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第27話 なかよしさんはなまえで

昨日と同じように月宮先輩の横に座り、双子と向かい合って座るかたちになった俺は、双子のチャイルドシートをまじまじと観察してしまう。


(自転車用のチャイルドシートの値段にも驚いたくらいなのに、こんな高級車のチャイルドシートって……)


お金のことばっかり気にするのもどうかと思うが、俺はごくごく普通の一般庶民だ。


しかも、月宮先輩と違って少々生活が苦しいのが本音なので、値段を想像しただけで背筋が冷たくなるのは当たり前だと思う。


「月宮先輩……。あの……チャイルドシートのお金は……」


「お金……? ああ、私が勝手にしたことだ。海棠からお金をとろうとは思っていないぞ」


「いや、そうは言っても……」


請求されても、それはもちろん困るのだが、双子のために準備されたものへ何もしないというのも、こちらの気が引ける。


「海棠の家族は、私の家族当然だ。それに、送ると勝手に言い出して、こちらがセッティングしたものだ。海棠が払う理由はないだろ?」


「そう言われればそうなんですけど……。でも……。って、んっ? 家族……?」


「ほら。もう、出発するぞ」


「しゅぱーつ!」


「しんこー!」


(まあ、月宮先輩は御曹司なわけだし、俺たち庶民とは感覚が違うって割り切らないとか……)


俺はそう自分に言い聞かせ、月宮先輩の好意をありがたく受け取ることにした。


車が動き出すと、双子はいつも以上にテンションが上がった様子だった。


「ねー、あれみてー!」


「みてみてー!」


チャイルドシートのおかげで視界が高くなり、窓から見える景色が変わったせいか、昨日以上に大声で、双子は何か見つけるたびに俺たちに報告してきた。


だが、外の景色にはすぐに飽きたみたいで、向かいに座る月宮先輩へ、双子は必死に話しかけ始めた。


話しかけられて受け答えをする月宮先輩の表情は柔らかく、昨日よりも双子との距離が縮まっていたように俺の目には映った。


「えいとおうじ。つきみやって、みょうじなの?」


「そうだ」


「ふーん……。ねー、ねー、りおくん」


「ん? どうした真央?」


「どうして、えいとおうじを、なまえでよばないの?」


「えっ……」


真央がいきなり言い出した質問に、俺は頭が真っ白になって返事に困ってしまう。


「だって、なかよしさんは、なまえでよぶって」


「そうだよー。ほいくえんでいってたよー」


「ねー」


双子は顔を見合わせると、不思議そうに俺と月宮先輩の顔を見比べた。

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