目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

接続話 それは、闇夜から繋がる悪意


 それは、式典の行われる前夜の事。


『やっぱり、予定は変わらないようねぇ……ウフフ!』


 聖都のとある宿の一室、特別に設えられた極上のソファーにしなだれかかる女はそう呟いた。


 闇、黒、影、夜。敢えてその女を一言で表すならその辺りだろうか? どこか退廃的な雰囲気を醸し出し、その髪と身に纏うゆったりとした衣は濃厚な黒。


 肌はややあざ黒く、瞳は血のような紅色。魔性の色気と言うべきものを全身から醸し出すその女は、指先で長い煙管を弄びながら煙を燻らせて笑みを浮かべる。


 キイっ。


 そんな小さく扉が開く音に女がそちらを見ると、そこには一人の黒いローブを纏ったフードの人物が立っていた。ここにヒヨリか開斗が居れば、この人物こそが先日自分達を夜中襲撃した人物だと分かっただろう。


『お帰りなさい。やっとみたいね』

「うん。やっと神族の圧を抵抗レジスト出来るようになった。やはりこの前直接受けた事がきっかけみたい」


 確かめるように何度も手を握っては開き、少女はスッと部屋に入って近くの椅子に腰かける。


『良いわぁ。ワタシからやっても良かったけど、つい加減を誤って大怪我させては治すのが面倒だし。その点ブライトは自分で言うよりヒトに甘いもの。玩具を壊さないように加減するのが得意なのよ。そういう所はマメなんだから……フフっ!』

「……楽しそうね」

『そう? そう見えるの? ウフフ……そうかもね。サイッッアクに楽しいわ」


 少女の問いに、女はどこか頬を上気させながら両手を顔に当てて返した。


『ああっ。目の前で折角お披露目する自分のお気に入りの玩具をぐちゃぐちゃに壊してあげたら、! 怒り狂う? それとも泣き叫ぶ? 或いは……フフっ! 無視するというならそれはそれで結構! なら本筋通りに手を進めるだけよ』


 そう語る女の姿は、まるで好いた男との逢瀬を楽しみにする少女のようで。


「……どうでも良い」


 その様子を見てすぐに興味を失ったのか、フードの少女は自身の武器である黒い刃を並べて手入れを始める。すると、


『ねぇ。アナタは楽しみじゃないの? 目論見通りに行けば、明日はアナタの悲願への第一歩を踏み出す日になるわ。心弾まないの?』

「いいえ。これは楽しむものでもないただの過程。それに悲願でも何でもなく、わたしが成さねばならないただの義務。……そう」


 女が問いを返すと、少女は淡々と刃を磨きながら答える。



。世界を乱す神族を全てこの手で討つ。ただそれだけの事。それは



 だが、フードの奥から見える少女の瞳には、感情の乗らない口調とは裏腹にどろりとした憎悪が浮かんでいた。


 それを感じ取ったのか、女はニチャリという音のふさわしい愉悦の笑みを浮かべる。


『結構。全てを義務とうたいながら、その根底にあるのはどこまで行っても私情の入り混じった憎悪。良いわぁ。実に良い! アナタがその憎悪を忘れない限り、ワタシとの契約を守り続ける限り、この七天神の一柱ジャニスが認めましょう! 





 そして、時は流れて式典の日。


「「「わああああっ!」」」


 少女は熱狂する市民達の中ではなく、広場から少し離れた建物の屋根に立っていた。


『準備は良い?』

「ええ」


 ジャニスの確認に、少女は簡潔にそう答える。


『タイミングはこちらで指示するわ。アナタはただ……フフっ。まっすぐ飛び込んで標的を仕留めればそれで良い』


 こうして、一柱の神族と一人の少女は機を窺う。そう






 ブライトが認定したユーノ勇者する機を。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?