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絶世の美少年は最悪の鬼に守られている
星琴ちさき
BLファンタジーBL
2024年07月11日
公開日
136,418文字
連載中
*毎週金曜日に定期更新あり*祝日に更新あり*
真っすぐな美少年と世界の秘密を抱える悪鬼が紡ぐ、美しくて楽しい中華BLファンタジー!
「ずっと、ずっと昔から、あなただけを見つめていた……」
―――
幸一は裕福な家庭に生まれ、絶世の美貌と純粋の心を持つ少年。
しかし、その美貌のせいで姉や継母にいじめられ、
お金にしか興味のない父にも無視しされていた。
12歳の誕生日、冷たい家族に我慢できない幸一は家出して、仙道の門派に入った。
そこで、幸一は優しい兄弟子の修良に出会い、修良の指導で仙道の達人になった。
幸一が知らなかったのは、修良の正体は前世で彼に救われた滅世の悪鬼、
自分の転生も修良の計らいだった。
18歳の誕生日、幸一の父は倒産で自殺した。継母は負債返還のために、
幸一の戸籍文書を大量に偽造し、美貌で有名な幸一をあちこち売りつける。
買い手たちは大体欲の深い人間か悪党、妖怪までいた。
執事から継母の悪行を知った幸一は激怒し、修良と一緒に戸籍文書の回収と悪党の成敗の旅に出た。

一 滅世の鬼

「なぜまだ生きている!?」

化け物は罵声の中で目を覚ませた。

「やはり、破滅の運命は変えられないのか……」

そうだ……人々は破滅の運命を変えるために彼をこの祭壇に連れて、「神の幹」と呼ばれる柱に縛った。

「ああ恐ろしい、この世界は極悪の鬼に滅ぼされる……」

そう、彼はこの世界を滅ぼす鬼だから。

いつから鬼になったのか彼はもう覚えていない。

生まれてからだろう……

少なくとも、人間だった記憶はない。

「そんなことない!滅世の鬼なんて所詮伝説だ!我々人間の運命は我々が決める!」

それは正しい。

彼が「鬼」としてこの世に現れたのは、この世界の人間が決めたこと。

彼の元の名は「天良鬼てんりょうき」、この世界の人々の心の化身だ。

人々は善良でいれば、彼も純白で美しい姿でいる。

人々は良心を失い、世が邪悪に満ちた時、彼は滅世の鬼と化し、世界を滅ぼす。

――そういう伝説だったが、いつの間にか、

「極悪の鬼が現れ、世界を滅ぼす」という都合のよい部分だけが残された。

「死ね!死ね!」

「お願いだから早く死んで!!」

「早く死ね!」

「お前が死ねば世界は助かる!!」

「みんなのために死ね!!!」

激怒のせいか恐怖のせいか、震える声で必死に叫ぶ人がいる。

小石が次々飛んでくるが、彼が縛られた高さにほとんど届かなかった。

人々が狂犬みたいに吠えるのは無理もない。

人間は彼をこの神の幹に縛られてから、もう1000日も超えた。

断食、火刑、斬殺、毒殺、雷撃、溺死......あらゆる処刑法を試されても、彼を殺せなかった。

しかしその一方、

地震が頻繁になっていく

洪水の高さが増していく

火山の噴火が猛烈になっていく

乾季が続き、戦争が勃発し、疫病が広まる……

全ての災厄は、極悪の鬼を殺せなかったことによる天罰だと人間は信じている。

天良鬼は密かに笑った。

人間の悪意が増える度に、彼の悪鬼化が進む。

肌が暴龍のように固くなり、鋼よりも頑丈な角がまた新しく生える。

長くて鋭いつま先から毒の霧が滲み出る出る。

喉から出たのは吐息ではなく、烈火だ。

翼が起こした風は千の刃となり、大地に傷跡を刻む。

間もなく、彼は身も心も悪鬼になる。

この世を滅ぼす。

それは彼が生まれた唯一の意義だと、何処かからの声がそう言っている。

悪鬼の力が満ちた瞬間、一人の少年は祭壇を登り、柱の元まできた。

少年はゆっくりと鬼を見上げる。

「僕のお姉ちゃんが殺された。お姉ちゃんの友達は、お姉ちゃんが今日稼いだ饅頭を奪うために、お姉ちゃんを河に突き落とした」

「みんな、鬼のせいだと言っているけど、僕はそう思ない」

「悪いのは、彼じゃないかも」


「何を言っている!伝説はそう伝わってる!」

さっそく、反論する声があった。

「伝説は間違っていたら?」

「神託はそう言ってた!」

「神はもうこの世界を捨てたって、みんないつも言っているよ」

「神を信じないとは!あんた、鬼の子なのか!」

少年は鬼を庇うように両手を広げる。

祭壇の下にいるすべての人に向けて、大声で叫んだ。

「彼より、みんなのほうが怖いよ!みんなのほうが鬼だよ!!」

その時、少年の体から一粒の白い光が浮かべ、鬼の胸に飛び込んだ。

(なるほど、この世界の最後の良心ってことか……)

鬼は苦笑した。

(しかし、もう遅いわぁ……)

鬼はもう完全に目覚めた。

たくましい四肢を広げ、腰を伸ばす。

枯れた声の雄叫びとともに、彼の全身から黒色の稲妻が炸裂し、神の幹を一瞬にして粉々にした。

祭壇を飛び出す前に、鬼は一瞬少年の真上に止まり、柱の残骸を飛ばした。

そして、少年の瞳に見つめながら、世界を滅ぼした。

すべてが静寂に帰す前に、鬼は一点の純白の光を胸に抱きしめて、新しく生まれた天地へ旅立った。

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