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第84話 なんてこったな裏話


 時は少し遡り、大晦日。煉が湊の手を引いてファミレスを出ていき、落ち込む樹を仁が揶揄うように慰めた後の話。



「俺、樹ならイケそうなんだよね。てか、いっつもツラそうな顔してあの2人のコト見てる樹をさ、そろそろ放っとけないや····」

「え··、いや、待てよ、そういうのいいから、揶揄うなって······」


 仁は、樹の腰に手を回しグイッと引き寄せた。そして、唇が触れそうなほど顔を寄せ、いつもより少し低い声で言葉を置いてゆく。


「揶揄ってないよ。俺、樹のコト好きだけどさ、友達としてなのか男としてなのか分かんなくなっちゃった」


 普段の仁からは想像もできないくらいの雄々しさに、戸惑いたじろぐ樹。いつも通りの飄々とした話し方なのに、トーンの所為かフザけているように聞こえないのだから、樹が真に受けてしまうのも致し方ない。


 仁と樹の距離が近づくにつれ、周囲からの視線が2人に向いてゆく。暫くしてそれに気づいた樹。けれど、グイグイ迫ってくる仁を樹はいなせず、まんまと傷心につけ込まれる。

 仁の圧に負けた樹は、とりあえず店を出ようと仁を押し返す。仁はあっさりと退き、半ば押し倒しかけていた樹の手を引いて起こした。

 樹に急かされ、そそくさと店を出る2人。周囲の視線を気にしているのは樹だけで、仁はケロッとして店を出るや否や樹の手を握って歩き始めた。


「ちょ、おい! 手離せよ」

「やだ」

「やだじゃねぇよ! 俺もう大丈夫だから。な?」


 ピタッと立ち止まり、クルッと振り返る仁。樹よりも少し背の高い仁は、若干前傾姿勢な樹の顔を上から見下ろす。

 目や鼻を赤くして、今にも泣きだしてしまいそうな樹。店内にいる時からこうなのだから、決して寒さの所為ではない。大丈夫だなんて、強がりでしかない事は一目瞭然だ。

 そんな樹の顔をまじまじと見て、仁は冷たく言い放つ。


「そんな顔して何が大丈夫だよ。アイツらの邪魔したいからか知らないけどヘコむの分かってて一緒に居たりさ、樹バカすぎ。言ったっしょ? 2人の所為でどんどん傷ついていく樹を放っとけないの。いいから黙ってついて来いよ」


 そう言って、仁は樹の手を引いて歩き始めた。

 スポーツをしているだけあって力強い仁。樹の手が離れそうになると、ギュッと力を込めて繋ぎ留める。痛いとも言えず、樹は俯き心の中で悪態をつく。


(手、痛いっつの、バカ力····。つぅか、お前こそなんつぅ顔で俺のコト見てんだよ····)


 仁の雄を剥き出しにした表情に気圧され、樹は抵抗する術なくついて行く。が、着いた先がラブホテルで心底焦る樹。


「待って待って! マジで待って! オレ童貞は湊に捧げるって決めて大事にとってんの!」


 踏ん張って仁の手を引く樹。必死に抵抗する涙目の樹を見て、仁はペロッと舌なめずりをした。


「そっか。そりゃ大事にとっとかないとだねぇ。ま、そんな心配要らないから。今日ドコ行っても人多いしさ、ここでちょっと落ち着こ? 人混みとか、今しんどいっしょ?」

「う、ぁ··うん。分かった」


 弱った心に、仁の言葉が沁みる樹。仁の言葉に流された樹は、仁に手を引かれてホテルへと入ってしまった。



「とりあえず、身体冷えてるし風呂入りなよ」


 樹のダウンをハンガーに掛けながら言う仁。手慣れた様子で風呂の支度を始める。 


 湯が張るのを待つ間、2人は飲み食いしながらベッドのふかふかを満喫していた。

 ベッドのど真ん中で、クッションを抱きかかえて嫉妬心を語る樹。仁はそれをうんうんと聞く。喉が枯れるほど話尽くした樹は、時計を見て驚嘆する。


「うわ、とっくに年明けてんじゃん。あー··なんかごめんな? 嫌な年越しになっちゃたよな。カウントダウンも行けなかったし····。初詣ん時何か奢るわ」


 困った様に笑って見せる樹に、仁はふわっと笑って返す。


「いいよ、気にしなくて。ここに連れ込んだの俺だし」

「いやでもさ··──」


 樹が上体を起こした途端、仁がそれを押し倒した。

 樹の身体が、ぼふっとベッドに沈む。何が起こったのかと、キョトンとする樹と見つめ合う仁。


「え··っと、何?」

「分かんない?」


 樹に覆いかぶさる仁。恐怖に怯える樹を見下ろす仁の顔は、男のそれでしかなかった。


「分か····は!? 何もシないって言ったじゃん!」

「何もシないとは言ってないでしょ」

「俺の童貞奪わないんだろ? だから心配要らないって····」


 不安そうに仁の顔を見つめる樹。困り眉毛の樹が可愛く見えた仁は、吸い寄せられるかのように唇を重ねた。


「んぅ!? んんっ! んんんっ!!」


 足をバタつかせて抵抗する樹。だが、両手首を押さえ込まれ、下半身は仁が馬乗りになっていて身動きなど取れない。

 漸く唇を離した仁を見る樹の目には、たっぷりと涙が浮かんでいた。


「何してんだよ!」


 涙目でキレ散らかす樹。一言だって答える気のない仁は、無視してもう一度唇を奪う。今度は舌を絡め、樹の口内を深く犯してく。


「んっ··は、ぁ··ふぅ····」


 キスの上手さに蕩ける樹。その隙に、本能で反応してしまった樹の下半身を仁が咥えた。驚いて仁の頭を押し離そうとする樹。だが、体幹の良い仁はビクともしない。そもそも、抵抗する樹の手にはさほど力など入っていない。


「バ··カ··、やめろって····」

出していいよらひへひーほ


 腰が浮いてきた樹に、妖艶な表情を見せて言う仁。その後も、この調子で何度か発散させた。


 今のうちに洗浄を済ませてしまおうと、深い賢者タイムへ突入した樹を風呂へ運ぶ。

 身体に力が入らず、ボーッとしていて思考のままならない樹はされるがまま。広い浴室で、マットの上で四つ這いにさせられる樹。ナカが綺麗になると、仁の熱い舌やゴツゴツした指で解されてゆく。

 途中、恐怖で泣き始めた樹の項や肩へ、甘いキスを落としながら優しく宥める仁。準備を済ませ、樹をベッドへ運んだ仁は、茫然とする樹の全身を優しいキスで赤く染めた。



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