昨日と同じように月宮先輩の横に座り、双子と向かい合って座るかたちになった俺は、双子のチャイルドシートをまじまじと観察してしまう。
(自転車用のチャイルドシートの値段にも驚いたくらいなのに、こんな高級車のチャイルドシートって……)
お金のことばっかり気にするのもどうかと思うが、俺はごくごく普通の一般庶民だ。
しかも、月宮先輩と違って少々生活が苦しいのが本音なので、値段を想像しただけで背筋が冷たくなるのは当たり前だと思う。
「月宮先輩……。あの……チャイルドシートのお金は……」
「お金……? ああ、私が勝手にしたことだ。海棠からお金をとろうとは思っていないぞ」
「いや、そうは言っても……」
請求されても、それはもちろん困るのだが、双子のために準備されたものへ何もしないというのも、こちらの気が引ける。
「海棠の家族は、私の家族当然だ。それに、送ると勝手に言い出して、こちらがセッティングしたものだ。海棠が払う理由はないだろ?」
「そう言われればそうなんですけど……。でも……。って、んっ? 家族……?」
「ほら。もう、出発するぞ」
「しゅぱーつ!」
「しんこー!」
(まあ、月宮先輩は御曹司なわけだし、俺たち庶民とは感覚が違うって割り切らないとか……)
俺はそう自分に言い聞かせ、月宮先輩の好意をありがたく受け取ることにした。
車が動き出すと、双子はいつも以上にテンションが上がった様子だった。
「ねー、あれみてー!」
「みてみてー!」
チャイルドシートのおかげで視界が高くなり、窓から見える景色が変わったせいか、昨日以上に大声で、双子は何か見つけるたびに俺たちに報告してきた。
だが、外の景色にはすぐに飽きたみたいで、向かいに座る月宮先輩へ、双子は必死に話しかけ始めた。
話しかけられて受け答えをする月宮先輩の表情は柔らかく、昨日よりも双子との距離が縮まっていたように俺の目には映った。
「えいとおうじ。つきみやって、みょうじなの?」
「そうだ」
「ふーん……。ねー、ねー、りおくん」
「ん? どうした真央?」
「どうして、えいとおうじを、なまえでよばないの?」
「えっ……」
真央がいきなり言い出した質問に、俺は頭が真っ白になって返事に困ってしまう。
「だって、なかよしさんは、なまえでよぶって」
「そうだよー。ほいくえんでいってたよー」
「ねー」
双子は顔を見合わせると、不思議そうに俺と月宮先輩の顔を見比べた。