(うわ、サラサラだ)
光沢のある金色の髪は子供の毛のように指触りが良く、俺は珍しい動物を撫でている気分になり、そのまま頭を撫で続けてしまう。
そうしていると、月宮先輩は子供のように無邪気に嬉しそうに笑った。
「月宮先輩……」
俺は思わず、月宮先輩の屈託のない、純粋で子供のような笑みに見惚れてしまう。
「あー、ずるい! えいとおうじが、りおくんにいいこいいこされてるー」
「ずるいー」
「こ、これは、べつに……」
俺は動揺して、慌てて月宮先輩の頭から手を離すと、母へのただいまの挨拶を終えた双子が駆け寄ってきた。
すると、月宮先輩をまるで取り合うように、月宮先輩の両手を双子でそれぞれ引っ張りあう。
「ねー、えいとおうじー。れお、おえかきしたい」
「ずるいー。えいとおうじは、まおとおりがみするのー」
「コラッ、お部屋に荷物置いてくるのが先だろ。月宮先輩は逃げないから、さっさといきなさい」
「はーい……」
双子は渋々返事をすると、すぐにキャーキャー言いながら、自分たちの部屋に向かって競争するように階段を駆け上がっていった。
「すみません、月宮先輩。あの……本当にいいんですか? 玲央も真央も、まだ元気いっぱいだから、きっと先輩疲れてしまいますよ?」
「大丈夫だ。それより……その……。私もご挨拶をしていいか? お母様に……」
「えっ……? あっ……」
リビングの奥に置かれている仏壇の存在に月宮先輩が気づいたのだと理解した俺は、戸惑ってしまう。
(母さんが亡くなって、家に誰かが訪ねてくることもなかったから、気にもしなかった……)
仏壇の存在を隠していたわけではないが、どこかで知られたくないという気持ちが俺の中にあったのかもしれない。
それは決して後ろめたさではなく、同情や哀れみという感情を向けられたくなかったからだ。
だが、今更月宮先輩の申し出を断るわけにもいかず、俺は頷くことしかできなかった。
「ありがとう」
そう言って、月宮先輩は仏壇へと向かっていった。