「あ、そうそう。ちなみに理央君の話は、送迎車にチャイルドシートを取り付けたいって言い出したときに聞いたの。大切な人の双子の送迎に、どうしても必要なんだって急に言い出して……」
(大切な人……? リオンじゃなくて、俺のことを……)
瑛斗先輩がそんなふうに俺のことを美玲さん話してくれたことが、驚きと同時に胸の奥を温かい気持ちにさせた。
「あのときは、瑛斗に隠し子でもいたのかと心配になったわ……」
「そ、その件に関しては本当にご迷惑を……」
俺は背筋を伸ばして慌てて美玲さんに何度も頭を下げると、美玲さんは笑みを零した。
「ねえ、理央くん。私がどうして、理央くんがリユニオンのリオンだって気付いたのか、気にならない?」
「それは……気になります」
「ふふっ。答えは簡単よ。だって、瑛斗が私にリオンくんの話をするときと、理央くんの話をしてくれたときと、目の輝きが一緒だったんだもの」
(それって……)
その話を聞いて、俺の胸の奥が熱くなるのを感じた。
(瑛斗先輩の中で、俺とリオンが同等になってる……? いや、そんなわけ……。てか、そんなのどっちでもいいだろ……。でも、大切な人って……)
頭の中で考えがグルグルしながらも、口元が自然とにやけそうになるの感じ、俺は慌てて手の甲を口元に押し当てた。
「二人は不思議な関係ね。本当は推しとファンでありながらも、親しい友人でもある……。瑛斗にとって、どちらも大切な人。こういう場合は、一石二鳥って言えばいいのかしら?」
「一石二鳥……。ふふっ、なんだかお得な感じがして、確かにいいですね」
美玲さんに一石二鳥だと言われて、さっきまで俺の胸でつかえていたものが、スッとなくなった気がした。
今まで、瑛斗先輩が必要としているものはリオンだけだと思っていた。
だから俺、海棠理央という存在は、瑛斗先輩にとって必要ないと思っていた。
それは俺が勝手に、リオンと海棠理央を隔てて考えていたからだ。
けど、海棠理央も瑛斗先輩にとって大切な人だと言ってもらえて、どちらも俺なんだと思え、自分で自分を認めてあげられた気がした。
「ねえ、理央くん。私はあなたにしか瑛斗を輝かせることが……あの目をさせることができないと思ってる。だから協力して欲しいの」
「協力……。その……具体的になにをすれば……」
「簡単よ。瑛斗の目の前に立ってくれればいいの。でも、せっかくなら……瑛斗を思いっきり驚かせてやりましょ」