのペンライトとお手製うちわを必死に振りながら目を輝かせる瑛斗先輩を思い出すと、今度は我慢できずに笑みが零れてしまった。
「……!」
俺が笑ったことで瑛斗先輩の碧い目はさらに輝きを増して、喉を鳴らして息をのむのを感じた。
(ああ。この碧くて綺麗な瞳には、今、俺しか映ってないんだろうな……)
そう思いながら、俺は膝を少しだけ屈ませて、瑛斗先輩の顔にそっと手の指先を近づけた。
瑛斗先輩の耳たぶには、瑛斗先輩の碧い目の色によく似た、小さな宝石がついた凝ったデザインのピアスが輝いていた。
「触れるよ」
ライトに照らさせて碧く光るピアスに、俺は指先をそっと這わし、瑛斗先輩の耳たぶの形を確かめるように優しく触れて指先を止めた。
「っ……ぁ……」
頬をさらに赤く染め、歓喜で唇を振るわせる瑛斗先輩の姿が俺の目に映ると、俺の心は何かでどんどん満たされていく。
ストロボの眩い光と、カメラのシャッター音は耳に届いていたが、それは不思議とどこか遠くに感じられた。
カメラマンさんはもちろん、たくさんのスタッフさんが俺たちをじっと見つめているはずなのに、ストロボの光が俺たちを包みこむ度、今この場所には俺と瑛斗先輩しかいないと錯覚してしまう。
「オッケー! よかったよ! すぐにチェックして!」
カメラマンさんのオーケーの合図で、撮影現場は止まっていた時が動き出したかのように、スタッフさんたちが一斉に息を吐き出した。
すると、一人のスタッフさんがゆっくりと拍手をすると、まるで広がっていくように、周りのスタッフさんも俺たちに向けて拍手を送ってくれた。
その中に美玲さんの姿を見つけると、俺は無事に終わったんだと、安堵の溜め息を漏らした。
俺は慌てて、拍手をしてくれているスタッフさんに向かって会釈をするが、隣にいる瑛斗先輩は、まだ膝をついたまま動けずにいた。
(まあ、たまには……。こうやって、俺が反撃するのもアリだよね。いつもされてばっかりだし)
お姫様抱っこに、おでこにキス。
いつもこっちが驚かされてばかりじゃ、不公平だ。
俺は瑛斗先輩に向かって満面の笑みを浮かべると、ウインクをしながら、指でピストルの形を作った。
そして、瑛斗先輩の胸を打ち抜く仕草をした。
「バーン……」
俺はいつもの、瑛斗先輩にお決まりのファンサを向けた。